陽炎の森50 朝早く出立し翌日の夕方には長崎に到着したのです、さっそく長崎奉行所に顔をだすと奥の方に案内され、そこにいた人物が、みどもが長崎、


陽炎の森50


朝早く出立し翌日の夕方には長崎に到着したのです、さっそく長崎奉行所に顔をだすと奥の方に案内され、そこにいた人物が、みどもが長崎、

奉行の長谷川平蔵ですと挨拶した、長谷川平蔵といえば江戸中期の火盗取締役のはずだがこの時代ではない、


彼の祖先なんだろう、確かに祖先が長崎奉行、京都奉行を歴任した事は事実である、公儀巡察方の村上真一朗でござる、現在の状況をお聞き、

したいのだがというと、一揆の人数はおよそ2万人で多数改易になった大名の元家臣が入っており、その数およそ5000人と思われ、後は百姓、

バテレン信者でござる、


島原の廃城になった、原城に立てこもっています、今は板倉藩の兵が原城への道路を封鎖していますが、一揆の数が多く手を出す事は出来、

ないのです、もうじき細川藩と鍋島藩の軍勢が到着し、老中松平定信公が寄せての大将として来る事になっていますと、現状を話したのです、


長崎の町にも不貞浪人が入り込んでいますが、奉行所の役人の数ではとても排除できないのです、原城まではここから10里の道のりです、

どうされるおつもりかと聞くので、話しに聞いた天草四郎という若者に会ってみようと思っていますと答えると、


それは無理です、会うには原城にはいらなくてはなりません、幕府方の人間と分かれば入っても生きて出てこられませんよと言うので、

賛美歌を歌いながら行けばバテレン信者として快く向かえてくれるでしょう、天草四郎に会ったらイエスの言葉を伝えればいいのです、


真一朗殿をイエスの使者として信じるでしようかと聞くので、行灯の火を消して、懐からLEDのライトを取り出し壁に向かってスイッチを、

押すと、そこには真一朗の姿が映し出されたのです、行灯の火をマッチでつけると、平蔵がびっくりして貴方は本当にイエスの使いなの、

ですかと聞くので、


いやこれは手品みたいなもんです、平蔵殿のようにかれらも信用するでしょう、さきほど行灯をつけられた火はなんで御座るかと尋ねるので、

これは火薬を棒に塗り、この箱にリンを混ぜたものが塗込んであります、リンは発火温度が低いので摩擦で火がつき火薬に点火するわけです、


火打ち石と同じ役目をするわけです、夏の夜に墓場で人魂が見えるのは土葬された、人間の骨から出たリンが発火して燃える現象なのです、

さらに先程壁に照らしたみどもの姿は、この筒の中に光る物がありみどもの絵が貼り付けてあるので、この光りにより壁に映しだされる、

のです、


真一朗殿は蘭学者なのですかと聞くので土井家お抱えの蘭学者ですと答えたのです、申し遅れましたがこちらにおられるのは土井家国家老の、

ご息女笑美姫様とお付の腰元メイと尚にございますと紹介すると、おう村上殿のご息女であられるかと言うので、父をご存知ですかと尋ねると、


今は国家老でござるが、江戸勤番のおりは何かとお付き合いし、一刀流堀内道場の同門でござるよとなつかしそうに話したのです、是非当屋敷、

に逗留するように平蔵がいうと、いや諸国巡察方ですから町屋にとまるしきたりですと丁寧に断ると、そうでござつた、私の目付け役でもある、

わけだ、それでは丸山町の長崎屋という旅籠があります、


おいしい物を食べさせてくれる宿です、与力に案内させましょうと坂井はおらんかというと、一人の武士がここに控えおりますと部屋に入って、

きて、坂井源一郎と申しますと挨拶した、それでは拙者が案内しますというので、奉行に挨拶し奉行所を出たのです、


旅籠に着くと、女将が奉行所からの知らせでお待ちしておりましたと挨拶した、坂井が女将ぜひあの料理をよろしくというと、わかりました、

と女将が返事をし、坂井がそれではごゅっくりしてくだされと挨拶し出ていったのです、


部屋に通されると、風呂に浸かってください、おあがりになる頃には食事の支度が出来ていますといったのです、笑姫が真一朗殿はバテレン、

の賛美歌とやら知っているのですか、賛美歌329は私の時代では有名で歌い手が歌っていましたし、歌詞も一番だけ覚えていますよ、後で、

書きますから練習しましょうと答えると、


メイがわたしは、はやり歌が大好きなんです、ぜひ教えてくださいと言ったのですが笑美姫はあんまり乗り気ではありません、

真一朗がそれでは歌ってみましょうと、歌い始めたのです、


いつくしみ深き 友なるイェスは、罪科(つみとが)憂いを、取り去り給う、心の嘆きを、包まず述べて、などかは下ろさぬ、負える重荷を

歌い終わるとメイがいい歌ですねというので、紙を取り出し歌詞を書いて3人に渡したのです、単調な節なのですぐ覚えられますよ、

私について歌ってくださいといい歌い始めたのです、


3回も繰り返すとピッタリ呼吸が合ってきて、いい歌声になって来たのです、歌い終わると、笑美姫がいい歌ですね、わたしでも歌えました、

ほんに心が和みますというので、歌だけにしておいてください、本当にバテレン信者になられると殿様から叱られますよと言うと、


こんなに優しい神様を信じる、バテレン信者の気持ちがわかるような気がします、でも大丈夫ですよ、わたしはお釈迦様が大好きですから、

と笑ったのです、お風呂に入りあがってくると夕餉の支度が出来ていました、


みると海鮮料理です真ん中にタイの刺身みたいな白身魚が盛り付けてありました、真一朗が女将にこれはタイですかと聞くと、いえ、クエと、

いう魚でなかなか取れないんですよ、お客様は運がいいんですよ、是非箸をつけてくださいというので、一口食べるとコリコリしていて、

なんともいえぬ食感です、


笑美姫に勧めると、一口食べほんに美味しいみんなも食べましょうといったので、メイと尚も箸をつけおいしい、おいしいと食べるのを、

女将が本当に良かったですと微笑んでいたのです、


先程綺麗な歌声が聞こえましたが、みなさんは旅の役者さんですかと聞くので、いえ違いますよ、あれはバテレンの賛美歌という歌ですと、

答えると、知っています、でもバテレンは禁止ですから、気をつけてくださいと小声で話したのです、


ひよっとしたらこの女将も隠れキリシタンかも知れないと、真一朗は思ったのですが知らん顔をして、気をつけますと笑ったのです、





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