ノットロンリークリスマス

カゲトモ

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「はぁ」

 雨は夜更け過ぎに、雪へとは変わらなかった。しとしと降る雨で静かな夜ではあったけど、朝方には上がったようだ。それでも空はどんよりと厚い雲を敷いてはいるけれど。

 吐いた息が白く昇る。地面は凍っていないけれど、気温が低く寒い。風がないことだけが救いだ。

「さみぃ」

 口に出しても体感は変わらないけど、つい口を吐く。だって寒いから仕方ない。

 両手をポケットに突っ込んで足だけを動かす。一つ一つ色の違うレンガを眺めながら門の前で一度立ち止まる。

「きゃははは!」

 隣を小走りで通り過ぎた小さな子供がはしゃぎながら門をくぐった。白いマントに赤いリボンがよく映える、小さなスノーマンみたいな、可愛らしい子供だ。

 少しだけ寒さが和らいだ気がして、そのまま門をくぐった。中には既に沢山の人が集まっていた。子供も大人も、みな配られているココアを美味しそうに飲んでいる。

「そうか、冬休みか」

 こんなド平日にどうして子どもがいるのだろうかと思ったが、今日はもう冬休みだ。そう言えば、俺がクリスマスミサに参加していた時も、冬休みに入っていたから曜日関係なく参加していた。

 身近に子供が居ないとそんなことは考えずに生きているからな。仕方ない。

「どうぞ」

「ありがとうございます」

 人当たりの良い笑顔で紙コップを差し出してくれたのは、若いシスターだ。俺よりもずっと下に見える。

 配られていたココアは苦みの少ない、それでいて甘すぎない。うまく調整されていて、これなら子供も大人もみんな飲めるココアだ。

 誰が作ったんだろう、と思うのはもう職業病だと思う。

「あらあらあら、想ちゃん来てくれたのね」

「たまたま近くを通ったからさ」

 なんてね。まぁここからなら店までそんなに時間もかからないし、日中のミサなら問題ない。

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