花
一番初めに過ごしたのはサボテンだった。
水をあげなくても育っていくサボテンといるのは気が楽だった。
その内水をあげなくなった。
水をあげなくても花を咲かせるものだと勘違いした。
本当は水を欲しがっていたことに気がつきもしないで。
いつしかサボテンは枯れてしまった。枯れ果ててからいくら水を注いでも、もう元に戻ることはない。
サボテンは私の前から消えた。
次にミントと過ごした。
今度は枯らさないように、水をあげた。
沢山沢山、溢れるほどの水をあげ続けた。
それが一番良いんだと勘違いしていた。
腐り始めていることにも気がつかずに。
いつしかミントも枯れてしまった。
あげた分の水を吐き出すように枯れていく様を、黙って見ていることしかできなかった。
ミントは私の前から消えた。
彼らと共に過ごすのは難しい。
水をあげなければ渇いて枯れ、あげすぎれば腐って枯れる。
みんな、丁度良く、適当に、なんて言うけれど、どうすればいいの?
私にはもうわからない。
だから次は向こうに合わせることにした。
相手が水を欲しがったらあげましょう。
水がいらないときには、黙って見守っていましょう。
そうしていれば、きっと上手くいくはずだから。
でも、それも結局枯れ果ててしまった。
枯れてしまったのは私のほう。
水が足りなくて、渇ききってしまっているの。
向こうが枯れる前に、私が枯れてしまった。
それからも、多くの出会いがあった。
私が向こうを枯らしてしまうことは無かったけれど、その分私が枯れて終わってしまう。
いつもいつも、渇いて枯れる。
そうしてやっと気がついた。
私は水が無いと生きていけないのだと。
普通なら腐るくらいの、沢山の水を、溢れるほど注ぎ続けてくれないと、私は枯れてしまうのだと。
そうして願った。
もしも生まれ変われるなら、一滴の水もいりません。だから、お願いです。今の私に溢れるくらいの水をください。
そうして私は探し求めている。
永遠に絶えることなく水を注ぎ続けてくれる人を。
私が水を注いでも、枯れることのない人を。
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