異世界ライフ
独り立ち
…さて、本日、空は快晴、門出にふさわしいこの日に俺は実家から離れて独り立ちすることと相成った。
「ちゃんとご飯は食べること、洗濯物はため込まない、ご近所さんとの付き合いはしっかりすること、それから…」
「あー、もう。わかってるよ、母さん。何回目?」
「何度言ってもアンタだから心配なのさ。…元気でやってくんだよ」
「そんな遠くないんだし、すぐ帰ってくるよ」
いつもは気の強い母が、いつもよりもしんみりとしてなんども同じことを言うので、俺に全く後ろ髪をひかれるような気持がなかったといえばウソにはなるが。それでも。今日この日を俺はずっと待ち望んでいた喜びで、家を早く出たい一心だった。母をせかすように言葉をつなぐ。
「じゃあ、行ってきます。」
そう!今日この日俺はやっと開放されるのだ。所謂前世持ちと呼ばれる俺は、前世ではブラック企業に務めてしまったばかりに好きなことができずに人生を終わらせてしまったという記憶がある。だからこそ、今度は自由気ままに生きる!一人暮らしで好き勝手するんだ!大きなカバンを背負ってふふん、と意気込む。
前世持ちといっても俺が再び人として生まれることができたこの世界では、以前の世界よりもそれほど珍しいわけでもない。珍しいものは珍しいが、軽く言って信じてもらえるほどには珍しくはないのだ。
それでもって、俺の前世の記憶はかなりはっきりとしたものである。そして死んだ時のことはいまいちわからないが、死んだあと、人間で生きていきますか?と聞かれ、YESと答えたことには覚えがある。前世の死後と転生後をつなぐ記憶があることはまぁまぁ珍しいのだがこれはあんまりどうでもいい。そして!俺が生まれた世界は(前世基準で言えば)、よくラノベとかである異世界というものらしく、魔法なんかも存在するのだ。なんだそれ最高じゃないか!生まれてすぐそのことを知った時の感動は凄まじかった。俺の望んでいた世界!!ありがとう神様!!
という感じの俺は健やかに育ち、18歳になった。どうやら俺には魔法の才に恵まれていたらしく、人間が生まれた時から持っている固有魔法が、世界に数人しかいないと言われるほど貴重なものらしい。だが両親はこの事を知らない。何故なら俺は子供でありがら27年間現代で過ごした記憶があるからな!この魔法が特殊なもので、世の中でバレてしまえばなかなかに面倒なものだと解ったので、固有魔法を偽って生活してきた。
この世界での目標は、ズバリ!!
「趣味に生きる」
俺の魔法はそれを実現するにはもってこいな能力があり、なろうと思えば勇者にだってなれるだろう。まあ、勇者も楽しそうだが、そういうのは趣味じゃない。
なので、俺の家を作ってそこで取り敢えずやりたいことを片っ端からやっていくことにする。
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