第3話


終業を告げるチャイムが響き渡る。


「起立、気をつけ、礼」


日直の当番の号令に合わせてクラスメイト全員が立ち上がり礼をする。本日の授業はこれで終わりで男子は一斉にランドセルを肩にかけ教室から飛び出し行った。


案の定、担任先生に「廊下は走らない!」と大声で注意されていた。


「心優ちゃん一緒にかえろ?」


「うん。一緒に帰ろう」


心優の隣の席に座る髪の長い女の子で一番の仲良しの桜田 まひる 。朝はいつも心優が遅刻寸前なので一緒に登校出来ないが下校は毎日一緒に帰っている。


まひると心優の家は近所で幼稚園の頃からの親友だ。いつも一緒、何をするのも一緒。親同士も仲が良く家族ぐるみで付き合っている。


「ねえねえ、心優ちゃんの家最近、猫飼ったの?」


「えっ?なんで・・・」


「心優ちゃんの家を通る度に、黒猫が屋根に寝てたり家の周りをうろうろしてるから飼い始めたのかと思ったの」


「そ、そっかあ。う、ウチの猫じゃないかな」


あからさまにしどろもどろな回答をする心優。付き合いの永いまひるには普通に嘘をついているのが分かった。まひるは、目を細め疑いの眼を向けた。


「心優ちゃん何か隠してる!あの猫本当は、親に内緒で飼ったりしてるんじゃないの?」


「す、鋭い。ーーあっ!」


思わず声が出てしまい慌てて口を塞ぐ心優。


「やっぱり。心優ちゃん嘘つくの下手だもん。心優ちゃんは素直だから」


「えへへ。ごめんね」


「そんなにあの猫飼いたいの?」


「飼いたいって言うか、成り行きで・・・」


心優は頬を人差し指で掻きながら苦笑いを浮かべた。


「ーーじゃあ、私も一緒に心優ちゃんのママに頼んであげようか?」


「本当!ありがとうまひるちゃん」


まひるの両手を力強く握り笑顔を見せる心優。まひるは顔を紅く染めて照れていた。




「だーめでーす!!」


「なんでー?いいでしょ。お願い」


「だーめ!」


「私からもお願いします。心優ちゃんどーしても猫飼いたいの。お世話私も一緒に手伝います」


「まひるちゃん・・・」


「ママお願い。ちゃんと世話するから」


二人の真剣な表情を見て母親はため息をつき、


「本当にちゃんと世話するのよ」


「うん!」


「良かったね心優ちゃん」


「まひるちゃんのおかげだよ、ありがとう」


二人は手を取り合い満遍の笑みを浮かべて喜んだ。



「何がちゃんと世話するだい?僕が君の世話をしてるんだけど」


眉間にしわを寄せるニコル。


「家の周辺をうろうろしているの他の人が目撃しているからみんな怪しんでるのよ。飼い猫って言ってる方が都合が良いじゃない」


ニコルが顔を膨らませ、


「ーーけど、君が僕の世話をするってのは納得いかないね!話がすり替わってるよ。僕は人間の世話になるつもりなんてないけどね」


「はい、はい。とりあえず家の出入りは自由に堂々と出来るようになったのでよろしく」


心優はニコルの話をそのままにベッドに倒れ込んだ。


「ぶーっ、納得いかないね。僕は魔法省公認の教育係なんだよ」


ニコルは、余程根に持っているのか心優が聞いてないと分かってもいつまでも一人でブツブツと文句を言っていた。


「ニコル、にゃーにゃーうるさいよ」


「ーーーー」


「・・・ニコル?」


倒れ込んでいたベッドから振り返りながら起き上がりニコルに目をやった心優。先ほどとは打って変わり真剣な表情を浮かべている。


「ニコルどーしたの?」


「心優、薄っらだけど邪悪な気配を感じるんだ。パトロールに向かうから準備して」


「パトロール・・・」


「これも魔法使いの大事な役目だよ!」


「そ、そーなの」


ニコルに言われるがまま、半信半疑で家の外へとパトロールに向かう心優だった。

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