第2話 バトラーの回想 エピローグ1
街で見かけた雷に見入った…
この娘は…
その日から、バトラーの日々が変わった
毎日が、少し、違って見えた
心が沸き立つようだった
どんな事も許せる気分だった
ある日、彼女が男と街を歩いているのを見た
楽しそうな笑顔だった
彼氏がいるのか…
僕は憂鬱な気持ちになった
あの笑顔が僕のものなら…
僕は、目を反らして、冬の街並みをトボトボ歩いた
どこを歩いたか、覚えていない…
気付いたら家だった…
それから、憂鬱な日々が続いた
クリスマスが近づいてきた
僕は思った
こんな気持ちで、いてもいいのかい? 自分に聞いてみた
忘れられるのだろうか…
時が解決するのかな…
いろいろ、考えてみた…
どう言えばいいのかな 断られたらどうしよう…
僕の気持ちは、宇宙の中を彷徨う流れ星のようだ…
僕は不安と闘いながら、マフラーを買った
99%の不安と、少しだけの灯りを、街のクリスマスツリーに見つけよう
クリスマスイヴの朝 僕は弱い決心をした
彼女のいつもいるカフェ
もし、1人でいたら、話しかけようって、すごくあやふやな結論を出した
1歩 歩くたびに、心臓の鼓動が早くなった
そんな自分に負けるのが嫌だった
彼女は、いた
1人だった
僕は、なんて言おうかとか考えていた言葉を、全部忘れた
ぶっきらぼうにマフラーを差し出した
これ…
彼女は、ちょっと間をおいて、どうして?って聞いた
僕は言葉に詰まって、これ って、繰り返した
彼女は、僕の目を見つめて、しばらく、黙っていた
あなたがわたしを見ていたの、知っていたわ
僕は後悔とドキドキする心臓の音を聴きながら、次の言葉を待った
彼女の目は澄んだ紺碧の海のようだった
そうね… 彼女は思慮深そうな目を伏せて言った
そうね 貰っておくわね...
僕は、待ち合わせの公園に向かう途中 3個入りカレーパンを買った
そっとトートバッグに入れた時、まだ温かい気がした
公園に着くと彼女はベンチの前に佇んでいた
ごめん 待った?
僕は彼女に声をかけながら、寒かったかな?って思った
ぅぅん いま 来たところよ
2人でベンチに座った
ベンチは冷たかったが、僕は気にならなかった
でも、彼女が寒くないかなって、思い直して
公園の入口にスターバックスがあるのを思い出した
スタバ 行かない?
ぅぅん ここでいいよ 彼女は小さな声で、でも、はっきりと答えた
僕はちょっと誇らしげな気持ちになった
寒くない?
寒いけど、だいじょうぶよ
僕は冷たいベンチに座った彼女を見ながら、そう? って、言った
僕は慌てて ぁ、そうだ カレーパン
一緒に買った午後茶ミルクティーがまだ温かかった
これ、暖かいから…
彼女はそっと受け取って、暖かいわ ありがとぅ って、微笑みながら言った
受け取る時 ちらっと僕を見た優しさを滲ませる明るいブラウンの瞳の奥に
強い決意と諦めを見つける時がある
自分の未来に何があっても受け入れるという強い意志の力と諦めを、ふっと感じる
明るく振る舞っていても、心のどこかは醒めているように感じる時が、あった
なにが彼女の心を重くしているのかは、僕にはわからなかったが
彼女はベンチから遠くの海を見る時、思い詰めたように眼を伏せる時があった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます