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 ワイルド・グース・チェイスことチェイス・リー、通称ラオスーはアナサインド・テリトリーの中、サキの家の近くに住んでいた。僕はサキの運転するレッドフィールドのオートモービルでテリトリーに出発した。途中、乗り捨ててあったサキのオートモービルを拾い、二台でラオスーの家に到着した。

 畑と小さな農場の側に、こぢんまりとした家が建っていた。オートモービルを降りた僕は、家の側でぎょっとして足を止めた。

 壁際に、ファントムのヘルメットが十個ほど無造作に転がっている。

「サキ、これ……」

 僕はそばに来た先を振り返った。

「ああ、彼らが仕留めたファントムのものよ」

「彼ら?」

「ラオスーとニキ。私がこっちへ来たときはすでにニキは出て行ったあとだったけどね」

 サキはドアをノックした。

「ラオスー、いる?」

 返事はない。

「留守かな」

 サキがそうつぶやいたとき、僕たちの後ろから声がした。

「なんじゃ」

 振り返ると、小柄な老人が立っていた。手に野鳥をさげている。足音もしなかったし、気配も全く感じなかった。

「びっくりさせないでよ、もう」

「しばらくぶりじゃな」

 ラオスーは長い白髪を背中で束ねて、簡素な服を身にまとっていた。布を体に巻きつけたような服だ。それにしてもこんな小さな老人にファントムを殺すことができるなんて信じられない。

「あんたは、あのときの坊主じゃな。体は大丈夫じゃったか」

 白いあご髭をなでながらラオスーは僕を見上げた。

「はい。あのときは助けていただいてありがとうございました」

「いや、なに、たまたまファントムと出くわしただけじゃ。礼には及ばん」

 白髪の老人はひょこひょこと僕たちの側を通り過ぎて家のドアを開けた。

「まあ、入りなさい。ろくなもてなしもできんが」

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