ベリーベリー

 俺の掌の上で転がる黒い粒は思ったよりも小さかった。いやなに、種になれと魔法をかけたわけだがどんな種かは知らなかったし、まぁ概念的に種にしたわけだから成功したのかどうかも謎である。が、まぁ思ったよりも小さかったのだ。まるでゴマである。小さすぎやしないか。


 しかし考えているだけで始まるわけではない。その種もどきを埋めて成長するかを確かめなければ。

 立ち上がって庭を見渡せば、玄関の横あたりでいいかと思う。ちょうど日の光も当たるそこは植物の育成に向いている。俺は適当に穴を掘ってそこに種を埋めた。


 植物の成長を促進させる魔法はあるが、まぁそこまでは固有魔法の限界というもので、また別の分野になる。そういった魔法は、どちらかといえば教会が扱うような白魔術、つまりは回復とかそういう分野なのだ。つまるところ、苦手分野である。

 まぁ種を作るとき、十分なくらいに魔力はつぎ込んだし、成功したからそれなりに成長するはずなので、根気よく待つこととする。とりあえず、簡易的な水魔法で水はやっておいた。


「ちゃんと成長しろよー」


そんな感じで一人で声をかけていると、全く気にしていなかった背後で、


ざり、と。


土を踏む音が聞こえた。バッと息を意をつけて振り返ると、そこには。



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