陽炎の森72 翌日代官所に行くと代官が出迎え、悪人共はおとなしくしているのですかと聞くと、神妙にしておりますというので、それではその者達を善人に変えましょうというと、


陽炎の森72


翌日代官所に行くと代官が出迎え、悪人共はおとなしくしているのですかと聞くと、神妙にしておりますというので、それではその者達を善人に変えましょうというと、そんなに簡単に善人、

になるでしょうかというので、やつてみましょう、まず顕生から没収した金子はいかほどですかと聞くと、寺を探索しましたところ1500両も出てきたのでござる、


これだけの賂を受け取れば磔つけ獄門でござるというので、その内の500両は顕生にお返しくだされというと、なんと金をやって放免するのでござるかとビックリしているので、善人に生まれ、

かわる支度金でござる、僧侶をめざした頃は善人だったのでしょう、偉くなり我を忘れてしまったのです、白州に呼んでくだされと頼み、白州に座らせ、恐れ入ったかと聞くと、申し訳御座、

いませぬ、ここにいたればどんな厳罰をもおうけします、お釈迦様が罰を与えられたと深く反省しておりますと答えたのです、


偉くなると目指すものがなくなり、よからぬ事を考えるものだ、もう一度僧侶になろうと思ったときに立ちかえり、人を救うてはみぬかというと、このように欲に汚れた私に出来るはずが、

御座いませんというので、これから弟子を連れ長崎に赴き蘭方医を学び医者として人を救うのだ、この国には医者にかかりたくともかかれない者がたくさんいるはずだ、全国を巡業し人、

を助けるのだ、


その為にはそなたの弟子達も必要なのだ、僧侶としての修行をしてきた、そなた達だ3年もすれば立派な医師になれるだろう、薬草もしつかり学べば、野や山には沢山あるので、金もあまり、

かからないだろう、3人の暮らしが立つ少しの治療代を貰えばいいのだ、そして人から感謝される喜びを知るのだというと、もし許されるならおおせの通りにいたします、というので、

では起請文を書き爪印を押すのだといい、爪印を押すと、長崎までの路銀だと20両渡したのです、


もし金が足りなくなったら日光の両替商に480両預けておくので、為替で入用な分受け取るのだというと、このような者に施しをくださりありがとう御座います、必ずや村上様の意にそう、

ようにいたします、そうそうに出立し杉戸宿の便利屋徳之助を訪ねよ、文をしたためてあるのと顕生に渡し、もし約束をたがえたときはその首打ち落とすぞといい送りだしたのです、


次ぎは与力の稲垣ですなというと、腹を切らせてくれと言っていますが、幕府のお沙汰があるまではならんと言ってあります、今日江戸に知らせるつもりですというので、それは必要、

ありません、巡察の仕置きはまかされています、公方様、老中も承知の事ですといい、稲垣を白州によびだすと、平伏しぜひとも腹を切らせてくだされというので、なにをいうか、

公儀の役人にあるまじき行為許される事ではない、


腹を切ればそなたが楽になるだけだ、今後は苦しみに耐えて生きていくのだといい、与力から同心に格下げになるが耐えられるかと聞くと、それでお許しいただけるのですかというので、

ただしいままで貰った賂はすべてお上に差し出すのだ、そなたにも家族があろう、家族を泣かせてはならぬといったのです、また今後はおごり高かぶらず領民を助けるのだ、植林、伐採、

は国の大事な産業だぞ、


格下げになったそなたを笑う者もいよう、認めてもらうには何年もかかるだろうが辛抱せよ、また与力に戻れる日もあろうといい、代官どのいかがで御座ろうかというと、宜しゅう、

ござる、稲垣このご恩をわすれず、精進するのだぞと代官がいうと、これからは野や山を駆け巡り、民と一緒に林業に励みますと頭を下げたのです、


代官が格別のお計らいいたみいりますと頭を下げるので、これで代官殿にも類はおよびますまいと言ったのです、次ぎは杉戸屋ですな呼んでくだされといい、白州に座ると、そなたの、

賂で何人の人間を不幸にしたか分かっているのかと尋ねると、申し訳ございませんとただ恐れ入るので、悪さはいつか発覚するのだ肝に銘じておけ、あれだけの賂を渡せば家財没収の上、

磔つけ獄門は免れまいというと、


覚悟はいたしておりますといったのです、しかしそなたを家財没収の上、磔つけにすれば、杉戸屋はつぶれ、それに携わっていた何人もの人が糧を失う事になる、それだけの重さがある、

のになぜ今回のようなまねをしたのだと聞くと、恐れ入りますとただ恐縮しているので、木を切り江戸に運べば費用もかかり、もっと儲けようとしたのであろう、タダで木が手に入れば、

それは儲かるであろうと笑うと、


おそれいります、木を切っただけでは家は立ちません、家の材料にするには切って3年はかかり、非常に手間がかかるのですというので、木だけに頼っているからいけないのだ、

粘土に藁を混ぜ捏ね、四角にして釜で焼けば四角い石が出来る、これで建物をつくれば燃えにくく長持ちする、長崎にいけば見られるぞというと、この国は木の文化です、そのよう、

なものが受け入れられるでしょうかと聞くので、


人の住む家は木でつくり、蔵はこれで作り、建物の間にはこれで壁をつくれば、延焼が防げるではないか、そなたが実践してみせればよいではないかというと、罪人の身ではそれも、

かないませんというので、ただの木で儲かったのはいかほどだというと約1万両でございますというので、5000両はお上に返し、後の5000両はこれを普及させるのに使うのだというと、


お許し願えるのでしょうかと聞くので、今回は特別にゆるしてつかわす、ここに今後不正はしないとの起請文を書き、爪印を押すのだといい杉戸屋が押すと、約束をたがえるとその首、

はないと思えというと、今後は不正はせず、皆の模範となるように心がけますというので、遊びはしてもよいぞ、息抜きして遊ぶ人がいないと、この町の水商売は上がったりになるでな、

と笑い、放免したのです、


最後は又八一党ですな、呼んでくだれというと、又八一党が白州に座ったので、イカサマ博打で金を巻き上げるとは勘弁ならんと立ちあがり、そこに直れと刀を抜き上段に構え、

一気に振り下ろし、誰もが首が飛んだと思い目を瞑ったのです、目を開けると真一朗の刀は首すじでピタッととまっており、又八は死んだと思い目を開けると首はついています、

又八そなたは今死んだのだこれからは心を入れ替え、イカサマ博打はいかんぞというと、


こんりんざい、博打はしませんというので、誰も博打をやめろとは言っていない、これからも続けるのだ、皆の楽しみを全て奪えばもっと悪い遊びをする者が増えるので、堵場は、

必要なのだ、没収した金子から200両は返してやる、これで続けよ、但し普通の百姓、町人は一日500文、旦那や武士は10両までしか賭けられないようにして、負けても金を貸し、

てはならない事にし、イカサマはまかりならんといい、


このお目付け役は仁蔵親分に頼みますというと、代官から話しが通っているらしく、お引き受けいたします、悪さをしないようよく見張りますと仁蔵が承知したのです、清水殿、仁蔵親分、

たまには博打をおやりなされ、やり方を知らなければ目付けは出来ませんよと笑うと、分かりましたと二人が頭を下げたのです、


これで全て終わりました、風通しが良くなって良かったでござるというと、今後は下々の営みに配慮いたしますと代官一同が頭を下げたのです、さあもう一仕事のこっています、仁蔵親分、

桔梗屋に案内してくだされと声をかけ、代官にそれではと別れの挨拶をし桔梗屋に向かったのです、






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