蜃気楼10 それは華さんが生まれる前のことです、華さんの家系は代々椎葉村の神事を司る巫女で那須の大八は


蜃気楼10


それは華さんが生まれる前のことです、華さんの家系は代々椎葉村の神事を司る巫女で那須の大八は

平家が崇拝する安芸(広島)の厳島神社の分社を椎葉村の鶴富屋敷のそばに建立したのです。、


村人の鎮守神として信仰をあつめていました、華さんの一族はそこの神事を代々司っていたのです、

生まれた長女が巫女になる事に決められていてその頃、華さんのお母さんがその役目でした


もちろん巫女ですから結婚する事は出来ません、汚れない処女のみが神のお告げを受け取る事が出来る

と言われている為一生処女でいなければならなかったのです。


しかしそのなある日一人の青年が村にやって来ました、彼は東京の学生で卒論のテーマ仏教伝来について

百済(朝鮮)と大和朝廷の関わりを調べる為、神話の国、宮崎を旅していたのです、

神事が無い場合は華さんのお母さんは椎葉村の温泉旅館で働いていたのですが、青年はそこに宿泊しました


偶然にも部屋の担当になったのですが、青年は華のお母さんを見てびっくりしました、それは新羅(朝鮮)の

姫ソンファに生き写しだつたのです、


むかし朝鮮半島は新羅・百済・高句麗の三国にわかれ長いあいだ争いを続けていました、新羅王は百済との

争いを収める為ソンフア姫を百済の皇太子の后に送り込もうとしました、ソンフアには思いをよせる男が

おりましたが両国の平和の為、百済に行く事にしたのです、


最後にその男に別れを言うため、二人の思い出の場所で会う手紙を書き届けました、しかし約束の時間に

なっても彼はあらわれません、これを知った新羅の王が彼を殺してしまったのです


そんな事とは知らないソンフアは失意のうちに百済の皇太子のもとに行きます、しかし百済の貴族の思惑

でなかなか結婚する事は出来ません、百済の貴族の娘ヨンと深い中になっている、皇太子も政略結婚の

相手のソンフアに会おうともしないのです


しばらくして、皇太子は顔くらい見る気になったらしく、お忍びでソンフアのもとに出向きました

しかし皇太子はソンフアの顔をみるなり気に入ってしまったのです、それは彼女が世にも稀な美女だった

為、皇太子は一目惚れしてしまったのでした、


それからたびたびソンフアの所へ通うのですが、ソンフアは内に閉じこもり心を開こうとはしないのです

百済の貴族の娘ヨンは皇太子に自分と結婚するようにせまりますが、皇太子は首を縦にふりません


ヨンは新羅に密偵をおくりソンフアの過去をしらべ、好きな男がいた事を知り、この男を新羅王が殺し

百済にソンフアを送り込んだ事を皇太子に知らせます、これを聞いた皇太子は怒るどころか、両国の平和

の為けなげに耐えているソンフアが益々好きになっていきます、


ヨンはソンフアに皇太子にこの事実を伝えた事を知らせ、結婚を諦めて新羅に帰るよう言います

ソンフアは新羅王が自分の好きだった男を殺した事をしり、嘆き悲しみ、死のうと思い海に身をなげ

ました、


虫の息の状態で館に運びこまれ、これを聞いた皇太子はあわてて駆けつけ、医者になんとしても

助けるよう言い、自らもそばで一睡もせず看病します、やがてソンフアは息を吹き返します、

皇太子は自分の許可なく死ぬことは許さないとソンフアを強く抱きしめたのです。


ソンフアは皇太子の優しさに段々心を開いていき、皇太子と結婚します、これにより新羅・百済は

しばらく争いを止め平和になったのです、この時代に大和朝廷は百済と緊密な関係になり、仏教・

建築・芸術が百済を通して日本に伝えられ、平城京の文化が花開くのです


青年はそのソンフアとそっくりの華のお母さんに好意をもってしまったのです、華のお母さん、よしの

もこの青年に好意をもちましたが、自分は巫女の身であり、恋する事は出来ません


青年は、よしのに椎葉村を案内してくれるよう頼みました、よしのはいそがしいのでと断ったのですが

この旅館の女将に頼み込み、女将から案内するように言われ、しかたないので恭子を誘って青年を

案内する事にしたのです。


よしのは、なるべく恭子を前面に出し自分はあんまり口を聞くことをしないよう心がけたのですが

そんな、よしのに青年は益々恋心を抱いていったのです、


そして二人が深い中になるにはそう時間はかかりませんでした、それは青年を案内した2日目の事

です、その日は恭子は知り合いの結婚式で一緒にいけないので、よしのと二人で近くの滝に案内

したのです、


青年が滝の裏の洞窟を見つけ中に入ろうと言うので、そこは昔から人は入ってはいけない事になって

いるのと断ったのですが、それならここで待っててと言い中に入ろうとしたので仕方なく一緒に入る

事にしたのです、


もちろん、よしのも中に入るのは初めてでした、青年は冒険が好きなのか、カバンの中から懐中電灯

を取り出し、よしのの手をひいて中には入っていきました、そしてあの剣の刺さっている場所に出た

のです、


よしのは場所に着いたとき、声が聞え、めまいがして倒れてしまったのまです、気がつくと滝の入り口

で青年が顔を覗き込み大丈夫と声をかけていました、よしのは青年に抱きつき、唇をあわせてしてしまい

、その後は覚えていません、われに返ると恥ずかしい格好で草の上に寝転んでいました、あわてて下着を

つけ、だまっていると、青年は、よしの、を抱きしめたのです。


よしのはもう巫女には戻どれません、この村にも居る事は出来ないのです、しかし何か心が開放された

気分がして心地よい自分に戸惑いを隠せませんでした、そしてその青年と一緒に東京に行く決心をした

のです、しかし幸せは長く続かないのです、


この時は、禁を犯した者に忍び寄る不幸を二人知るよしもありません。













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