第10話スポンサー

 1



 休日の朝も、眠さは変わらない。

 泥のように眠り続けたい。



 ピッピピッ! ピッピピッ!



 目覚まし時計が鳴っていた。

 あれ? どうして?

 私はアラームを止め、ベッドから体を起こす。

 よくよく考えてる。

 ……あっ!

 思い出した。

 足長おじさんの、知り合いに会わないと。

 足長おじさん……私を母を、金銭面で助けてくれる。

 さてと、支度をしよう。

 掃除は明日に、洗濯も同じく。



 足長おじさんは、会長だけどさ。

 そう会社の会長、それだけ。



 2


  

 落ち着いた和風カフェに私と会長がいる。

 古民家を利用した、レトロな空間だけどなんだか安っぽい。

 取って付けた感が、とてつもない。

 

 

 「いい所だろ。さて、本題に入る」



 会長が言った。

 会長のお気に入りが、私のお気に入りとは限らない。

 しかしここは、指摘しない。

 


 私と会長、端から見たらどう思われてるだろう。

 おそらくは、不適切な関係かな。

 私ならそう思う。

 しかしそれは違う。

 会長もそれは重々承知している。

 現に今日のことは、奥さんに言ったらしい。

 許可がある。

 その代わりに私との会話の後は、奥さんのつきあいをするとか。



  「新しい通帳、それに印鑑、暗証番号はお母さんの誕生日らしい。そして委任状、名義変更はコレが必要不可欠だからね」



 会長からいろいろな品が出てきた。

 何かは、わかるはず。 

 何かは、わかる。しかし何故かは、説明しないと。

 答えは、私は産まれてはいけなかった。

 これになる。



 母はいた。

 世間に認められた。

 父もいた。

 ただ世間からは、認められていない。

 何故なら父は妻子があり、地位も約束されていたから。

 父は親の決められた女(ひと)と、政略結婚をした。

 会社のために、そして自分のために。

 


 「ここは昼飯も美味い」



 食べていけ。

 そう言われる。

 断ることもできる。

 しかしここは、受けて立つ。



 先ほどの続きね。

 決められた女(ひと)は、会長にとって悪い人ではなかった。

 会長も人として奥さんを愛し、子供を授かった。

 これだけなら良い人である。

 しかし、会長は男だった。

 男を行動に移すと、何人かの女性と会った。

 不潔な時間を繰り返した。

 何人かを繰り返し女がつまらないそう感じた時……母と会った。

 


 出会いの馴れ初めは、聞いたことはない。

 何故なら私が聞こうとすると、優しい笑顔が鬼のようになったからだ、

 教えたくない!

 当時はわからなかった。

 今はわかる。

 おそらく、父がいないとは思われたくなかった。

 馴れ初めを言えば、すべてを晒すことになるから。

 だから今でもわからない。

 違う今はわかろうとしない。

 母の手紙を開かないから……。

 


 「愛に飢えていた。麻衣子のお母さんは、それをくれた。今でも愛している。これは本当だ」


 

 会長が言った。

 そして珈琲を一口飲んだ。

 やるせない姿に、会長の偉い姿はない。

 


 笑える言葉だ。

 やるせない姿の、会長に言いたかった。 

 愛が欲しい?

 違うでしょ?

 


 都合のいい女が欲しかった。

 

 

 これでしょ!

 自由の利く、遊べて捨てる。

 そんなお人形さん。

 


 私は吐き捨てるように、言いたかった。

 しかし通帳と、印鑑、それを見て心に納める。

 援助を受けているからには、その言葉は出してはいけない。

 だって……。



 同罪だもの。



 私は会長が生きている限り、恐らくは死んだとしても、将来を約束されている。

 今までもそうだ。

 だから会社に入れた。

 もし私が繋がりがなかったら、入れたないのは誰からもわかるだろう。

 

 

 


 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

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