俺以外クラス全員ゴリラなんだが?

窓雨太郎(マドアメタロウ)

1章です

第1話の1 筋肉あればかっこいい。

 俺は近藤慶太こんどうけいた。運動が好きで、中学校では野球部だった。

 そして今年、俺は憧れていた高校、『県立超獣高校けんりつちょうじゅうこうこう』に合格して入学!!

 俺は完全に浮かれきっていた。

 この学校で甲子園に行ってやる。

 この学校でスーパー選手になってやる。

 俺は希望だけで満ちていた。

 この学校の秘密も知らずに……


 俺のクラスは運動科の一年三組。部活動の成績は良いが、勉強はからっきしという奴が多いらしい。

 俺は前期で受験して国語、数学、英語、どれも五十点代ギリギリといったところだから、このクラスではいくらかは頭のいい方だと思う。多分……

 それはさておき、今日は入学式。登校初日だ!

 どんなクラスメイトなのか超楽しみだ。

 可愛い女子とかもいるのかな?

 友達いっぱいできるかなあ?

 そうやって心を踊らせながら、俺は教室に向かう。

 そして遂に、教室の真ん前まで来た時だ。

 ものすごい違和感というか、圧迫感というか……

 まず、ドアが異様にデカい。人間用なのか怪しいくらいだ。

「す、すげぇ……」

 俺はもはや感心してしまった。

 このドアの向こうに……今年一年一緒に暮らす仲間がいるんだ。

 そう思うとなんだか緊張してきた。

 男慶太。勇気を出すんだ!

 自分に活を入れ、ドアを開ける。

「やあみんなおはよう。俺は近どぅ!?」

 自己紹介途中に言葉を詰まらせた。

 驚いてしまったのだ。その光景に。

 クラス全員……だった。

 いやいやいやいやいや!

 考えろ慶太!ここは超獣高校運動科、一年三組だ。

 それがどうしてだ!?中にはゴリラしかいないだと!?

 ゴリラなんて種同士しゅどうしでしか理解できない作戦とか立てたりするが、結局はパワー凄すぎるだけのB型集団だ。(ゴリラは全員B型です。)

 それが何故ここにいるんだ!

 待てよ?

 このクラスは運動出来て勉強出来ない奴が来る場所。

 ゴリラはパワーこそ計り知れないが、頭脳は……人間と同じくらいだった気がする。しかし人間の勉強にはついていけないんだ。

 ということは……

 ゴリラこのクラスにふさわし過ぎるだろ!

 てか逆に言うと俺、ゴリラと同レベルなのかよ!

 ちょっとどころか超ショック。

 しかしこれが現実だ。受け入れよう。

 そう思い、さっきのは見間違いである事も祈りながらもう一度ドアを開ける。

「よ、よろしくー……」

「ウホッ」

「ウホッホ」

「ウホーウ」

 やっぱり見間違いじゃないんかい!!

 しかし見間違いじゃない事も想定していた俺は、冷静でさえなかったものの、取り敢えず教室に入る。

 教室は三十五匹のゴリラの熱が半端じゃなかった。

 俺は居場所がなく、机に突っ伏していた。

 すると突然ドアが空き、何かが入って来る気配がした。

「もしかして先生か!?」

 俺は顔を上げ、教卓の方を見た。

 そこに居たのはスーツをバシッと決めた……

「ウホッ。ウホッホ」

 ゴリラだった。

 もうダメだ……俺の高校生活、終わりだ……

 初登校で既に絶望を感じていると、ゴリラ達が大移動を開始した。

「ああ。もう入学式の時間か」

 俺はゴリラの汚れた尻について行き、校庭を目指した。


「ウホッ。ウーホッホ。ウホーウ。ホッホウ」

 入学式は全てゴリラ語で話された。

 俺の予想を遥かに超え、一年三組だけでなく他のクラスもゴリラだったようだ。

 ゴリラの所為でよく見えないが、人間の生徒は数える程しかいない。その殆どが俺の様に絶望に満ちた顔をしていた。

 もうこの学校は終わっているのか。

 そう思った時だった。

「えー、新入生の皆さん。入学おめでとうございます」

 人間の声だ。

「私は生徒会副会長。土方冬紅ひじかたとうこです」

 俺はふと声のする方―――ステージを見た。

 そこでは黒髪ロングの綺麗な人が、人間達に向けて話をしていた。

 絶望の顔をしていた俺も、他の人間も表情がさっきよりも明るくなり、皆土方冬紅を見ていた。

「人間の皆さんは今、周りがゴリラばかりで絶望していると思います」

 全くその通りだ。

「この学校に不安を感じているところだと思います」

 本当にその通りだ。

「しかし、安心して下さい。きっとその不安は解ける筈です。」

 マジかよ!

「まずはこの学校を信じ、頑張って勉強、部活をして生活して下さい。そうすればきっと……」

 きっと……なんだろうか。人間が増えるのか?それともゴリラが減るのか?いずれにせよ、安心できるのだろうか。

「きっと、ゴリラ語がわかるようになります」

 ――――――――――――――――――………………

 そう言う問題じゃねぇぇぇぇええええええええええ!!!!

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