026

 確かにヨミの操縦は荒っぽかった。着地のたびにバランスを崩して、操縦席がぐらぐらと揺れた。一度は横転しそうにさえなった。でも、そんなことは気にならないくらい、MAからの眺めは素晴らしかった。ヨミは僕のためにMAのジャンプの高度を最大にしてくれていた。

 十回目のジャンプのあと、ヨミは着地したMAをそのまま歩行させた。

「少し先行しすぎてしまった。あいつらが追いつくのを待とう」

 僕たちは茂みのそばに大きくそびえ立つ木のそばでMAを降りた。足がふらふらして、思わず木の根元に腰を下ろしてしまった。

「初めての搭乗にしては上出来だ。今度操縦を教えてやる」

「僕にも操縦できるの?」

「簡単だ。君にならすぐできるよ、少年」

 本当だろうか。僕はMAを見た。こんなものを作れるファントムたちの技術力は僕の想像をはるかに越えている。

 ファントム、僕たちの祖先。僕はこれまで何度も頭の中で繰り返しているバーニィの話をまた思い出していた。

 二日前、彼が宿屋で僕に語った話を。


「奴らは俺たちのご先祖さまだよ」

 バーニィの言葉を理解するのに数秒かかった。

「先祖って、あの、僕の父のさらにその父の、そのもっともっとさかのぼって……その先祖のこと?」

「そうだ」

「でも、先祖ならとっくの昔に死んでしまってるんじゃ……」

「奴らはこことは別の世界で生きているのさ。ともかく、俺たちも昔はあのファントムみたいな体だった。ファントムは俺たちの三倍以上の体力・筋力を持っている。だから奴らが使う銃はあれほど強力なんだ。逆に俺たちの銃の威力じゃ奴らを殺せない。まあ、あの特殊なスーツのおかげもあるんだが」

 僕はバーニィとキャットの銃弾を跳ね返したファントムの様子を思い出していた。

「だが、俺たちの中にも、まれにファントムと同じ体を持って生まれてくる者がいる。それが『先祖返り(Throwback)』、TBと呼ばれる者たちだ」

 僕は思わずTBを見た。彼女は相変わらずナイフで木を削っている。TB――スローバック。先祖返り。

「じゃあ、TBみたいな人は他にもたくさんいるんだね」

「俺は医者じゃないから正確な数字を把握しているわけじゃないが、毎年何人もの『先祖返り』が生まれている。そして、その多くはファントムに連れ去られているんだ」

「どうして……」

 バーニィは首を振った。

「理由は俺にも分からん。実験に使われるのか――」

「ちょっと待って。もしかしてそれに父さんが関わってたの?」

「俺がドクと知り合ったとき、あの人はもうそういうことの一切から身を引こうとしていた。だから俺には詳しいことはいえない。でも――そうだ、昔は関わっていた」

 いつの間にかTBがこちらを見ていた。僕を見つめるTBの目にはまったく揺らぎがない。

 そうだね、TB。父さんが何にどう関わっていたとしても、僕は父さんを信じるよ。

「わかった。父さんに会って直接訊く」

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