第一目標

謎の果物

「んん……おはよぅ…」

 

 ぴーぴー聞こえる鳥の声と、顔に当たる朝日。ありえないくらい痛い体をぼんやり起こしながら見渡せば、いつもの家ではなく、ガラッとしたさみしい部屋であることがわかって、一瞬ぽかんとした。が、それも一瞬のこと。


「えっと、引っ越したんだよな……」


ぐーっと体を伸ばす(地面で寝たせいでばきばきと嫌な音がした)と腹が空腹を訴えてきた。そういえば昨日夕飯食べてないな。もぞもぞと動いて、枕にしていたカバンから手のひらサイズの布を数枚。


変換change……」


 数枚の布から、いつも着ている服と同じものを作り、それに着替える。引越しなのにも関わらずあまり細かい荷物を持たなくてもいいのは、原子レベルでモノに干渉するこの固有魔法のお陰である。その分、布やら石やら重量はあったが。

 服を着て家を出ると森に囲まれた家は木漏れ日の光を浴びて輝いているようにも見えた。


「おぉ」


 不意に、こんな綺麗な場所を見たのはいつぶりだろうかなんて考えた。


 ぐぅと腹がなって、本気で空腹を感じた俺は朝市で食料を調達することにした。財布をもって、家を出る。鍵は壊れていて機能しないが、そうそう盗まれるようなものも置いていないので問題はなさそうだ。

 小さな小道を通り森といってもそこまで長くない道を抜け、近くの朝市に近づくとガヤガヤと賑やかな声が聞こえてきた。それと共にいい匂いも漂っており、再び腹がなる。


「何食べようかな……」


 朝市から香る匂いは、香ばしいパンの匂いからさわやかなフルーツ、焼けた肉など、空腹を刺激するものばかりで、それに加えて朝市のがやがやとした雰囲気も良く、俺は何度も朝市をぐるぐると回った。

 結局、パンと果物を買った。未だ引っ越したばかりで、新しくお金を貯めるつてを見つけたわけでもないので、少しは節約しようという気になったからだ。肉は我慢した。それと、購入したものは見たことのない果物だけど、多分大丈夫だろう。安かった。


 朝市のはずれにはちゃんと座って飲み食いができるようなスペースがあり、そこに一人で座る。近くの席には幼い子供が、兄弟だろうか二人で幸せそうに肉をほおばっていた。おいしそうだった。

 

 いい加減ぐうぐうなる腹にパンをほおばる。少し固めで、ナッツの様な香ばしい香りがするパンはジャムがなくても十分たべられた。それから、安くて、あと見た目とてもおいしそうだった真っ赤な果物は、これは買って正解だったと思う。


「!!」


 一口噛んだとたん口の中に広がる、懐かしい味。そうこれは…イチゴの味がする!転生してこの方、リンゴっぽいやつとかオレンジっぽい果物は食べたことがあったが、イチゴはなかった。まじか。うれしい。いちごは大好物なのだ。

 その瞬間、俺にはぱっと良い案が思いついた。子供でも大人でも誰だろうと一度は思うことだとおもう。そう、


これを自分で生産できるようにしよう!


 自分の好物を腹いっぱい食べるのは一種の夢だ。


よし!俄然やる気がわいてきた。家のかたずけなど等に忘れたことにして、第一目標は、この果物の栽培をするってことで決定!

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