第1話の2 ベースボール
入学式が終わり、俺たち(俺とゴリラ)は教室へ戻った。
入学式が一時間目と二時間目だったから、次の時間は三時間目。時間割では学級活動だった。
何故かって?
決まってるだろ。誰と話すんだよ。
自分でも信じられない。あんなにフレンドリーで元気な俺が教室の隅っこで読書。俺はどうしたのだろうか。
どうしたって、そりゃあまあ……ゴリラ?
「ウホウホホー」
俺があーだこーだ考えていると先生が入って来た。
「ウホッ。ウホッホッホウホーウ。ウーホッホ」
何言ってるか分からないが、入学初日の学活って言えばあれだよな……?
自己紹介だよな。
ガシャッという音とともに、最前列右端のゴリラが起立した。
「ウホウホホーホ、ウホーホウ」
起立したゴリラが何か言っている。やっぱり自己紹介だろう。
最初のゴリラが座り、そいつの後ろに座っているゴリラが立った。
「ウホッホーホ。ウホウホホー」
こいつも喋った。自己紹介タイムだ。確実に。
俺の出席番号は六番だ。六人目の俺までゴリラの自己紹介が続き、俺の順番になった。
ここは人間の言葉で喋って良いのか?ゴリラ達に伝わるだろうか。
いや、俺に伝わらないゴリラ語言われたんだ。日本語が伝わらなくても不公平では無いはずだ。寧ろ伝わった方俺に不公平だ。
ここはいつも通り元気に行こう!
「俺は近藤慶太!野球が大好きだ!よろしくな!!」
伝わらなくてもいいんだ。ここは平等に――――
「ウホウホー」
「ウホウホホー」
「ウホー」
え?伝わったのか?ウホウホの言い方が地味に「よろしく」に聞こえる感じだったんだが。伝わったのかよ。
「ウホウーホー」
先生もなんか納得してる感じだし……
……いや、不公平だろうが!
なんで伝わるんだよ!伝わるならゴリラ達も日本語話せよ!
あ、そうか。声帯が発達してなくて……
って、納得できるかよ!
ゴリラが日本語を理解できる事にショックを受け、四時間目になった。
この時間は部活動紹介だ。
俺は勿論野球部に入る予定だが、色々と面白い部活があった。
新しい競技を作り出すのを目的とした『新競技開発部』
剣玉を極め、普及を目指す『剣玉部』
駄菓子を食べるだけの『駄菓子部』
まあ、そのどれもがゴリラ達を主体とした部活なんだがな。
そして一番気になったのが……
「『草部』ってなんだよ……」
草の部活って何すんだよ。
説明もゴリラ語で意味が分からなかった。
いや、興味ないけど。
「で、でも気になるし……見学だけでも行ってみるか?」
そして放課後。俺は草部の部室に行った。
「し、失礼しまーす……」
俺はそーっとドアを開け、中を覗いた。
その中では日本人では考えられない、衝撃的な光景が広がっていた。
ゴリラ達が……草を食べていた。
まあ、予想はしていたけど。
しかし、ここに来た目的は達成出来た。
『草部』とは、『草を食べる部活』である。
「そのまんま……ってか、それまんま(ご飯のこと)?」
……俺何言ってんだ?
ドアを締め、俺は野球部のいるグラウンドへ向かった。
グラウンドでは野球部がノックを受けていた。
「聞いた通り、みんな体つきいいなあ!」
俺が野球部員の体つきに感心しながらグラウンドに近づいて行くと、前言撤回したい程の事実を目の当たりにした。
体つきは確かにいい。確かにいいけどさあ……
「……全員ゴリラかよ!」
これ、俺入ったところで意味あんのか!?俺やってけるのか!?
見ろよあのノッカー。キャプテンっぽいけど、打撃が強すぎる。
見ろよあの守備。いるだけで壁じゃねえかよ。
見ろよあの投球練習してる
これ本当に、甲子園行けるんじゃねえか?俺ナシで。
俺は驚きと感心を露にし、半年程前の事を思い出した。
〜半年前〜
「超獣高校?」
俺は先生に言われた高校の事を友達に話した。
「ああ。甲子園には行ってねえけど、野球凄く強いらしいぜ」
「甲子園行ってないなら少なくともお前の目標には……」
友達に反対されたが、俺は自分の考えを主張する。
「そんなチームだからこそだ。俺の力で甲子園行くんだよ。それに、そのチームの人みんな体つき良いらしいからな。俺もムキムキになれるかも!」
「お前は今でも十分ムキムキだろうが」
そんな話をして友達と笑いあった。そんな思い出……
いや、確かにこの人達ムキムキだよ?
でもゴリラじゃん。ゴリラならそりゃあムキムキでしょうよ。
……甲子園行けない理由……実力じゃないよな。
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