昔のお話⑥

そうして彼は、翌日の昼過ぎには家に来ました。


なんとなくAくんのことで男の子を自分の部屋に入れてはいけないと感じていたのでリビングで応接しました。


来てしばらくは雑談をしていたので彼が何をしに来たのかわからなくなったころに、彼はおもむろに私を隣に引き寄せると、スマホを取り出し、私にAVを見せて来ました。


本当に気持ち悪かったです。

嬌声を上げる女の人も、媚びた声で「気持ちいい?」と聞く男も、赤黒い肉も、したたる液体も、なにもかも。


吐きそうでした。

目の前で流れているその行為は2次元で美化されたものとはちがう、ぬるぬると生暖かい現実で。

画面越しの女の人がされていることを、私と同じ女の身体というだけで、つい自分に投影してしまいそうになる。

2次元だったらこんなことはない。

でも3次元だから、なにもかもリアルに感じて仕方ない。


本当にわからなかった。なんでこんなことをしたがるのか?

セックスは本来子供を作るための行為であって、それ以外ではないはずなのに。

画面の向こうの彼らは子供が欲しいわけではない。

ただ純粋に快楽を求めて互いを食べている。

理性を失ったナニカ。

本当に自分とは違う常識に生きているエイリアンだと思いました。


なぜこの世に避妊具があるのか訳が分からなくなった。

本来の目的を見失った行為を当たり前のように行える周りの人間も信じられなかった。


ひたすら催す吐き気と激しい嫌悪感、そして、このときはっきり感じてしまった自分が周りとはちがう、という事実に打ちひしがれながら私は音も聞こえなくなった世界に一人こもっていました。


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