せめて今だけ……(躯螺都と巴)

「千手丸さん……起きて下さい。朝ですよ」

 その声で千手丸は目を覚ました。目の前でお時が微笑している。

「朝ご飯です。皆さんがお待ちかねですよ」

 千手丸は跳ね起きて

「俺が一番最後に起きたのですか?」

と、彼なりに丁寧に訊ねると、お時は頷いて、千手丸に手ぬぐいを渡した。

「さあ、お顔を洗って来て下さいな。それからみんなでご飯にしましょう」


 千手丸が柘榴に返事をしてから数日が過ぎていた。

 その後、名留羅が何時もの飲み屋に行ってみても、もう鴉丸からの言付けは届いていたりせず、音信はぷっつりと切れてしまったかに思えた。

 しかし、名留羅の背中には常に苦悶の気配が感じられていた。彼はそれからというもの、一時でも歩を休める場合は常に壁を背にする様になったが、

『まるで障子を背にする様な心細さだった』

と、沙衛門達にこぼしていた。

 沙衛門と雨代はお時・お夕姉妹が外に出る時には必ず供に付く様になったし、千手丸は千手丸で、常に袖の下で十手を逆手に握り込み、何時でも抜き打ちに出来る様にしていた。

 苦悶と実際に立ち合う機会がなかった千手丸にとって、剣においての師匠である名留羅が認める剣と髪の結界は想像以上に恐ろしく思えたのだ。




 一方。

 巴はあれから態度が変わって来ていた。

 躯螺都に今まで以上に甘える様になったし、時々池の淵や川べりに立ち、じっと水面を見つめている事が増えた。

 その日も辺りに人っ子一人いない雑草の生い茂った川べりで、巴と躯螺都は二人きりであった。

 躯螺都は彼女の世話役を自認しているので、そんな時、良く彼女に、こう声をかけた。

「巴……お前、ひょっとしてそのまま飛び込んだり、深みに歩いて行ったりはするまいなあ?」


 結局あれからずっと、巴が千手丸の事で泣く理由を聞き出せずにいる躯螺都にはそうする事しか出来なかったのだが、そういう時、巴は白黒反転の瞳を彼に向け、ほとんど色素のない、今では前以上に雪の様に白くなった顔でこう言うのであった。

「……躯螺都はまたそういう事を言う。私は今はそんな事をするつもりはない。今はただ水面を見つめていたいの。

 でも……もし私が

『そうしたい』

と言った時には、躯螺都、道連れになってくれるの?」


 巴が死ぬ。

 そう考えただけで脳をあぶられるような苛立ちと苦痛に身を焼かれる様な思いになる躯螺都は、その度に巴の両肩を思わず掴み、泣き出しそうな顔でこう言った。

「『死ぬ』

などと言うな……そんな事を考えるのはやめてくれ、巴。お前が死んでしまったら、今度こそ俺は行き場をなくしてしまう。その時に自分でどういう事をするのか、想像もつかん。

 もし欲しいものがあるなら言ってくれ。俺が取って来てやるから」

 何時もはそこで話が終わるのだが、今回、巴はうつむいて、前に流れて来る髪の奥でぽつりと言った。

「……私は欲しいものが沢山ある……でも本当に欲しいものはたったひとつ」

「そ、それは何だ?」

「全て聞きたい?」

「ああ」

「他の誰にも言わない?」

「口が裂けても。天地神明に誓って」

「耳を貸して、躯螺都」

 躯螺都がその通りにすると、巴は桜色の唇を彼の耳に寄せ、数え歌を歌う様にこう告げた。

「ひとつは苦悶殿の首」

 奴の首! 躯螺都は仰天しつつも、巴の言葉を聞き続けた。

「ひとつは千手丸の仲間全ての者の首。

 ひとつは千手丸の愛する女の首。

 ひとつは鴉丸殿の首。

 ひとつは……躯螺都、お前の首です」

……躯螺都は頭の芯が痺れるのを感じながら、巴に訊ねた。

「首を集めて……お前はどうする?」

 巴は陰鬱な喜びに目を細め、冷たく囁いた。

「座った私の膝に載せ、腐って行くのを眺めながら、わらべ歌を歌ってあげるの。全てが腐ったその後は、私が私に毒を流して、それで全てを終わらせるわ」

「……何故鴉丸や俺の首を?」

「このみんなの中で良くしてくれたのはお前と鴉丸殿の二人だけ。今では姿が見えなくなると不安で仕方がない。

 だから私のものにしたいの」

「……巴……」


……巴の足元から伸び、揺らめきながらも自分を完全に覆っている彼女の影に気付いていながら、呆然としつつも躯螺都は、この両腕のない娘を恨む気にはなれなかった。


 この時、謀らずも巴ばかりか、躯螺都までもが苦悶の思惑通りに動こうとしていたのは何という皮肉だろうか。


 自分の影を己の身から伸ばして相手に重ね、直接相手のその身に様々なタイプの毒を流し込む。

『忍法 影撫』(かげなで)。それが巴の体得した忍法であった。

 彼女は今、躯螺都に微弱な眠気を誘う毒を流し込んでいるのである。躯螺都は巴の肩を掴んだまま、幼子の様にその眠気に身を任せつつも、忍者としての生存本能のみを研ぎ澄まして辺りの気配を窺いながら、彼女の話を聞いていた。


 巴は彼の胸に身を任せながら、耳を当てて彼の心臓の鼓動を聞きながら、こう呟いた。

「柘榴様が私に

『身を捧げる気はないか』

と言って来たわ……」

「柘榴様が?」

 いまや巴をしっかりと抱きしめながら、躯螺都は聞き返す。

「そう。恐らく柘榴様は私の身体をもてあそび、楽しみ尽くした後、遠からず私の全身に刺青を彫り、己の芸の道の為に殺すつもり……あの六本の腕で私を犯し、果ては忘我の境地に立たせながら」

……柘榴には六本の腕が存在するのだろうか。

「その様な事は……させぬ……」

……躯螺都の腕に力が篭った。強く抱かれて巴は切なげに身をよじり、桜色の唇から吐息を漏らし、眉間に苦悶と歓喜の入り混じったしわを寄せる。

 巴は初めて『女』として喘いだ。

「ああっ……躯螺都……!」

 その声は躯螺都の今まで押さえ込んでいた巴への想い、そして意識しないでいた肉欲を噴出させるのに十分だった。彼は息を荒げつつも押し殺した声で巴の耳に唇を押し付けて囁いた。

「柘榴様にも苦悶にも……鴉丸にも渡しはせん。俺は……今まで奪われこそすれ、与えられた事はなかった。

大事なものは全て木っ端微塵に叩き壊された!

……だがな、巴。お前は、お前だけは誰にも壊させはしない……!!」

 切なげな、すがるような躯螺都の視線が巴の心に突き刺さった。

「く、躯螺都……」


 巴は何故自分の様な五体満足でない娘に彼が優しくしてくれるのか、少し分かった様な気がした。

 そしてそれを決定付ける言葉が彼の口からこぼれた。

「……柘榴様は千手丸達をこのままにはするまい。恐らく今後の計画を妨げる面倒事の筆頭に挙げ、きゃつらを殺しにかかるだろう。それもすぐにだ。

……言うのはこれで最後になるかもしれない。だからはっきり言う。

 巴、俺はお前が好きだ……!」

 彼に抱かれた巴の瞳が見開かれた。


 躯螺都は左腕で巴を抱き寄せながら、右手で彼女の背筋から尻のラインを手でなぞり、手で覆った。

……彼のぬくもりが彼女の体の芯をあぶる。

「あ……躯螺都……」

 彼は自分の腰の前を強く彼女に押し付け、首筋に顔を埋めて香りを貪った。

「あうっ……躯螺都、どうしたの? 躯螺都の体が熱い……」

「巴……巴!」

 何時も彼に優しくそよいでいた、あの香りだ。

「躯螺都」

という信頼に満ちた声と、彼女の微笑と共に彼を包んでくれたあの香りだ。

……ずっと求めていたものを、今、自分はその両腕の中に抱いている。

「……巴……」

 躯螺都の閉じた瞳に涙が滲んだ。


……ややあって、躯螺都は顔を上げ、一種の照れくささと恥ずかしさに頬を染めた巴の顔を見た。彼女は彼の瞳に涙が滲んでいる事に気が付きつつもその事には触れず、口を開いた。

「……躯螺都、本当に私が好きなら、守ってとは言わない、私の手助けをして。

 本当は首の事なんてどうでもいい……私が欲しいのは……昔の様にみんなで暮らせる安住の地。ただ、ただそれだけ。天下がどうなろうと知った事ではないの。

 何処かで静かに楽しかった頃の仲間と一緒に暮らせればいいだけ。そこへの道行きを一緒に辿って。

……お願い……躯螺都ぅ……」

 不意に巴の瞳から涙がこぼれた。


「一緒に行こう、巴。誰が敵に廻ろうと、俺とお前で手を取り合って行けば必ず道は開けるはずだ。

 一緒に……何処かで暮らせる場所を探そう。花々に囲まれ、鳥のさえずりが聞こえる場所へ。月を眺めながら虫の声に耳を澄ませていられる様な場所へ。

 お前と一緒なら、俺は何処へだって行ってやるさ。なあ、巴……」

 そう呟いて、彼は巴の涙を人差し指で優しく拭った。


『恐らく彼女の言うその『仲間』の中には千手丸も入っているのだろう』

と躯螺都は思った。

 それでもいい。誰が中にいようと、巴の傍にいるのは、いていいのは自分だけだ。


 それは巴の毒がもたらした悪魔の囁きか、神の気紛れか。彼の心は次第に歪みつつも、こう固まって行った。




 柘榴が巴を望み、殺そうとするならば柘榴を殺そう。

 苦悶が巴を望み、殺そうとするならば苦悶を殺そう。

 千手丸が巴を拒み、巴を死に至らしめんとするならば千手丸を殺そう。

 奴を取り巻く全てが巴に害を成すならば……俺は奴を取り巻く全てを血の海に沈めよう。

 俺達を取り巻く全てが巴に害を成すならば……俺は俺達を取り巻く全てを血の海に沈めよう。




『教義の為に教祖を殺せ』

という教えがあるが、躯螺都はまさにそれを成さんとこの時覚悟を決めたのである。


 狂気を脳髄に秘めつつも、真剣な瞳で彼は巴を見つめた。彼女の桜色の唇が躯螺都を招いている。

「巴……抱いていいか?」

 絶望から来る狂気と、千手丸への憧憬と、躯螺都の思いに包まれた巴はこくりと頷いた。

 躯螺都はその顎に手をかけ、つい、と持ち上げると、そっと唇を重ねた……。




『七ツ針』が拠点を変え、完全に廃墟と化した寺の本堂。そこに二人はいた。

……唇を重ね合って。

 そっと離すと、

「何か、恥ずかしいわね、躯螺都……」

と、巴がうつむいて照れくさそうに微笑した。

「恥ずかしい事などあるものか。初めて会った時のままだ……綺麗だぞ、巴」

「……触って」

 躯螺都は頷くと、彼女の帯をゆっくりと解き、襦袢ごと襟元をかき開いた。そこには今まで洗ってやった時のままの裸身が白く、確かに存在していた。

 右手をそっと、彼女の形の良い乳房にあて、包む。

「う……」

 体を洗ってもらった時とは違う躯螺都の手付きに敏感に反応する巴。優しく力を加え、左腕で彼女を抱き寄せながら彼は揉み始めた。そして巴のもう一方の乳首に吸い付く。

「は……うむ……」

 瞳を閉じ、子供の様に吸い付いて無邪気に舐める躯螺都を、巴は可愛らしく思え、その髪に頬を寄せた。一瞬びくっと反応するが、再び舐め始める躯螺都。

「ん……気持ちがいい、躯螺都……。今まで……あ……気付かなくて……ホントにごめんね……」

 そこで彼は一旦唇を離し、唾液に濡れて輝く乳首をひと舐めしてから、彼女の瞳を見つめ、言った。

「いいんだ、巴。俺は今、とても幸せだ……ずっと好きだったお前をこうして抱けるんだからな」

 そう言うと躯螺都は彼女の乳房から右手を離し、背中に回して尻へと滑らせた。そして再び巴に軽く口付けすると、首筋を吸い、舐め始めた。

「あ、あっ、ちょっ……くすぐったいよ、躯螺都……」

 巴は困った様に声を上げ、少し笑った。躯螺都も少し笑った様で、巴にはそれが嬉しかった。


 自分の方を向いて正座し、体を預ける様に寄り添う彼女の中に右手の人差し指と中指を差し込むと、その裸身に鳥肌が立つのが分かった。

「巴、無理な事はしない。一緒にやってみよう?」

「ち、違うの……指が……何かくすぐったくて……」

 躯螺都は少しだけ、自分をくわえ込んでいる彼女の熱い膣からそっと指を引き出してみた。

「うううっ!」

 巴が悲鳴に近い声を上げる。

「す、済まん。痛かったか?」

「い、いいえ。

……ねえ、躯螺都……その……」

「どうした?」

 消え入りそうな声で巴は言った。

「……もっと……」

「……大丈夫なんだな?」

 巴は黙って頷いた。両手があったなら恥ずかしさで顔を覆っていただろう。

 躯螺都はゆっくりと彼女の中に指を押し込む。

「んくっ……うふ……」

 少し指先を動かしてみた。

「あ、ああっ……変なの……凄く恥ずかしいのに気持ちがいい。

……私、おかしい、躯螺都ぅ……」

 巴は今まで躯螺都が聞いた事もない様な、切なげな声を上げ、彼の肩に額を押し付けたまま、いやいやをする様に首を振った。

 左手で彼女の揺れる乳房をそっと包むと、彼女は敏感に反応し、彼の指は締め付けられた。

「あっ! ひっく……あったかいようっ……」

 切なげに閉じられた彼女の瞳から涙が流れ出した。

「それでいいんだ、巴。

 泣かなくても大丈夫だ。素直にその感じに身を委ねてしまえ」

「い、いいの……?」

「ああ。俺が付いている。何時もちゃんと傍にいただろう?

 今だって巴がどうなってもちゃんと傍にいてやるさ」

「……強く……唇を吸って……」

 彼は彼女の唇に自分のそれを重ねると、そっと舌を潜り込ませた。巴は一瞬驚いた様に目を開いたが、黙って自分のそれを絡ませる。

「ん……んん……!」

「はう……んんっ……ん……」

 躯螺都は巴の後ろ頭に手を添え、そっと押し倒した。


 鈴虫の声が何処からか聞こえて来る。自分の着物と躯螺都のボロボロの着物の上に、二人は重なっていた。

 巴は彼のそれが入って来た時、躯螺都が気を揉むほどには苦痛は感じなかった様だ。彼女の尻に手を添え、唇を吸い、張りのある乳房を舐め回しながら、ゆっくりと押し込み、引き出す。

「はあっ、はあっ……」

「巴……ずっと欲しかった……巴……!」

 縛ったざんばら髪を振り乱し、彼女の肌に頬を、額を擦り付けて、躯螺都は呟いた。息を弾ませながら、仰向けのまま躯螺都の方へ視線を向けつつ、巴は言った。

「ごめんね、躯螺都……あっ……もっと、激しくしてもいいよ……」

「……」

 それに答える代わりに彼は巴の唇を激しく奪い、少しずつ動きを激しくして行った。

「ん……んんっ……んんんっ! ふっ……ん、ん、ん、んんん……っ!!」

 艶やかな黒髪を乱れさせながら、巴が喘いだ。抱きしめながら回した手で、つるりと丸い、肩の付け根から先のない部分を優しく撫でさすり、巴の耳たぶをしゃぶる。

 舌で転がし、歯で軽く噛んでやった。

「あ、あうっ! ああ、はあ、ああっ、う、あああっ!!」

 そのまま耳たぶの下から顎のラインに唇を這わせ、一度運動を止めた彼は、腰を後ろに引いてから、大きく突き入れた。

「ああうっ!」

「はあ、はあ……巴……」

 うめいてから大きく反り返った巴は、苦悶に見せられた千手丸とあの娘の仲睦まじい光景のもたらした苦痛が次第に薄れていくのを感じ、癒されている様な気がした……。


 正座した彼の太ももの上にまたがる様な姿勢になり、抱きかかえられつつ、巴は下から突き上げられている。

「あは、あっ、あっ、んんんっ! く、躯螺都は……んんっ、私の胸が……好きなの……?」

 むしゃぶりつく様に先ほどから彼女の乳房に吸い付いて舐め回す彼に、巴は訊ねた。

「……ああ。俺は今まで抱こうと思って女の体に触れた事がない」

「でも私を洗ってくれた事があったでしょう?」

「あの時は勘定の内に入らん。邪な気持ちを抱いて洗った事はない……」

 最後の辺りで口篭もる様に言った躯螺都に、巴は何か微笑ましいものを感じた。運動を続ける彼の事を、ぼうっとした表情で微笑を浮かべつつ、少しその部分を突付いてみる。

「ねえ……」

「どうした?」

「時々は……触りたかった?」

「からかわないでくれ……」

 困った顔をする躯螺都のセリフを彼女は打ち消した。

「そうじゃないの。素直に言ってくれる方が私は嬉しいから……」

「……そういうものか」

「ええ」

 躯螺都は一旦動きを止めようとしたが、彼女が

「続けて」

と言うのでその通りにしつつ、口を開いた。

「じゃあ、正直に言う。

……何時も綺麗だと思っていた。普通に触りたかった。

 怖がられると嫌だから……その……不自然にならない様にするのが大変だった」

 何故かしゅんとしてしまう躯螺都を見ていると、先ほど抱いた親愛の情が再び湧いて来て、巴は彼に自分からそっと唇を重ね、そして離すと微笑した。さすがに躯螺都は動きを止め、驚いた顔で訊ねた。

「なっ……巴、一寸はしたなくはないか?」

 巴が悲しげにうつむいた。

「だって……私から嬉しい気持ちを伝えてもいいでしょう?

そういうのってはしたないの?」

「いや……そうだな、済まなかった。

……嬉しいよ」

「……躯螺都」

「ん?」

「動いて……頂戴……」

 彼は再び巴をそっと抱きしめながら、運動を始めた。

「あっ! 躯螺都……いっ、今まで……気付かなくて……本当にごめんなさい。

 そして……ありがとう」

「礼を……言う事はない。俺が勝手に……惚れて、いただけだ……でも」

「……でも?」

「気持ちが巴に伝わって……嬉しい……」

 巴にはその時同い年の躯螺都が年下の弟の様に思えた。何だか、今までは実直なだけの男に見えた躯螺都の角が取れた様に思えた。

「躯螺都、これは私からのお詫び。今まで触りたいのを我慢していたのでしょう?

……好きな所に……触って……いいから……」

「巴……俺はこれからもお前を抱きたい。

 一杯……抱きたい……」

 彼は再び巴の乳首に吸い付いた。

「あ……躯螺都ったら」

 巴はさっきの様に夢中でしゃぶり付く躯螺都のもたらす快感に喘ぎながら、嬉しそうに囁いた。

「うん……躯螺都……」




 自分の着物で巻かれて巴が眠っている。躯螺都の吐きだした思いを全て受け入れ、彼の腕の中で巴が眠っている。

……ずっと、妹の様に、姉の様に思って来た巴が、自分の事を受け入れてくれた。

(絶対に死なせるものか……)


 そっと抱きしめながら巴に口付けすると、彼女の胸の谷間に顔を埋める様にして、躯螺都も眠りに落ちて行った……。

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