第4章
砂都貴のいない夜は、睡眠時間は長かったのに、眠りが何故か浅い。普段も浅い方だと
思ってたけど、こう、朝起きても寝た気がまったくないっていう状態が二日続くと、仕事に響く。僕は誠実・実直だけが取り柄のサラリーマンだから、通常業務はミスなくこなしているけど、出張の業務報告書をうつワープロが、進まない進まない。睡眠不足はこういう作業にはもろに響くんだよな。
こりゃー今日は残業かなー。正午のチャイムを聞きながら、大きく伸びをする。だめだ!今日は社内食堂はやめ!外に出ないとストレスで爆発しそうだ。
自動ドアが開くと同時に、ビリビリ、真昼の陽光が目に刺さる。いかんな。やっぱり人間は夜行性生物に進化してるのかな。
…いや、痛いのは視線だ。どこからか、きつい瞳で僕を見てる人がいる。気配の方に目をこらす。
会社のビルの前には、大きな公園があって、真ん中に巨大な電波塔がある。その中間あたりにある、展望室。ガラス越しに僕を見下ろして、冷たく微笑む人影…!
僕はものすごく目がいい。普段は色々な物が見えすぎて目が疲れるので、わざと視界がややぼやけるくらいの眼鏡をかけている。でも、見たいもの、見る必要があるものは、一キロ位先のものでも見えてしまうことがある。
…あれは砂都貴だ!僕をじっと見ている。あの顔、あの背の高さ、手擦りにもたれる肩から腕にかけた細い線。あ、でも真っ黒な髪のベリーショート。砂都貴は栗色のロング・ソバージュだよ。けど、気配は間違いなく砂都貴のものだ。
あわてて、エレベーターで展望室に向かう。しかし、一周しても、砂都貴の姿など見当たらない。それどころか平日昼間の展望室なんて、ほぼがらんどう。
入場料、損したなぁ。それにしても、砂都貴の幻見るくらい、僕はめいっているのだろうか?
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