陽炎の森68   翌日常陸屋に連れ立って行くと助右衛門が出迎え奥に案内し座ると、長旅ご苦労様でした、また今回のお働きお見事で御座いますと挨拶したのです、いたみいる、


陽炎の森68

 

翌日常陸屋に連れ立って行くと助右衛門が出迎え奥に案内し座ると、長旅ご苦労様でした、また今回のお働きお見事で御座いますと挨拶したのです、いたみいる、

今回はみどもの申し入れお聞き届けてくだされ、かたじけのう御座いますというと、なんの、このような娘でよければどうぞお持ちくださいと頭を下げたのです、


頭をお上げくだされ、しゅうと殿というと、真一朗様に貰ろうて頂いてうれしゅう御座います、きょうは心ばかりの宴を用意しました、祝言は旅から帰って、

からとの事ですので、今日は仮祝言としますと話したので、かたじけないと返事すると、


ないないにお聞きしましたが、5000石の旗本に取り立てるとの公方様の申し出をキッパリお断りになったと聞きました、土井の殿様への遠慮からと拝察つかまつります、

さぞかしお殿様は喜ばれた事でしょう、私はすっかり真一朗様に惚れました、もし真一朗様のお仕事で金が入用なときは遠慮なくいうてくだされ、


この常陸屋の身代そつくりお使いになっても、宜しゅうございますよと言うので、お父様、真一朗様と祝言をあげるのは常陸屋ではなく私ですよといい、私より

お父様のほうが真一朗様に惚れている、なんておかしいですとふくれると、そうでしたメイとの祝言でしたと笑ったのです、


メイの母親は随分前にみまかりましたが、冥土でさぞかし喜んでいる事でしょうと瞑目したのです、真一朗は助右衛門に隠して自分の世界に連れていく訳にはいかない、

と思い、公方様の申し出を断ったのは他に理由があるのですと言うと、少しまってくださいと席を立ち番頭を呼び、呼びに行くまでこの座敷に近づいてはならない、

と人払いをし障子を閉めたのです、


メイが本当の事を言ってはダメですと小声ではなしたが、いや話すべきだろうと、助衛門が前に座ったので、実は私はこの時代の者ではないのです、今から500年後の、

時代から来たのです、後5ケ月もすれば私のいた時代に戻れるかもしれません、その時はメイも一緒に連れていこうと考えています、私の世界に連れていけばこの世界、

には二度と戻れぬかもしれませんと話すと、


驚きもせず、実は村上のお殿様から聞いているのです、最初はにわかに信じられなかったのですが、殿様から色々聞いて、あのカメラとかいう物を見せられて、本当の、

事だと分かったのです、殿様はメイとこうなる事を予見して私に話してくれたのでしょう、真一朗様がどの時代の人間でもかまいません、神様がこの世界を救うよう、

に送りこまれたのだと思います、


この話は絶対他言しませんので安心してください、この常陸屋も真一朗様のいた世界まで続いていればいいのですがというので、歴史の大きな事は記録に残っていますが、

さすがに、常陸屋のことは分からないのですと答えると、真一朗様がその世界にお戻りになり、メイとの間に子供がうまれればその時代まで続く事になりますよと笑った、

のです、


メイ、真一朗様の世界に行ってもくじけてはいけません、立派な子供を生むんですよ、その世界まで続くように手紙をしたためて、油紙につつんであの渡良瀬の森、

の大きなくすのきの下に埋めておきますよ、戻ったら掘り起こしてくださいといったのです、そういえばあのくすのきは樹齢800年と立て札に書いてあった事を思い出し、

私のいた時代にもあのくすのきはありましたよと答えたのです、


そうですか、今のうちにあのくすのきの周り500坪を買い求め、目印に小さな祠を建てておきます、殿様が蘭学書に時空を越えて旅が出来る方法があるというておられ、

ましたが、本当の事だったのですねと感心していたのです、


この話しはこれくらいにしてさあ支度も出来たころです、と宴席に案内したのです、メイがビックリしましたよ、お父様が悲しむのではないかと思いましたが、分かって、

くれて、これでホットしましたと嬉しそうにしていたのです、


宴席につくと、笑美姫と伊織、メイが座っていたのです、二人が上座に座ると、高砂屋の祝い歌を番頭が歌い、三々九度の盃をふたりでほしたのです、笑美姫が、

そばに来ておめでとうとお酌をして、メイ、旦那様を守り立てるのですよとやさしく手を握ったのです、暫くすると助衛門が真一朗様なにかひとつ披露してくだされと、

いうと大勢が拍手をするので、


それではと立ち上がり、甲斐の山々陽に映えて、われ出陣に憂いなし、おのおの馬子は飼いたるや、と歌い、詩吟を披露したのです、やんや、やんやの喝采です、

座ると、すご~い、この詩は真一朗様が作ったのですかと聞くので、違うよ、僕の世界では今も宴席で歌われるんだよと話すと、へえ~信玄公は未来まで慕われる、

ですねと感心していたのです、


しばらくして伊織が前に来て酌をし、みごとな詩吟でした何処で覚えたのですかと聞くので、知り合いに詩吟好きがいて、いつも聞かされていたのでしらず、しらず、

に覚えたのですよ、伊織殿も思いが叶うといいですねと返杯すると、笑美殿はなかなかてごわい相手ですと、笑美姫をちらっと見たのです、


伊織が席に戻ると、真一朗殿と何をはなしていたのですか、どうせ私の悪口を言っていたのでしょうと言うので、違いますよと酌をすると、伊織殿はごまかすのが、

ヘタですね顔にでていますよと笑うと、その策には乗りませんよ、やんわりかわしたのです、


宴席に武士が数人混じっています、メイに何処の家中の人と聞くと、土井家中のお侍ですよ、勘定奉行の柿本様と物産奉行の安田様と配下の方々です、じき挨拶に、

見えられます、挨拶にこちらから行かなくいいのと聞くと、婚礼では花婿、花嫁は席を立つてはいけない決まりですとメイが答えたのです、


暫くして一人の武士が前に座り、勘定奉行の柿本俊介でござる、真一朗殿は登城されぬゆえ、今日初めてお会い申すがまずはおめでとう御座ると酌をしたので飲むと、

返杯をしたのです、挨拶もせずご無礼つかまったというと、なんの、なんの、真一朗殿のご活躍は聞き及び申す、われら古河家中も鼻高々で御座る、


常陸屋が身内の宴席ゆえ勘弁してくれというたが末席でいいので参加させよと、物産奉行ともども無理をいうてださして貰ったので御座る、しかし真一朗殿はあの、

笑美殿を簡単に打ち据えたとか、我が藩に笑美殿を打ち負かすのは剣術指南役一人のみですぞと笑ったのです、


やがて物産奉行の安田が前に座り、押しかけて申し訳ござらん、まあ一献と酌をしたのでこれも、返杯すると初めて町人の宴席にでましたが、なかなか、愉快でござる、

真一朗殿今後は困った時はご相談しますゆえ、いい策をおおしえ下されと席を立ち、笑美姫に挨拶し酌をしたのです、お二方も町人の宴席に出るとは酔狂ですねと、

笑美姫がいうと、そうゆう笑美殿も酔狂でござると切り替えされ、


そうですね、私達は酔狂者どうしというわけですか、しかし楽しゅう御座ると大笑いをしたのです、メイが真一朗様の策士は城中にとどろいているのですね、奉行が、

このような席ではしゃいでいるのは初めてみました、村上の殿様も来たかったのでしょうが、まさか城代家老が町人の宴席にでるわけには行かないでしょうと笑った、

のです、


助衛門がそばに来て、お奉行二人が宴席に参加させよというので、身内の宴席なので断ったのです、末席でいいのでとの事で失礼に当たると恐縮したのですが、

真一朗殿の仮祝言に村上の殿様も出たいと言われ、他の家老が押し留め、奉行ならいいだろうという事になったそうです、本当に婿どのは人気ものですよと話し、

たのです、




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