イチゴLove

「さてと……」


 あれから朝市で一人ガッツポーズをした俺を引いたような眼で見ていた兄弟に葉申し訳なく思いながらも俺はテンションが高いままに帰宅した。

 手元には、先ほど食べた真っ赤なイチゴみたいな果実。帰り際にもう一度朝市で購入してきたものだ。購入の際、名前を聞くとルベルベリーとの回答があった。


 因みに、俺は現在二つの言語を扱えることになる。それは前世で言う、日本語と、こちらの世界の言葉。こちらでは世界中で共通の言語が使われるため日本語や英語といった区別はない。生まれてまず耳になれない言語で焦ったりするのは前世持ちではそうそう珍しいことではないのだとか。今はもうこちらの世界の言葉にも慣れ、普段はそちらを使っている。つまりは、あちらでイチゴ、つまりはストロベリーのベリー部分は共通というわけだ。言語自体が似ているのではなく、そういう意味の言葉として。ああいった果実を総称してこちらでもそういう意味があるというか。まぁその辺はフィーリングというやつだ。


 まぁしかしルベルベリーとな。赤い果実、まぁまぁそのまんまだな。


 さて、そんなことは置いておいて。自宅の前に広がる小さな庭に腰を下ろして、目の前にルベルベリーを置く。それから、瞳に魔力でコンタクトを作るようなイメージを持ってステータスを覗く。あ、この世界ってステータスがあってレベルとかも見られるのだ。とても便利。こっちの世界ではこうして魔力で己の状態を確認する方法として、くしゃみするくらい自然なものだが。


【ステータス】

体力︰1,000

攻撃力︰200(+10)

防御力︰160

速度︰80

魔力︰10,000

スキル︰鑑定・生命の源・大辞典

派生スキル︰



 因みにこの世界、ステータスは存在するがレベルは存在しない。そこは初め非常に驚いた点である。ステータスも、おおよその目安でしかない。気力とかで、実際体力が持ったりすることは普通で、前世風にいば偏差値とかいっつもぴったりのあたりを取るわけじゃないけど一つの目安としてある数字ってことだ。

 ただ、俺のステータスは魔力が飛び抜けている。平均的に一般人の魔力は100〜1,000までの間で、1,000以上となれば重宝される存在で、10,000なんていうのは歴代の勇者達並みらしい。

 あと、生命の源というスキルにより、俺の魔力が尽きることは無い。


【生命の源】

 このスキルを持つものは世界に愛されている。

 魔力が常に供給され、自然の加護に守られる。また、このスキルを所有した場合、ガーディアンから認められる。



 この生命の源というスキル、これ実はチートに見えてかなり厄介なやつなのだ。わざわざステータスを確認したのはこれのせいである。

 魔力、とあらわされるのは基本的にその人間が保有できる魔力の量である。つまりは魔力貯蔵量。俺は一般人に比べて一度に保有できる魔力がけた違いにおおく、イメージとしてはおっきい貯水タンクをもっているようなものだ。そこに、この生命の源というスキルが加わると、タンクは常に供給され満タンの状態が続くことにある。一見いいじゃないかと思うが、これが結構しんどい。

 魔力は生命の根源であり、人間の活動に必要不可欠である。なんて言われるが、常に体に何かが満タン状態で、しかも通常の人間よりも沢山あるということ。魔力は目に見えないが、感覚的なもので感知できるのだ。アップアップしてしまうわけである。また、そこを尽きない魔力によって体内の魔力循環も滞る。魔力は常に世界に満ち、循環を繰り返す。新鮮な空気がおいしいように,新鮮な魔力は豊かである。が、通常では使いきれない量の貯蔵により俺の中の魔力は循環がかなわず、少しの使用でも新しくスキルにより補填されてしまい古い魔力はずっと残り続ける。最近は減ったが、子供の頃は魔力の暴走なんかもあって、スキルのことは頑なに話さなかったが、俺の魔力の異常な貯蔵量と回復量は両親が心配するところの一つであった。


 つまるところ何が言いたいかというと、昨日のように疲労がたまった状態で魔力の消費をすると、俺は一般人よりも身体に負担がかかり、稀にステータスにまで影響が及ぶことがあるのだ。

 固有魔法自体が消費魔力の高い魔法のためまあなんとかつり合いはとれるし、魔力が多くてよかったと思うことも多いが、少々面倒なことは確かである。


 ま、しかし、ステータスにはどこも以上はなく、これで気分よく魔法が使えるというもの。俺はルベルベリーを手の上に置いて、目を閉じ神経をそこに集中させる。

 

 魔法はイメージだ。手のひらの果実を、小さく縮小させるようにして、たくさんの栄養を詰め込む。成長の過程で食べられてしまわないように皮をかぶせて、いつかそこから芽吹く命がある。そう、つまるところ、種だ。


変換change


 ぽぅと手のひらから果実に魔力を送り込む。白い光のようなものが果実を包み込み、やがてそれは俺が思うように形を変えてゆく。そんな光景が瞼の向こうで展開される。


 やがて瞳を開けば、俺の手の上にはあの赤い果実の姿はなく、ただ黒くて小さい種があるのみであった。





 





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ルベルってラテン語じゃん!っていう突込みはしないでください…(ガクブル

言語関係って難しくてマジ意味わからん理論なんでふぃーりんぐふぃーりんぐでお願いします…(ガクブル

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