第8話 キリガイ2

私は何不自由ない暮らし、まるでユニコーンの血で生かされているような物。


どこからどう見ても豪華で華麗な家族。

私を除いて。私は父の不倫の子だ。私の母は私を産んでから、すぐに失踪した。

私には、秘密の聖書がある。自分だけの宗教。


空は見ない。白い翼は、とっくにもぎ取られてしまったから。

嘘をつく。自らの幻想を守るため。

獣だと狩るのは罪ではない。狩らないのが罪である。


そんな風に言い聞かせて、もう9年だ。

そろそろ疲れた。自分にも、ユニコーンにも。

継母は、私のことが嫌いだった。だからだろうか、外にはこの9年間でたことがない。

いや、まずこの家の離れにある小屋から出たことがない。


ユニコーンは空を飛ぶ。これは嘘だ。

ユニコーンは空を飛ぶのではない。空を見上げるだけなのだ。


とうとう幻想の終わる頃。いい西日が目に入った。…車の中。

「お父さん、僕はユニコーンにはなれないよ。僕は自由に空を飛べる。」

お父さんは失笑した。だが振り向いてくれない。

「いいか!お前は良い子ではない。だから私を責めないでくれ。どうかお願いだ」

お父さんの目から碓氷が落ちた。あの硬い体からも出るのだと、驚愕した。

それから何時間だろうか。僕の幻想は長い。

「ここがお前の新しい住むところだ。

ここなら自由に飛べるぞ!

じゃあな。」

…自由。そうか、これが自由か。何も支配されない環境。何も知らない世界、場所。

ここなら私もユニコーンみたいに。


ちょうど雨が降り出した。その時、車から降りて来た少年。 雨に少し濡れた髪。天使かと思わせるような目。

「ねぇ!君、面白いね。」


自信過剰な気でいう私。


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