第11話の1 校長
さてさて。周りも自分もゴリラな生活にも慣れまして、そろそろテストにございます今日この頃、私近藤慶太はと言いますれば……。
「2x²+8x-6=0の場合……えっと……」
野球とか剛力羅とか、それどころではなくなっております。
これは全部、剛力羅化する前の授業が全く理解不能な言語で執り行われていたからであって、断じて俺の学力は関係ない。その証拠に、剛力羅化して以降の内容なら、三問中一問は正解する。
……。
こうなったら奥の手だ。
(๑♡ᴗ♡๑)
「全く慶太はしょうがない」
「なんで剛力羅化してないお前は数1解けるんだよ」
「教科書見れば一発だろ」
「ゴリラ語も数式もほとんど呪文じゃん」
「数式は神秘だ。獣の会話などと一緒にしないでくれ」
「おい。全校生徒に謝れよ。特にA組以外のやつに」
これだから素質で勉強出来るやつは信用ならない。
「文句を言うなら教えを請わないでくれよ。僕だって自分の勉強がしたいんだ」
「わかったよ」
「よし。じゃあまずこの二次方程式だが、これは解の公式を使った方がわかりやすい。解の公式は言えるな?」
「えっと、2a分の-b±√b²-4ac、だったか」
「おお。よくわかったな」
「受験勉強頑張ったからな」
「では式の中の数字をそれぞれa、b、cに当てはめてみろ」
「えっと……、こうか」
「そうだ。これを計算してみろ」
「えっと………………。√81って、えっと」
「ピッタリ9だ」
「おお。ってことは……、xは2と17か」
「その通りだ。できるじゃないか」
「清一が教えるの上手いんだな!」
「慶太……」
「その顔やめろ。お前とカップリングなんて死んでも御免だわ」
なんで赤くなってんだよ。
そんな茶番の中、俺と沖田のスマホが同時に音を上げた。スマホを広いあげると……どうやらメールのようだった。しかしその宛名に、俺たちは不信感を覚えた。
「なんで、学校の校長から……?」
‖:8]ᕙ( ˙-˙ )ᕗ
テスト前日、俺は一人で校長室の前に立っていた。
入って……いいんだよな?
勇気を振り絞り、俺は校長室のドアをノックした。
「失礼します。一年B組近藤慶太です」
「入りたまえ」
声は爽やかだ。
「失礼します」
俺は重いドアを開け、校長室に入る。予想通り片付いた部屋だ。
「かけたまえ」
「はい。失礼します」
校長はよく知った人物だった。それは予想通りであり、意外でもあった。
「こうして会うのは初めてだな、慶太。敬語は使わなくていい」
「本当にここの校長だったんだね、父さん」
よく知った俺の父親、近藤伊三郎だ。
「剛力羅のことも仕事のことも、隠し続けていたからね。お前の剛力羅化がきっかけで睦美には早く知られたが、まあいずれ知る事だった」
「なんで黙ってたんだ?」
「お前たちはまだ義務教育過程も終えていない子供だった。教育者、そして父親として、然るべき時にとな。しかしその然るべき時を急用で逃してしまってね」
「急用?」
「ああ。そのことについて今、学校非公認ながらも活躍を続けるゴリラ研究部の構成員全員を個人で呼び出し、丁寧に説明しているところだ」
「それで?」
「……慶太お前、随分と成長したな」
「?」
いきなりなんだ、この父親は。
「小さい頃の記憶、どれくらいある?」
「……野球を始めた頃から、なら、それなりに」
「そうか。……彼を覚えているか?」
「彼?」
「芹沢のおじさんだ。
「ああ、雅人おじさん。その人がどうか?」
「もうひとつ、この学校の校長が雇われてることも知ってるな?」
「だいたいの公立学校はそうだって思ってる」
「その雇い主ってのがな……、芹沢なんだ」
おっふ。予想外のことを聞いてしまった。
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