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あれは夢だったんじゃないだろうか。
次の日、ラオスーの家で目を覚ました僕は思った。いや、本当はそうじゃない。そう思いたかっただけだ。あれが現実に起こったことだというのはよく分かっている。
「昨晩、何かあったのか」
朝食のときに、ラオスーに訊かれた。
「いいえ。ちょっと散歩に出ていただけです」
とっさに僕はそう答えていた。
「そうか」
ラオスーはそういったけど、たぶん何かあったと気付いている。でも、僕にはどう説明すればいいか分からなかった。
朝食は穀物をお湯で煮たどろっとした食べ物だった。
「ところで、これは何ていう食べ物なの」
「粥じゃ」
相変わらずあっさりした食事だ。
「このあたりで米は貴重なんじゃぞ。サキに特別に作ってもらっているんじゃ。さあ、食べたら始めるぞ」
ここでこんなことをして、いったい何になるんだろう。そう思った自分に僕は驚いた。僕は本当に地球に行きたがっているのか。
自分の気持ちが分からなくなっているけど、はっきりしていることがひとつある。僕がどういう選択をしようと、ファントムの計画は実行されるということだ。それはどうしても阻止しなければならない。例え地球にとって火星の人間が人間と認められていなくても、そんなことは関係ない。それだけは絶対にだめだ。
「どうした」
ラオスーが怪訝な顔をして僕を見ている。
「なんでもない。お願いします」
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