陽炎の森70 夕餉を済ませ一服したので、旅籠を出て掃除に向かったのです、メイは置屋に行き座敷に出さしてくれるよう女将に頼み、踊りを披露すると何処から来たか聞くので、江


陽炎の森70


夕餉を済ませ一服したので、旅籠を出て掃除に向かったのです、メイは置屋に行き座敷に出さしてくれるよう女将に頼み、踊りを披露すると何処から来たか聞くので、江戸からの流れ芸者、

ですよと言うと、やはり江戸の芸者は踊りも上手いわ、どうだねここに居ついては、あんたならいい身請けばなしもでるよというので、様子をみて考えますと答えると、


それでは今日は材木問屋の杉戸屋のお座敷に出ておくれ、江戸へ材木を出し大商いをしている旦那だよ、代官所の役人も一緒の席なので失礼のないようにといい、黒小袖とカッラを用意、

しそれに着替えてお座敷に出るように言ったのです、茶屋の席に出て一さし舞うと杉戸屋がこれは見事だ、さあここに来て酌をしておくれと席に呼んだので横に座り名前を聞くので、

白菊ですと答えると、これからはひいきにするよというので、宜しくお願いしますと頭を下げたのです、


こちらの方は代官所、林野方の稲垣様で、そちらが輪水寺のご住職、顕生様だよ、酌をしておくれというので、酌をしたのです、先程居酒屋で顕生とは会っているので、ひやひや、していた、

のですが、気がついていないようです、宴もたけなわになり、杉戸屋が、稲垣様、例の輪水寺の杉の切り出しは大丈夫でございますかというと、まかせておけここにおられる顕生殿と話、

しはついておる、


そうで御座るな顕生殿というと、承知しておる、本来なら幕府の寺社奉行の許しが必要だが、間引きして切り出せば分からない、ここにおられる、稲垣殿が目をつむってくださればぞうさ、

ない事だよと答えたのです、先ごろ江戸で大火があり杉の値段が高騰しているので今が儲け時ですよと杉戸屋がいったのです、メイがちょっとお手水にと席を立ち、縁側の下にいる小頭に、

この話しをしたのです、


承知したと答え、小頭は杉戸屋に向かい、天井裏から主人の部屋に忍び込み手文庫を調べ、稲垣と顕生への賂の書付を懐にいれると、再びメイのいる茶屋へ戻ったのです、

杉戸屋が今日居酒屋の佳代にちょっかいをだして、居合わせた浪人ものにていもなくひねられたそうではないか、住職の用心棒はどうしていたのですかと聞くと、それが若い女を連れで、


何処かに仕官しょうと旅をしているのだろう、めっぽう腕の立つやつで用心棒も太刀打ち出来なかったのだよ、女ずれであり公儀の隠密とは思えないので心配無用だと顕生がいうと、

素人女に手を出すのはたいがいにしておきなされ、そのうち火傷しますぞと杉戸屋がいったのです、この会話をきいてメイはそこにいたのは私ですよ、今に火傷するよと思い、ニヤニヤ、

笑うと、


これこれ人の不幸を笑っていけませんよと杉戸屋がたしなめたのです、そのころ笑美姫と尚は仁蔵の家に向かっていたのです、露天に出ていたそばやに仁蔵の家を聞くと桔梗とゆうお茶屋、

のとなりだというので、改めて評判を聞くと、いい親分さんですよ、代官所のお役人が無体な事をすると、間に入って助けてくれるのですよ、小太刀の名人で代官所の役人も一目おいて、

いるのですと、先程聞いた話とはまったく違います、


評判が悪いと聞いたがというと、悪い事やっている奴はこっぴどくやられているので、その連中の評判はよくないはずです、その連中が讒言しているのですよ、その中には役人と、

つるんでいる奴もいます、仁蔵の親分の上役は与力の清水様でとても人望のあるお方ですといったのです、しかし仁蔵は輪水寺の博打場を仕切っているそうではないかと聞くと、


それは違います、仕切っているのは町のごろつきで又八という奴で、顕生様が裏でやらせているのです、寺社方には親分も手はだせないので、つるんでいると思われているのです、

お茶屋も仁蔵がやっているのだろうと聞くと確かに親分のかみさんがやっていなさるが、無体な事はしていないはずです、十手ばかりでは飯は食えないので宿場の親分さんのかみさん、

はだいたい、飯屋かお茶屋か飲み屋をやっていますよと話したのです、


ありがとうと、そばやを後にして仁蔵の家に行くと子分が出て来て親分は見回りに出てなさるが何か御用でというので、とっさに、となりの桔梗屋で働いている娘が年季になっても返して、

もらえないと、その娘の父親が言っていたのでどうして返さないのか聞きにきたのだとうそをいうと、お侍さんそれは何かの間違いではないですか、確かに桔梗屋の女将さんは親分の、

かみさんですが、みんな年季が開けたらその娘が望まない限り家にかえしていなさるはずですが、


親分を呼んできますのでお上がりになり少し待って下さいと座敷に案内し、お茶をだしてそれではと出ていったのです、他には子分はいないようです、尚が清之進様あんな嘘をついて、

よろしいのですかと聞くと、とっさに口から出たのです、段々真一朗殿に似てきたのかしらと笑ったのです、


暫くして仁蔵が帰って来て、仁蔵と申します、道々お尋ねの訳を聞きましたが、お侍さんは路銀がなく、作り話をして路銀をもらうつもりですか、最初から路銀を借用したいとおっしゃれ、

ば少しばかりなら用立てしますよ、嘘はいけませんよと言うので、いやすまん、私は公儀巡察方なのだと真一朗から預かった葵の紋の入った脇差を見せ、この町の掃除をしているところだと、

いうと、


これは失礼いたしました、雑言はゆるしてくだされ、それでこの町に何か不正があるのですかと聞くので、そなたの風聞を聞いたら評判が悪かったので、試したのだよと言うと、こんな、

商売ですから、悪く言う人もいるでしょう、ところで手前はそんなに評判がわるいのでしょうかと頭をかくので、いや町衆はいい親分さんだというておった、誰かが讒言したのだろう、


しかし、輪水寺の住職はとんでもない奴らしいの、町方のそなたでは手がでまいというと、はい、与力の清水様にいったのですが、徹底的な証拠がなければお代官に申しあげるわけには、

まいらぬといわれてまして、調べているのですが今一証拠を集められないのです、申し訳ありませんと頭を下げるので、それはこちらに任せてくれ、いや~親分がいい人で良かったと、

いうと、なんなりと申しつけください、なんでも協力しますと言ったのです、


仁蔵の家を出て隣の桔梗屋にはいると、女将が出迎え、いらっしゃいませと部屋に案内したのです、今日始めて座敷にでた芸者がいるはずだがと聞くと、ああ白菊さんですね、今は杉戸屋、

の座敷に出ていますが、呼びますかというので、杉戸屋とやらが怒るのではというと、かまいません、横柄な人で私は嫌いなのです、しかし商売ですから来るなといえないですが、チョット、

意地悪してみましょう


なあに、白菊さんのいい人がきているといえばむげにはできませんよと笑ったので、これ女将客の悪口を他の客にいうのはというと、申し訳ございませんと頭をさげ、暫くお待ちをと部屋、

を出ていったのです、仲居が酒と肴を持って入って来て、ぞうぞと酌をしたのでかたじけないと飲み干し、随分キップのいい女将だが、ここで働くのは大変だろうというと、いいえ、とても、

いい女将さんですよ、


ここに働いている仲居の身内になにかあると、めんどうみてくださって、年季が明けてもここで働く娘が多いんですよ、婿の心配もしてくださり、ここからお嫁にいった娘も沢山います、

といったのです、なかなかいい女将さんだねというと、あら女将さんから身内は褒めるなそれが水商売だといわれているのです、この事は内緒にしてくださいというので、わかった女将、

には内緒にしとこうと笑ったのです、


仲居がさがると尚がとてもいい女将さんみたいですね、さすがあの親分のおかみさんですねと感心したのです、暫くして女将が白菊を連れて来て、白菊さん、凛々しい若武者二人が呼んで、

くださったのですよ、杉戸屋の席で疲れたでしょうゆっくりお相手しなさい、杉戸屋の席は私がなんとかします、ごゅっくりと部屋を出ていったのです、


尚がさすがメイさんだ、芸者姿はピッタリですね、真一朗様が見たら惚れ直しますよというと、ほんによく似合いますよ、ところで何かわかりましたかと聞くと、小頭に杉戸屋を調べて、

もらい、賂の書付を手に入れたそうですとメイがいうと、それはお手柄です、やつぱり宴席でないと証拠を見つけるのは難しいですねと、笑美姫がゆうと、お役にたててよかったです、

一献どうぞと酌をすると、


そうやって酌をされると殿方はめろめろになるはずですと笑美姫と尚が笑ったのです、いまごろは真一朗殿と伊織殿がイカサマ博打を締め上げているはずです、今夜あたりばか共が、

旅籠にの乗り込んでくるでしょう、尚、時が来たら仁蔵の親分へ話し代官に出場願うのですというと、尚が承知しましたと答えたのです、





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