陽炎の森78 それでは出立しましょう、これから会津に向かいます、大体25里ですから2日半かかります、会津の近くに一泊止まることになりますが、都合よく旅籠があれば良いです


陽炎の森78


それでは出立しましょう、これから会津に向かいます、大体25里ですから2日半かかります、会津の近くに一泊止まることになりますが、都合よく旅籠があれば良いですが、ない場合は、

お寺に泊めてもらうかもしれませんといい、旅籠を出て会津にむかったのです、


もう少しで会津領内という峠に差し掛かった時、一人の侍が4人の侍と切りあっていたのです、真一朗と伊織が間に入り街道での切りあい、迷惑で御座るというと邪魔をするかと切りかかって、

来たので、伊織が胴を峰ではらい、もう一人の手を打つと刀を落としたのです、かなわないと思ったのか、ひけ~と一人の男がいい、全員峠の向こうに逃げさつたのです、


若侍を見ると足に切り傷をおっています、真一朗が止血しさらしで巻いたのです、竹を切り担架を作りそれに乗せたのです、男は立ち上がろうとしますが立ち上がれません、ここでぐずぐず、

しているわけには参らぬというと気を失ってしまったのです、担いで峠を越すと、下の方にお寺がみえます、門を潜ると住職が出てきたので訳をはなすと、こちらへと本堂の一角の部屋へ、

案内したのです、


若侍の顔を見るなり、敬四郎殿ではないですかというので、ご存知の方ですかと聞くと、会津藩の馬周りの方ですと答えたのです、医者はいないかと聞くとあいにくこの村にはいません、

5里先の城下に行けばいますがといったのです、とてもそこまで運べません、う~ん、う~んとうなっているので、住職が頭に手をやると、凄い熱だ、傷口からばい菌が入ったのでしょう、

とさらしを取り、酒を吹きかけたのです、


これで傷口は化膿せずに済みますが、今薬を持ってきますと奥に行き湯のみを持ってきて、頭を押さえてくださいと、敬四郎の鼻をつまみ、のどに流し込んだのです、谷川の水を持ってきて、

これで冷やしてくだされ、明日の朝には熱はさがるでしょう、次ぎの間もあります、今日はここにお泊りなされ、なにもありませんが酒くらいありますよと笑ったのです、


何か会津藩にあるのですかと聞くと、跡目争いで主席家老様と次席家老様が側室の子二人のどちらを跡目にするか争っているらしいのです、敬四郎殿はどちらなのでしょうと聞くと、

主席家老の縁者ですから、主席家老派でしょうと話したのです、お家騒動とはまいったなあ、我々の役目ではないしと真一朗がいうと、ともかく敬四郎殿が目を覚ましたら事のなりいきを、

聞いてみましょうと清之進がいったのです、


夕餉が出来たと小坊主が呼びにきたので、本堂に行くとお膳に精進料理が並んでいます、住職がお経をよみ、終わると頂きましょうと、清之清に酌をし、申し訳ないが手酌でお願いすると、

いったのです、そちらの二人は若武者の格好をなさつているが、女子で御座ろう、何処まで行きなさるというので、清之進がお泊いただきかたじのうござる、実は我々は諸国巡察方なのです、

と将軍家の紋の入った脇差を、みせると、


これは失礼申しましたと頭を下げるので、頭をお上げくだされ、我々は隠密では御座らぬ、領民の為街中の掃除をしているのですというと、お聞きしております、公方様じきじきのお役目、

ごくろうにございます、寺で酒を出すなどけしからんで御座るなというので、なんの、僧侶が酒をのんではいけぬというきまりはありませぬと笑ったのです、おいしい山菜料理に豆腐料理、

です、なかなかおいしゅうございますと真一朗が言うと、


これでイワナの塩焼きでもあれば最高ですが、そこまではといい、谷川には沢山イワナがいますので、捕まえて塩焼きにして、食されるのは一向にかまいませんよと住職が言ったのです、

イワナは夜は動きません、石の下に隠れていますので、手でもすぐ捕まえられます、托鉢に行った帰り道には小坊主と時々捕まえ食するのです、生臭坊主で御座ると笑ったのです、


小坊主が来て、和尚様、敬四郎様の熱は大分下がりましたといったので、くすりが効いたのであろう、これでもう安心だといい、しかし今回のお家騒動でけが人がたくさんでる事でしょう、

折角、家康公が平穏な国にされたのに、人はなぜ争いをこう度々起こすのでしょうと瞑目したのです、目を開け真一朗の顔相をみて、はて真一朗殿は不思議な相をして御座る、そうだ、

お釈迦様の相と同じでござるよ、


もしかして左の手は右に一直線の筋があるのではと左手をみて、やはりそうでござるというので、清之進がお釈迦様の相が残っているのですかというと、ええ、お釈迦様の顔を寸部も、

違わず映した木造が都にありまして見た事があるのです、この相は人助けの為にこの世に生まれたのだと漢人和尚が言われたそうですといったのです、真一朗はこの時代の者ではない、

といわれるのではないかとヒヤヒヤしていたのですが、胸をなでおろしたのです、


私は見た事はないのですが、クモの糸という話がさる密教の経典に書いてあるそうですが、真一朗殿はご存知かと聞くので聞いた事がありますと答えると、ほうお教えくだされというので、

悪いことばかりする悪人がいたそうです、死んだ後は絶対地獄に行くだろうと皆がいっていたのです、ある日その男が道を歩いていると足の前にクモがいたのです、足をあげ踏み潰そう、

としましたが、クモを殺してもつまらないとよけて、殺さなかったのです、


やがて男は地獄に落ちたのです、血の池地獄、針山地獄と毎日責苦をうけ苦しんでいたのです、熱湯の血の池時刻からはいでようとすると、赤鬼に蹴飛ばされ池に落とされるのです、

あまりの苦しみで死んでもいいと底にしずむと、引き上げられ、針山地獄に連れて行かれ、針の山を登るように青鬼から攻めたれられ体中に針がささり、やっと登りきると、おい落され、

るのです、


ある時血の池地獄でもがいていると目の前にクモの糸が天国から降りてきたのです、細い糸ですが、わらおも掴むつもりでぶら下がると切れません、必死になり天国へ登っていったのです、

お釈迦様が現世でクモを殺さずいい行いをしたので、クモの糸をたらしたのです、必死に登りあと一歩で天国に手が届くというときに下をみると、なんとその細い糸に地獄の亡者が沢山、

ぶら下がっているでは有りませんか、


ばかやろう、糸が切れるだろうと叫び、自分の下にいた亡者を力一杯けとばすと、悪人の手の上から糸がぷつりと切れ、地獄にまっさかさまに落ちていったという話しです、お釈迦様は、

どんな悪い奴にも善人になる機会くくれるのだと思うか、悪人はどこまで行っても悪人だと思うかは自分次第だという事でしょうか、また、お釈迦様と閻魔大王は、自分の心の中にいて、


いい事をしている時はお釈迦様が出て来て、悪い事をしている時は閻魔大王が出てくるのですかねというと、住職がまさにそのとおりです、今はここにいる皆がお釈迦様というわけです、

よと、にこにこ笑ったのです、伊織が、元から悪人は一人もいないという事ですかと感慨深く天井を見上げたのです、

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