第3話の2 ネタバレ

 学校に行き、俺は読書をした。

 別に本を読むのが好きなわけではない。まわりが皆ゴリラだから……話ができないのだ。

 だがゴリラは頻繁に話かけてくる。

「ウホ、ウホウホホホウッホホウホ?」

 なんか質問してるようだが俺には理解出来ない。

「わり、えっと……戸口さん……だっけ?ゴリラ語わかんないや」

 そういうとゴリラの戸口さんはどこかに行ってしまった。いや、行ってくれた。

 戸口という名前についてだが、ゴリラにも皆名前があるようだ。

 俺が見分けられたのはゴリラ一人一人見た目が微妙に違うからで、戸口さんはおカッパ頭のゴリラだ。学級委員長らしいため、俺も名前を覚えられた。

 俺が本に目を戻すと、教室に誰かが入ってきた。まだ先生が来るには早い時間のはずだが……

「やあ近藤。昨日のギャストぶりだな。」

「おお、沖田か」

 沖田だった。今日の沖田はメガネが一段と輝いている。

「なんの本を読んでいるんだ?」

「ああこれな。『二十三年目の激白〜ワイが犯人やで〜』っていうんだ」

「その本なら僕も読んだぞ。とても面白かった」

 沖田は笑顔になり、メガネを更に輝かせた。

「マジで!?俺もいまニュース初出演で真犯人とかいうやつのDVD見るところなんだけど、どハマりしちゃったんだよなー」

「そこか。実はその真犯人は……いや、言わない方がいいな。後がつまらなくなる」

 そう言いながら沖田は空いていた俺の前の席(ゴリラ席)に座った。

「いや、俺ネタバレとかはあんまり気にしないから。重要な事とかラストクライマックスに関係してないなら言ってもいいぜ?」

「そうか?なら……」

 人差し指でメガネクイッをすると沖田は話し始めた。

「その『真犯人』は真犯人ではない。更に言うと殺人犯を名乗った曽根垣そねがきも殺人犯ではなく、彼は五人目の被害者遺族、牧野まきの刑事の妹『牧野里奈まきのりな』の婚約者で牧野刑事と曽根垣の二人で本をだし、真犯人をあぶり出して捕まえようとするのだ。そして引っかかった『真犯人名乗る男』だが、彼も真犯人ではないので牧野と曽根垣は凄く落ち込む。

 そこへ北野きたのにキャスターの千田せんだから電話がかかってくる。北野は千田がいつも自分の放送を見直して反省していることを牧野と曽根垣に伝えると牧野は警察に戻って更に捜査をする。まぁ、既に時効を迎えているため捜査できないのだがな。

 曽根垣は真犯人と顔を合わせてた二度目のニュースを見直す。そのとき北野は眠ってしまうんだが、目覚ますと曽根垣は北野に行きたい場所があることを伝え、牧野と共にそこへ向かう。そこは軽井沢で、曽根垣と北野はそこにある別荘のような建物入って行き――――――」

「タイムタイム、ターイム!」

 俺がストップをかけて話を止めた。

「何故だ。ここからいいところなのだが?」

 いやこいつ……

「何故って……お前……」

 沖田は首を傾げている。それが腹立ち俺は言った。

「お前、思いっきし重要なこと言いまくってるし今から言おうとしてるの絶対クライマックスじゃん!馬鹿なの!?ネタバレにも程があるわ!」

 俺の指摘を聞いた沖田が「がーん」と言いそうな顔で……

「がーん」

 言って、固まってしまった。

「ま、まさか……僕としたことがネタバレしてしまうとは……」

 なんかすっげー落ち込んでる……

「こ、この僕が……これでは、この本を楽しみにしていた人達に申し訳が……」

 そこまで配慮するのはとてもいい事だが……

 すっげーめんどくせぇーーーーーーー!

「近藤!僕はどうしたらいいんだ!」

「何故俺に聞くし……」

 俺は関係ないから……いや、これは使えるかもしれない。

「そうだな。全裸で校庭一周して『僕はおっぱいが大好きです!』って叫んで今後俺の頼みをなんでも聞いてくれるならきっと許して貰えるぞ。」

「なるほど!わかった!」

 納得すんのかよ……

「ウホウホホー」

 そこで先生が来た。

「先生が来たようだな!それじゃ僕はこれで」

 そう言って沖田は駆け足教室を出て……二組ではなく校庭を目指して行った。

「ウッホホホウホホウ。ウホウホホウ」

「ウホッ」

「ウホホホウウホ」

「ウホ」

 先生が出席を取り始めた。

「僕はおっぱいが大好きでーーす!」

 今校庭から何か聞こえたが……気のせいだ。

 今日は普通に一日過ごせればいいがな……

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