第5話の1 剛力羅
「
沈黙の中、皆の視線を集めて土方さんは話出した。
「基本的に遺伝によって感染します。つまり、親が剛力羅なら子も剛力羅になるのです」
その親が俺の場合は父。校長の近藤伊三郎ということ。
つまり俺も剛力羅に……?
「この学校、超獣高校はそういった家系の人が集められ、剛力羅になりやすい高校生の間保護する為に創立されました」
「と、ということは……僕達も……」
沖田が何かに気付いたようだ。
「そうです。この学校の生徒は皆、ここにいる一年生も例外ではなく剛力羅になってしまうのです」
「へば、もう剛力羅なってゴリラとして学校さ来てるゴリラはなしてもうゴリラだった?高校生に剛力羅ならったべ?」
斎藤が方言で質問した。
……俺はだいたい理解できた。
「高校生の時期になりやすいのであって、中学校でなる人もいます。個人差があるのです」
成程。その個人差で大人になってから剛力羅になったのが先生ということか。
「では、その剛力羅という病気と近藤伊三郎校長はどのような関係に御座る?」
山崎さんだ。そういえば二・三年生もこの話は初めて聞くらしいな。
「校長先生は感染者というだけで剛力羅の原因とはあまり関係はありません。剛力羅の原因は太平洋戦争だとされています」
「待て」
村田さんが止めた。
「なんですかしょーちゃん」
「そういう情報は普通もっと後に出すんじゃないのか?数々のバトル、涙を乗り越えてやっと秘密がわかるって事に面白さがあ――――――」
「情報を既に知っているから提示するんです。面白さは関係ないでしょ?」
土方さんはばっさり斬って話を続けた。
「太平洋戦争のころ、アメリカが持ち込んだウイルスによって一部が感染したようです。ウイルスは日本全土に広まりましたが中心地であるこの町から遠いほど感染者が少ないようです」
それでこの町出身(らしい)
「超獣高校は日米安保条約により建てられた、県立と言っていますが本当は国立の学校なんです」
「なんで安保条約で?」
「アメリカの持ち込んだものによる被害なので、アメリカはその事実を公にはしたくないのです。まあ、条約関係なく日本にとっても不利なので公表したりせずに同じく隔離したでしょうが」
「ひでえ話だな」
村田さんが窓の外にいるゴリラ達を見ながら呟いた。
「俺もゴリラになんのかよ。日本が勝手に起こした戦争のせいで……」
家の鍵が閉まっている。誰も帰って来ていないようだ。
俺は合鍵でドアを開け帰宅した。
飯はカップラーメンで済ませ、すぐに部屋にこもる。
パソコンを起動し、Googleで『剛力羅』と検索してみるが……
「やっぱり出てこないか……」
色んなワードを入れて見るが出てこない。
諦めて時計を見ると既に十一時を過ぎていた。
そろそろ風呂に入るか。そう思ったところで電話がかかってきた。
スマホを手に取ると、沖田からだった。
すぐに対応する。
「もしもし」
『やあ近藤。こんな時間に悪いね』
「いやいいよ。それよりどうかしたのか?」
『いや……実はな』
少し沖田の声が聞こえなくなる。電波が悪いのか。
と思ったら沖田が言いずらそうに話してきた。
『実は……今日土方さんが言っていた事、僕は知っていたんだ』
しばし沈黙が流れる。
「……は?」
『か、勘違いしないでくれよ?僕はただ言い出すタイミングが掴め無かっただけで……』
「じゃあ土方さんが言ってたときの呟きは?『ということは』って。あれは何だったんだ?」
『ああ……あ、あれは…………フ、フォローだ。多分皆気づかないだろうと思い……』
あ、こいつ本当は知らなかったな。
「お前、知ってたって嘘だろ」
『い、いや………………悪い。嘘だ』
「じゃあ本当の要件は?」
『その……あの話聞いて、村田さんにも殴られかけ、近藤は元気をなくしてないかと思って……』
なんだこいつ……
……可愛い。
「お前……良い奴じゃねえか!ハハハ。可愛いとあんのな!」
『か、可愛いってなんだ!』
焦ってる焦ってる。
「まあ、俺はこの通り元気元気だからよ。安心しろよツンデレ」
『ツンデレではない!使い方正しいか?それ』
とはいえ、俺も沖田が元気かどうか少し気になっていたし、元気そうでよかった。
「じゃあ俺風呂行くから」
『ああ。ではまた明日。学校で』
電話を切り、俺は風呂へ向かった。
剛力羅か。俺もいつかなっちまうのか。
ん?そういえば極秘だったよな?学校存在も。
ってことは……
「野球連盟入ってない……。そりゃ甲子園行けねえわな」
俺は階段にしゃがみこんだ。
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