陽炎の森79 次ぎの朝敬四郎は熱も下がり、起き上がる事が出来るようになったのです、かたじけのう御座ると礼をいい、私は行かねばならないと起きあがったのです、まだ歩くのは
陽炎の森79
次ぎの朝敬四郎は熱も下がり、起き上がる事が出来るようになったのです、かたじけのう御座ると礼をいい、私は行かねばならないと起きあがったのです、まだ歩くのは無理ですよ、私達が、
代わりに貴方の用事をやってもいいのだがというと、いやお家の事情を話すわけには参らぬというので、我々は公方様じきじきの諸国巡察方だ、お家騒動はご法度だぞ、話してくだされば、
お力になりもうす、
もし話されぬのなら、お家騒動として上様に言上いたしますぞ、どちらの言い分が正しいかはどうでもいい事なのだ、この話を聴けばさぞかし老中どもが喜ぶ事であろう、老中は少しの、
落ち度で改易しょうと、てぐすねを引いて待っているので御座る、われわれは隠密ではござらぬ、大名を改易するのは役目ではござらぬといい、これが上様、じきじきの朱印状、
だと見せると平伏し、知らぬこととはいえ申し訳ございません、
幕府のきまりでは長男が後をつぐきまりで御座いますが、お雪の方のお子、勝行様が18才、お結の方様のお子、勝道様が17才で御座います、勝行様は病弱の為、次席家老が勝道様を跡目に、
するべきだと病気の殿に迫っているのです、殿の衰弱が激しいので、密かに飲まれた薬の残りを調べたところ砒素が混入されている恐れがあり、江戸へ持って言って蘭学者に調べて、
もらう為国元を出立したのです、
峠まで来ると次席家老一派の4人が切りかかって来たのです、国元の医者は次席家老の息がかかっている可能性がある為、国元では調べられないのですと、刀の柄をはずし、油紙に包んだ、
緑色の粉を見せたのです、伊織に谷川に行きイワナを生きたまま捕まえて来てくれるように頼むと、住職が小坊主にお前も一緒にいって捕まえてきなさいというと、ハイと返事をし寺を、
出ていったのです、
その粉を少しなめるとすっぱい味がします、間違いなくこれは砒素です、随分の料ですといったのです、どうして分かるのですかと聞くので、私は蘭学者ですと答えたのです、暫くして、
イワナを捕まえて来たので入れてある桶に緑色の粉を半分入れるとイワナは激しく泳ぎまわりピクピクと痙攣し腹を上にして動きが止まったのです、
普通毒殺する場合はこんなにいれず、すこしずついれるのだが、これだけの量を入れるとすれば、次席家老は焦っているとみえる、何か理由があるのですか、殿が病弱とも長男が後を、
つぐ事になっていると、取り上げにならないので業をにやしたのかも知れません、勝行様の病弱もひょっとしたら少しずつ砒素をもっている可能性があります、殿と勝行様を亡き者にして、
一気に事を運ぶつもりなのでしょうと言ったのです、
医者がからんでいれば我々が巡察してもおかしくありません、出入りの医者は何人いるのですかと聞くと、3人で奥のかかりは島田玄白殿一人で、城下で開業していますと答えたのです、
分かりました、江戸までいかずともいいですよ、われわれにお任せあれ、敬四郎殿はしばらくここに身を隠しておきなさい、小頭、配下の何人かで警護たのみますというと、どこからか、
承知と声が聞こえたのです、
住職が敬四郎殿よかったですね、この真一朗殿はお釈迦様の使いですよ、決して人の道に外れたお裁きはされませぬ、ここでゆっくり、養生なされというと、かたじけないと頭を下げた、
のです、主席家老には私から無事である事を伝えておきますといったのです、
寺をでて城下に向かい、昼頃には城下に着き若松屋という旅籠にわらじを脱いだのです、女将が出て来てお早いお着きですねといったので、一服したら出かけるというと、わかりました、
お帰りになる頃にはお湯もわいています、ごゆっくりと言うと部屋を出て行ったのです、窓の外を見ると編み笠をかぶった武士が二軒となりの角で様子を伺っています、後で脅かして、
やりましょうとお茶を飲んだのです、
暫くすると、一別以来でしたと若侍が入ってきたのです、みるとゆうです、どうしたのですか、公方様の御用で今回は巡察には行けぬと小頭がいうていましたがと清之清が聞くと、
そうなのです、今回の島原騒乱は公方様に入る情報が遅れた為に後手、後手になり騒乱が大きくなったとお考えなのです、そこでお庭番という、諸国の情報を集める上様直下の役目、
をお作りなされたのです、
その頭を宗冬殿に仰せ付けられたのです、甲賀組、伊賀組あわせて300人が選ばれ全国の情報収集に当たる事になったのですと話すので、すでに隠密がいるのではと聞くと、それは、
あくまでも老中の配下であり、それを無くすと、老中に情報が入らなくなります、それぞれに調べた情報から間違いない政治をしょうというわけです、
情報を仕入れるのにはくの一も必要です、そこで私がくの一の頭となり束ねる事になったのです、その頭がなぜ会津にと聞くと、ただのお家騒動ではなく、鉄砲の製造、密売がからんで、
いるのです、昔からこの地方は刀鍛冶が多く、会津小鉄と言う名刀もあり、鉄砲を作ることなど容易いなのです、大名の石高で鉄砲の数が決められていますが、これを放置すれば、これが、
騒乱の火種となるわけで、
どうも松前藩にもそうとう流れているみたいで、アイヌに手を焼いているので、不正に鉄砲を集めているとおもわれ、その他にも薩摩藩、これは琉球を押さえつける為でしょう、
困った事に徳川の親藩である尾張藩にも流れているみたいなのです、何をするのかは分かりませんが、そういう事で自ら探索に来たというわけです、小頭とは先程繋ぎをとりました、
殿様毒殺の件も含めて探索しています、
それでは後程というので、何者かが表で見張っていますよというと、あれは私の手のものです、くの一ですよと笑って出ていったのです、それでは一服したらいつもの通り巡察にでかけ、
ましょう、メイはなるべく次席家老の席を探り探索しておくれ、必ずどこかのお茶屋か料理屋にいるはずです、鉄砲となると鍛冶屋の元締めあたりが一緒のはずですというので、メイが、
承知しましたと、連れ立つて旅籠を出たのです、
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