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「昨日の夜は大変だったんじゃない? 夜、雨降ったでしょ」
「ふふ、みんないい子達だから沢山お手伝いしてくれてね。大変だったのは大変だったけど、とても楽しい夜になったわ」
「それなら良かった」
クリスマスミサは二十四の夜と二十五の日中に行われる。昨夜は雨が降っていたから色々と大変だったに違いない。でも、みんなとワイワイするのは雨が降っていても楽しいんだよなぁ。
「子供たちは喜んでいた?」
「もちろんよ。今朝は枕元にプレゼントが置かれているでしょう? みんなとても良い笑顔だったわ」
穏やかなシスターの表情にこっちまで優しい気持ちになる。子供は純粋で良い。だからこそサンタさんが来るわけで。
「想ちゃんのところにもサンタさんは来たのかしら?」
「悪い子だからかな、来なかったみたい」
「ふふ、そんなことないわよ。きっと置き忘れちゃったのね」
この笑顔がプレゼントだったり、ね。
「おにいちゃん、サンタさんこなかったの?」
「え?」
可愛らしい声と共に、コートの裾を引っ張られた。視線を下ろすと、そこにいたのは先ほどの小さなスノーマン。
「そう、お兄ちゃんには来なかったんだよね」
しゃがみ込んで視線を合わせると、スノーマンは白いミトンの両手で顔を覆うようにして笑った。そこまで笑うことか?
「ふふふふふ、おにいちゃんわるいこだったんだね。かわいそう」
「う」
「ふふふふふ」
ちょっと笑わないで、シスターたち。別に俺、可哀相じゃないしっ。
「だから、はい」
「ん?」
「これあげるね」
下げていたポシェットに手を突っ込んで、それを俺の前で広げて見せた。小さな手のひらには、金貨が三枚。
「らいねんはサンタさんくるといいね」
肩を引き上げてニッコリと笑ったその子は、金貨を俺の手に乗せてタッタと走り去ってしまった。
「良かったわね、想ちゃん、ふふ」
だから笑わないでって。
「いい子だね、天使みたい」
軽やかに走り去って行った背中には白い羽が生えていても不思議ではない。
「子供はみんな、天使だわ」
「そうだね」
「もちろん、想ちゃんもね」
「昔の話でしょ」
「ふふ」
シスターが柔らかく笑う。まるで昔に戻ったようだ。
今はもう天使ではなくなったとしても、天使だった頃の自分が過ごしていた空間。特別な思い出の一つだ。
「どうか楽しんで行ってね」
「ありがとう」
今日のミサが素晴らしいものになることを祈って・・・!
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