第4話怪盗ジュエリー編②〜可愛い助手が仲間になった!〜
船の中、何をしようかとさまよっていると私に依頼をしたリージェさんが私を見つけ近づいてきた。リージェさん当たり障りのない挨拶をしてそしてこう言った。
「必ずや、あの大怪盗、ジュエリーを捕まえてください!」
紺のタキシードに着飾り、大げさに手を上げ言ってくる姿はまさしく上層の階級の人間らしくて、私は少しリージェさんが苦手だった。しかし、そんなこと言っていては商売ができない。私は軽く笑って「期待にこたえられるように頑張ります。」と答えてリージェさんから目を外した。その時、私はちょうど横の階段から上がってくる少女を目にした。この船は豪華客船と言われるだけあって、お客1人に1人のお世話係がつく。その少女もお世話係としてのメイド風な制服を可憐に着こなしていたことから、きっとそうなのだろう。私がその少女の不思議な雰囲気に目を奪われていると、それに気が付いたリージェさんがその少女を呼び寄せた。
「あぁ、ノゾミ。いいところに。」
ノゾミと呼ばれた少女は、リージェさんと私に気が付くと、緊張した面持ちでリージェさんの隣に並んだ。長い髪を下で二つにまとめ、どこか幼さの残るかわいらしい顔立ちは少し固まってしまり、私を見つめていた。
「彼女がこの度ミス・レイモンのお世話係を務めます。ノゾミです。新人でまだ幼く、臆病ですが、大変器用で頭も冴えます。ぜひ、身のお世話だけでなく、捜査等にもお使いください。」
リージェさんにそう、紹介されたノゾミは軽くこちらに会釈をした。それを見てうなずいたリージェさんは笑顔を解き、ノゾミの肩をたたいて「いいか、ノゾミ。しっかりやれよ。」と囁いたのが聞こえた。あぁ、やっぱり、上層階級の人間は裏表が激しくて本当は何を考えているかが読めないから苦手だ。そんな私の気も知らないリージェさんはまた、出会った時と同じような笑顔を作ると「それでは、あとのことはノゾミにお願いします。」と言ってこの場を去ってしまった。残された私とノゾミはお互い困った顔をして黙ってしまった。おまけに、ノゾミは不安そうだ。だからといって、私もこれといってノゾミに対する話題があるわけでもない。そんな居心地の悪い沈黙がしばらくあったのち、「あ、あの。」とノゾミの方から話しかけてきた。ノゾミは恥ずかしそうに服の裾や自分の髪の毛をつかんだり話したりして深呼吸するとグッとこちらを見上げて
「わ、私ミステリー小説とかが好きで、その、こんなお遊び気分で、なんて思われちゃうかもしれないんですけど、わ、私にも捜査お手伝いさせてください!!」
彼女のせい一杯の申し出だった。リージェさんも言っていたように彼女の仕草や目線から彼女は人見知りをする子だ。そんな彼女が今会ったばかりの私にこんなことを言い出してくれるとは実に栄光なことじゃないか。それに捜査といっても私はこの船がどんな構造をしているのかもあまりわかっていないし、何よりこの船のバックグランドとかも何も知らされていない。それを彼女に教えてもらえたら、むしろ、私の方から捜査の手伝いをお願いしたいくらいだった。私が快くノゾミの申し出を承諾すると、ノゾミは嬉しさが隠しきれないのか軽くぴょんぴょん跳ねて私に何度もお礼を言った。かわいいな。娘のようなかわいさと同時に小動物のようなかわいさも兼ね備えたような子だ。見ていて愛くるしい。それにしても、十代前半ぐらいに見受けられるこんな若い子を雇うなんて船かこの子か、どちらかに事情があるのではないだろうか。タイミングをうかがって後で聞いてみよう。ノゾミを見つめながら、そう、ひとりで考え込んでいると、ノゾミは我に返って不思議そうにこちらを見つめ返した。そのあと、ノゾミを何かを思い出したのかハッとしたような顔をして、私にこれからの予定をうかがった。
「宝石の公開は夕方、公開と同時にオークションとなっております。そこに、怪盗ジュエリーが来るのではとみんなは言って…。あ、オークションの後はビュッフェスタイルのディナーになります!それで、この後のご予定はどうなさいますか?」
なんだか自分専用のメイドを雇ったみたいだ。いや、実際この船の中ではそうなんだけど。私は本当はこんな船に乗るような身分じゃないけれども、この船や従業員が私にそう錯覚させてゆく。なんとも不思議な感覚だ。私は最初から持ち歩いていた本を少し強く抱きしめると、ノゾミはそこで初めてこの本の存在に気付いたかのようにジッとこの本を見つめてきた。
「レイモン様そちらの本は?」
ノゾミが聞く。この本は…。豪華な装飾がされている魔導書のような本。そんじょそこらの本屋では決して取り扱っていないような、とても不思議な、何だろう、どうして私はこんな本を持っているんだろう。あれ
「メイドさんちょっといい?」
廊下の向こうから女性がノゾミを呼ぶ声がした。白衣のような白い服を上から羽織った、大人びた女性。ノゾミは私にここにとどまるように言って彼女のもとへ行ったしまった。
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