陽炎の森74 一服して旅籠を出て巡察に出かけたのです、途中でメイがそれでは私はいつもの通り芸者に化けてお座敷に出て探索して来ますと、置屋の前で別れ街中の居酒屋に入って
陽炎の森74
一服して旅籠を出て巡察に出かけたのです、途中でメイがそれでは私はいつもの通り芸者に化けてお座敷に出て探索して来ますと、置屋の前で別れ街中の居酒屋に入って酒と肴を注文した、
のです、娘が酒を持って来たので、なかなか上手い酒だなあ、街中もごろつきもいなくいい城下町だねというと、そうでもないんですよ、最近は味噌、醤油の値段が上がり商売上がったり、
だとおとっさんがぼやいていますというので、
どうしてだと聞くと、この城下町には10件の問屋があって、そこの元締めをやってなさった、清田屋の主人が先の大水の時に川に流されてお亡くなりになり、須田屋の主人が元締めになった、
とたん値上げをしたんですよ、お上によると緒物価高騰のおりだからとお許しがでたそうです、きっと須田屋が賂を役人へ送ってみとめてもらったとの噂なんですが、私達は我慢するしか、
ないのですといったのです、
店の主人がこれこれ、お道、余計な事をいってはいけませんよ、お侍さん聞き流してくださいと頭を下げたのです、なるほど清田屋の主人は人望ある人で値上げに反対していたのだろう、
それをこころよく思っていなかった、須田屋が大水に流されたように見せかけて殺したのかもしれない、多分役人とつるんでいるのだろうと思ったのです、店を出て町はずれに来たとき、
神社の境内から刀を会わせる音がしたので階段を登ると、
二人の男が切りあっていたのです、片方は山根です、もう一人の浪人が刀を右左に小さく振ると、山根がぐらつき浪人が踏み込もうとした時、真一朗がそばにあった石をその男に投げつけ、
ると、かろうじてかわし、邪魔をするなと切りかかってきたので右によけると、そのまま走り去ったのです、
かたじけのうござる、危ないところで御座った、急にめまいがして油断してしまいましたというので、あの浪人者はというと、いや知らない奴です、ずっと後を付けているのでこの神社、
に誘い込んだのでござるが、返り討ちにあうところでした、どうしてめまいがしたか分かりませんといったのです、
あの浪人はどっち周りで間合いを詰めて切りかかって来ましたかと聞くと、いや真っ直ぐじりじり近寄ってきたのです、みた事の無い間合いの詰め方で不思議な流儀だなと思ったのです、
そして切りあったのです、離れた場合どちらに離れたのですかと聞くと、元の場所ですと答えたのです、それからどうしましたと聞くと、刀を一尺ばかり何回も右左に振ったのです、
その内クラッときてめまいがしたのですと答えたのです、
それがしが浪人のいた場所へ立ちます、山根殿は自分の立っていた場所へ行ってください、ここでいいですかというと、そうです、そこに立つていましたというので、分かりました、
と真っ直ぐ山根の場所へ行き通り過ぎて後ろにある小さな木の葉っぱを見ると、なにか白い物が薄く葉っぱについています、一番ついている葉っぱをちぎり二つに折りたたんで紙に、
包んだのです、
さあ帰りましょうと声をかけ一緒に旅籠へ向かったのです、何をしていたのですかと聞くので、はっきりは分かりませんが旅籠に帰って調べてみましょうと答えたのです、旅籠に帰る、
と清之進は帰ってきていました、庭に小さな池がありフナが泳いでいます、いけに入りフナをすくうのですがなかなか捕まりません、そこへ女将が来てなにをしているのですかと聞く、
のでフナを捕まえたいのだがというと、
待ってくださいと小さな網をもって来たので、すくって一匹のフナをつかまえ風呂桶にいれたのです、皆が唖然としています、伊織がフナをどうするのですかと聞くので、袖から先程、
紙につつんだ葉っぱを取り出し入れると、暫くしてフナがひっくり返ったのです、やつぱり眠り薬の粉だといい、訳を説明したのです、
先程のは浪人は眠り薬を袋にいれ刀を握る場所に持っていたのです、粉を石臼で細かくすりつぶせは風にまう程になります、普段持ち歩くときは袋を油紙で包み密閉しているのでしょう、
戦う時に油紙を取り、押しながら刀を左右に振れば粉が空気中に舞うわけです、したがって必ず風上に立ち、普通は右か左周りで間合いを詰めるのですが、風上にいる必要がある為、
動かなかったのです、
風が少し吹いているときしかこの手はつかえません、今日は絶好の風だったので、山根殿をつけ、様子を伺っていたのですよと説明すると、なるほど、それを吸ってクラッときたのですね、
そうです、眠らせる必要はないわけです、少しのめまいをさせるだけでいいのですとはなし、立ち会った時剣の腕はどう見ましたかと聞くと、さほどでもないと思ったのです、
なる程吉川殿もこの手でやられたのでしょう、でなければ念流の達人がさほどの腕しかもたない浪人に闇討ちされる訳ありませんといい、居酒屋で聞いた事を清之進に話し、ひょっと、
すると清田屋は須田屋の手のものに殺されたのかもしれませんというと、もしそうなら、許すことはできません、大掃除しましょうといったのです、
小頭が帰って来て特にお家騒動の様子はありません、須田屋と繋がっているのは町奉行市川です、その差配方は家老の飯岡主膳だそうです、須田屋が多くの賂を送っているのでしょう、
須田屋は2年前に家人10人を引き連れてここに来たそうです、江戸から来たといっているそうですが本当か分かりません、奉行のとりなしで問屋では大手にあっと言う間になったそうです、
殺された吉川殿と清田屋は姻戚関係があるそうで、なんでも清田屋のご内儀は吉川殿の姉だそうです、姉が清田屋に嫁いだので、江戸での剣術修行が出来、剣客となりこの藩の指南役に、
取立てられたそうですと話たのです、そうだとすると、吉川殿が清田屋の死因に疑問を持ち調べているので、発覚を恐れた須田屋があの男を使って殺したのかも知れない、
あの男が清田屋も殺したなら剣を使いそうだが、川に落とす殺しかたをするだろうか、そんな事をするのは大体やくざ者だが、そういえばどこの町にもいる、ヤクザもんがいないのは不思議、
ですね、よっぽど怖い十手持ちでもいるのですかねと清之進にはなすと、小頭が須田屋のみのこなし、家人の油断のない目つきはどうみても普通の町人ではないように思うのですがという、
ので、それなら多分江戸か関東近隣のやくざだったのかもしれない、名の売れてるやくざなのでその道のものは近づかないのかもと言ったのです、
今メイ殿が須田屋の座敷に出ていますが、役人はいませんでした、これから須田屋に忍び込み、賂の書付がないかしらべます、メイ殿はそれがしの配下が警護していますから大丈夫ですと、
部屋を出ていったのです、女将が来て表に尚様という武家の娘さんが山根様を尋ねてきていらしゃていますがというので、こちらに通してくださいと頼んだのです、清之進があら尚と同じ、
名前ですねというと、尚がなんかややこしいですと笑ったのです、
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