陽炎の森73 桔梗屋に皆で行くと、女将が平伏するのでお手をあげなされと声をかけると座敷に案内したのです、風呂敷つつみを渡し、ここに450両はいています、これはお上からそ
陽炎の森73
桔梗屋に皆で行くと、女将が平伏するのでお手をあげなされと声をかけると座敷に案内したのです、風呂敷つつみを渡し、ここに450両はいています、これはお上からそなたに使わされます、
律儀な商売で儲けも少ないのに皆の面倒をするのも大変でありましょう、困った時はその金をお使いなされと話すと、もったいない思し召しです、おまえさんどうしましょうと仁蔵に聞くと、
折角のお上の思し召しだ受け取りなさいというので、
それではお預かりします、何かの時には使わせていただきます、ご心配なさらずとも、大店の旦那やお武家様からは沢山頂いており、町衆は凄く安くて楽しめるようにしているのです、
と女将が答えたのです、仁蔵親分が村上様のなされようはただただ驚いております、十手持ちなんてやっているとついつい悪人を痛めつけ、もつと悪人にしてしまうものだと思いました、
善人にかえる事こそが十手持ちの本当の仕事だと教えられましたといったのです、
笑美姫が真一朗どのは特別なのですよ、普通の御仁ではああは上手くいきません、武士らしくない武士と言う訳です、又八はいるかというと前に出よといい前に座らせ、言い忘れていたが、
盆の上がりは3割りにせよ、札を変える時は元に変えた札より多ければ儲かっているので、儲かった金の3割り、はねて換金するのだ、損した者から取ってはいけない、そうすれば確実に寺銭が、
とれるであろう、毎日の上がりの1割りを女将に渡すのだ、
女将それでなるべく多くの困った人をお助けくだされ、施しばかりだとくせになりますので、働く場所を世話する事が肝要です、その支度金です、但し半年以上同じ場所で働いた場合のみ、
支度金を渡してください、そうすれば我慢して働くでしょうというと、よろず相談所と言う訳ですね、これに使えば不浄な金も生まれ変わるということですね、村上様はほんに策士でござり、
ますなあと女将が感心していたのです、
それではそろそろ行きましょうと別れをおしみながら桔梗屋を出て北へ向かったのです、清之進がそれではまず白河をめざしましょう、2日の道のりですよ、真一朗殿船はありませんよ、
大丈夫ですかというので、歩くのにすっかりなれましたよと答えたのですが、5里もたつと疲れてしまつたのです、宿場に着き昼飯のおにぎりを食べお茶を飲んでいると、メイが疲れた、
のでしょう馬がいるか聞いてみますと、店の老婆に聞くと、
この人数だと3頭いるべえといい、娘に孫作にお客さんがいるから呼んできておくれと言ったのです、清之進が笑って、ほうらまだなれていないではないですか、そんなに体力ないのに、
どうして剣が強いか不思議ですね、伊織殿を見なさい全然疲れたふうには見えませんよと笑ったのです、いや~、舜発力は強いのですが持続力は弱いのですと言いかえすと、伊織が実は、
私も疲れているので馬がいると嬉しいですと助け船をだしたのです、
歩いたり馬に乗ったりして2日目の夕刻前に白河に着いたのです、この時代、白河藩は本多忠義12万石の城下町である、ここはその昔白河の関が置かれ奥羽の押さえ口で重要な拠点だった、
のです、白木屋という旅籠に宿をとったのです、女将がお湯がわいていますというので、伊織と風呂に行き汗をながしていると、一人の武士が先に入っており、失礼すると湯船にはいると、
黙っています、
殺気を感じて、その武士をみると柄杓を伊織めがけて投げつけたのです、危ないと声を出すと、伊織がガシッと受け取り投げ返したのです、武士は辛うじて身をかわすと、伊織が山根、
なにをするんだというと、ははは、悪い、悪い、腕が上達したか試したのだよといい、失礼つかまった、山根新八に御座ると挨拶したので、顔見知りで御座るかと聞くとこやつは江戸、
の念流、山根道場の息子ですよ、
こんなところで何をしているのだと、伊織が聞くと実は本多公に呼ばれて剣術の指南に来ているのだというので、白河藩には剣術指南役はいないのか聞くと、先月に何者かに闇討ちされた、
との事で指南役の候補として来ているのだと答え、おぬしこそ小笠原家に仕官したと聞いたがここで何をしているのだと聞くので、言っていいか迷っていると、真一朗が構いませんよ、
というので、諸国巡察の旅をしているというと、
それでは貴方が村上真一朗殿ですか、ご高名はかねがね承っています、お役目ご苦労にござるというので、我々は隠密ではありませぬ、ただの掃除人ですというと、心得ています、他言、
はいたしませんといったのです、指南役候補ならどこかの屋敷に逗留しているのだろうというと、実はここの女中が殺された指南役のめかけだったのです、指南役の吉川仁斎殿の娘子、
に頼まれて闇討ちした相手を探しているのです、
めかけが何か知っているのではないかとここに宿をとったのです、吉川殿には男の後取りがないのです、その他の心当たりはと聞くと家中以外の人間なので、サツパリ情報がつかめない、
のですと山根が話したのです、どこの藩でも派閥はあるものです、なにかお家に事情があるのでしょう、そのいさかいに巻き込まれたのかも知れませんねと真一朗がいうと、それなら、
娘の尚殿が話してくれそうな者ですがというので、
しかしその尚殿が家中の者でもない山根どのになぜ頼んだんですかと聞くと、吉川殿と父山根玄心斎は江戸の武田道場の同門なので、尚殿は見知っていおり、尚殿の屋敷に逗留、
しているのですと答えたのです、私達は何のお役にも立てないのですがというと、なんのこれは拙者の問題でごさる、余計な事を喋りもうしたお忘れくだされと、湯船を出ていった、
のです、
伊織に後で小頭にお家の事情を調べてもらいましょうというと、いいのですかというので、こうゆう場合は武家だけではなく必ず商人がかかわっているものです、これも巡察の一つですよ、
と話すと、同門のよしみでござる、宜しくねがいますというと、もうすでに山根殿が探っている事を誰かが気ずいて狙うかも知れません、後で十分用心するように伝えてくださいといった、
のです、
風呂から上がると、清之新達も風呂から上がってくつろいでいたのです、メイが随分長い風呂だ事ふやけてしまいますよと笑うので、先ほどの山根の事を話すと、小頭が部屋に入って来て、
その辺の事情を手分して探ってみますというので、清之進が夕餉が終わってからでいいですよと声をかけると、承知しましたと部屋を出ていったのです、
女将が夕餉の支度ができましたといい、女中が膳を並べると鍋である、さくら鍋ですかと聞くと、そうですと答えるので四足の肉を食べてもいいのと聞くと、牛ではありませんよ、イノシシ、
は食べてもいい事になっていますと笑っていたのです、そういえば赤犬を食べるという事が何かに書いてあった、牛だけダメなんだと思ったのです、
清之進がわたしも食べたことがありますよ、渡良瀬の森に朝駆けした時、近隣の百姓が出してくれた事があります、鳥とちがってコリコリして美味しいですよといい、真一朗殿は食べた、
事はないのですかと聞くので、いえありますと答えると、さくら鍋と言葉を知っているのだから、食べてた事があるに決まっていますね、さあ頂きましょうと皆で箸をつけたのです、
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