第7話 舞波工務店-2

「舞波さんということは、社長さんはお父様?」

「はい。父が社長で、ワタシは専務ということになっています。」


よくもまあ、親子でこれだけ違うもんだ。というか、社長が若いころは社長の風体がはやりの顔であって、今の時代には専務が流行のカオであって、時代に合わせて遺伝子がいい仕事したんだなあ。なんてどうでもいいことを考えていると、


「ええと。瀬尾さんは設計事務所にいらしたんですよね。CAD(PCで図面を書くソフト)は使えますか?」


わあ。やっぱり来たか。

ここはかっこつけてもしょうがないんで、


「いえ、触ったことはあるんですが、得意というほどでは・・・・。」

「そうですか、最近はほとんどの図面はCADで書いているので、そこは慣れていただくとして、メールのやりとりとか、エクセルやワードは使えますか?」

「はい、それはそれなりに・・・。」

「わかりました。CADはベクターワークスなので、おいおい慣れてください。業務内容は、図面書き、プレゼンボードの作成、現場の工程管理ですね。あと監理業務、メンテナンス・・・。と設計事務所と違って、いろんな職種でやることはたくさんあるんですが、大丈夫ですか?」


「正直、わからないところはあるので、なんとも・・・。」


「いやいや!大丈夫だよ!わかんないところは俺が教えるからさ!うん。なんなら入社してしばらくは俺と一緒に動けばいい!図面書きなんかは専務が教えてくれるから!で、いつから来られる?」


「社長・・・。ですから、瀬尾さんはまだ入社されるかどうかのご検討をされているところなんです。そうやって誰でも入社させるから、せっかく来た人もやめちゃうんですよ。今回はそうならないように、僕も面接に同席しているんでしょ」


「・・・・。」


おとなしくなる社長。

いいテンポの親子だなあ。なんだかほっこりする。

「すみません。では、お給料とか、お休みの事等、ご説明させていただきます」


・・・・それから改めて、業務内容とお給料、勤務時間について説明を受けた。


お給料は設計事務所に勤めていたときよりも大幅に上がるようで、原則、土日祝日休みだが、担当物件を持った場合、施主さんのお休みにあわせて打合せもしなければならないので、休日出勤も結構あるらしい。


とりあえず、試用期間ということで3カ月後に、本採用かどうか(というか、あたしがここに就職するかどうか)を決定するということになった。


「ハンサム」社長は「よろしくね!」と豪快に。


「イケメン」専務は「よろしくおねがいします。」と冷静に。


その日は見送ってくれた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る