第4話 やり直しは唐突に終わった。

僕はもう三十五歳になろうとしていた。

今の今まで異世界に行くために勉強し、医者になって結婚し、まともな人生を歩んできた。

あっという間に時間は過ぎてしまったようだ。今日は僕の前世での命日。つまりは誕生日だ。僕は結婚して七年になり、三歳になる

息子もいる。僕はこんなに幸せな人生を送れることができた神様に感謝している。

僕はいつも通り仕事を終えると家まで歩いて帰ることにした。

そう、その帰り道だった。

息子と同じくらいの歳の女の子だった。可愛い人形を持った女の子が道路に人形を落としてしまったのだ。女の子は人形を取ろうと道路の方に歩いて行く。

向こうから車がスピードを出してやってくるのが見えた。

『あ、危ない。』

その瞬間僕は自分の前世での死に際を思い出した。

と、同時に僕の意識とは無関係に身体は少女の方へ走っていった・・・・。


気づいたら僕の視界は真っ白になっていた。そこには白く長い髭に白い服。あの時神様がいた。


「神様!あの少女は?少女どうなったのでしょうか。」


「おおー前の若いの!もう死んでしまったのか。」


『まぁ知っておったのじゃがな』


「それより、あ、あの少女はどうなったのでしょうか!?。」


「安心するのじゃ。あの少女なら病院のベットの上で眠っているぞ。」


『ああ、よかった。あの少女は助かったのか、、、。ん?今、神様に話したんだよな?。って事は僕は助からなかったって事。助からなかったってことは死んだって事。死んだって事は現実世界にいないって事。現実世界じゃない・・・・・・。

異世界!そうだ僕は果たして異世界に行けるのだろうか?。』


でも、今の僕の本心は現実世界で過ごして行く中で結婚をし家族といる時間の方が異世界に行くことよりも大切だと思うようになっていた。


「神様、僕は本当に死んでしまったんですよね?。」


「ああ、残念じゃがそうじゃよ。」


「それで僕は異世界に行くことができるのでしょうか?。」


「そこら辺も踏まえて君に説明しておくことがあるのじゃ。よく聞いておれよ。」


「まず、おぬしが異世界に行けるか行けないかじゃが。おめでとう合格じゃ。おぬしは異世界に行くことができるぞい。評価ランクは言わない方が面白いじゃろうから言わないでおくぞい。

重要なのはここからじゃ。

異世界というのは本来あってはならないものなのじゃよ。

異世界には五つの国があってじゃなあ。黒の国。白の国。赤の国。青の国。そして、黄の国。この五つの国は遠い昔日本神話として作られた話のはずだったのじゃが、それは実在したのじゃ。そしてその国をかつて一つにしたのが黄の国じゃ。その黄の国は世界が一色に統一されることで輝く『死の宝玉』を使って現実世界の死者を蘇生をし、奴隷として使い捨てをした。

それをいかんとしたわしら神様が現実世界の人間を成仏という形で天国に送る事を始めたのじゃ。

じゃが、死者の宝玉は自分自身を現実世界で蘇生することもできるのじゃよ。そう、じゃがらわしらは人生の評価ランクをつける事で真っ当な人生を歩んできた者に異世界を統一すれば現実世界の人生の続きを送る権利を与えたのじゃ。ほとんどは天国に成仏する事を選ぶものばかりで、異世界へ行く事を選んだ者は若くして亡くなり現実世界でやり残した事がある者ばかりじゃったな。」


「なんで僕は生まれ直すことができたのですか?。」


「それはおぬしがどうしても異世界に行きたいようじゃから、もう一度現実世界で人生を送って人生の楽しさを実感してもらう事で異世界に行かず、成仏してもらおうと思ったのじゃが・・・・。


おぬしは今、異世界に行く権利があり現実世界に戻りたいと思っておる。違うじゃろうか?」


僕は頷く事しか出来なかった。


「じゃあ、おぬしの異世界での色を確かめるからここの水晶に手を置くのじゃ。」


するとその水晶玉は赤色に変わった。


「おぬしは赤の国のようじゃな。

念のためじゃ、

最後にもう一度聞いておくが異世界に行くでいいのじゃな?

今まで現実世界に戻れた者はまだいないのじゃ。それと、異世界で死んでしまったらもう成仏もできない。これだけは言っておくぞい。」


「行かせてください。僕は現実世界で家族とまた過ごしたい。」


「おぬしは随分変わったようだな。よし、行ってくるのじゃ。」


こうして僕の異世界生活が始まる。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

僕は異世界に行くために人生をやり直すと決めた 佳山 千海 @kayamasenkai

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ