陽炎の森47 旅籠を出て中州に巡察に向かったのです、さすが九州一の繁華街ですたいそうな賑わいでした、通りのはずれまで来るとほとんど人は歩いていません、少し離れた、
陽炎の森47
旅籠を出て中州に巡察に向かったのです、さすが九州一の繁華街ですたいそうな賑わいでした、通りのはずれまで来るとほとんど人は歩いていません、少し離れた、
場所からこちらに向かってちょうちんが二つ近づいてきたのです、
町はずれなので引き返そうとしたとき、ひとつのちょうちんが空に向かって飛び、ぎや~、助けてくれと声がしたので、走って近づくと、侍が刀を前にだし、
命がおしければ金を出せと刀を突きつけていたのです、
石を拾いその男の背中に投げつけると、げえ~と前にのけぞったのです、振り向き邪魔をするのかと走って来て刀を振りおろそうとしたので、刀を抜き受け止め、
横に飛び胴を払うとその男はかろうじてかわし、お主なかなかやるなあといい刀を納め走って逃げたのです、
襲われたのは、みなりの整った町人です、けがはなかったでござるかというと、危ないところをお助けくださりありがとう御座いました、手前は瀬戸屋という、
回船問屋をやっています、正造と申しますといったのです、
怪我がなくてよかった、お店はどこだ物騒だから送って行こうといい連れて歩き出したのです、中洲の川の傍に店はあり、ここで御座いますどうぞお入りください、
というので後について行くと、奥座敷に案内したのです、
先程の侍は浪人みたいだったが。このような辻斬りはこの町では多いのかと聞くと、肥前の方で戦が始まるとかで、多くの浪人が入り込み、ここから肥前に行き、
手柄を立てようとしているので御座います、おそらく路銀を使い果たし、辻斬りで路銀を手に入れ肥前に行こうとしているのでしょう、
今月に入り、番頭一人と手代2人が怪我をしておりますといったのです、なんの戦だと聞くと、過酷な年貢の取り立ててとバテレン信者の弾圧とが絡み合い、
いたる所で一揆が起きており、肥前の殿様も手を上げている始末にございます、
百姓だけでなく、関が原で敗れた小西や立花の残党が、多数紛れ込み百姓をあおっているらしい、のですと話したのです、主人が手を叩くと、酒と肴が運ばれて、
来てなにも御座いませんが、一献やってくださいと酌をしたのです、部屋に一人の侍と娘が入って来て、このたびは危ないところかたじけのうござる、手前は、
山田長政と申す、この娘は瀬戸屋の娘でせつで御座ると紹介したのです、
みると二人とも首に十字架をかけています、キリスト教徒ですかと聞くと、おぬしどうしてキリストを知っているのだ、みんなはバテレンといっているのに、
エゲレス語を多少知っているので御座る、バテレンとはポルトガル語でござろうと言うと、
ほう日本人でもエゲレス語がわかるとは、初めて会いもうしたと感心しているのです、ところでバテレンは禁止のはずで御座ろう、堂々と十字架を下げていると、
役人に見つかったら大変ではござらぬかと聞くと、ここ博多は商人の自治がある程度認められているので、黒田藩の代官所は無く役人もいないのです、
しかし幕府はこの騒動を鎮圧して全てバテレンのせいにして、今後厳しく取り締まる事になり、この町の自治もままならなくなるでしょうと話し、しかたないので、
私達はルソン(フイリピン)に渡り、そこで暮らす事にしたのですと答えたのです、
瀬戸屋殿も一緒にで御座るかというと、いえ、私は信者ではありません、娘は山田様に貰ろうて頂いて、連れていってもらうので御座いますと話したのです、
ところでお主の素性を聞いていなかったが、肥前に行き一旗あげようと思っているのですかと聞くので、
いえ、私は公儀巡察方でござるというと、何公儀の役人と長政が刀に手をかけるので、まあ、まあ、刀から手を離しなされ、私の役目は領民が健やかに暮らせる、
ように悪人の掃除が仕事でござる、バテレン弾圧は職務に入っていないのです、
肥前で不貞浪人にそそのかされ一揆に加わっている民、百姓がいれば救わねばなりません、又そそのかす不貞のやからは懲らしめなければならないのですというと、
しかしそれは難しいでござるよと言うので、肥前のばか殿の過酷な年貢の取立てがこの騒ぎ発端で御座ろう、このばか殿の改易で騒ぎが治まればいいのですが、
ここまで来ると無理かもしれませんねと話すと、もし迫害を逃れる為ルソンに渡るものがいれば、みどもが連れていってもよう、御座ると長政がいったのです、
是非お願いしたいというと、分かり申したいつでも出立できるよう準備をしておきましょうと長政がいい、
船の手配はわたしがしておきましようと瀬戸屋が言ったのです、せつ、がきっとイエス様が村上殿に合わせてくださったのですねと言うと、長政がそうだよ、
神は決して見捨てることはなさらないと、せつの手を握り締めたのです、
店を出て旅籠に戻ると、笑美姫も戻っていたのです、様子を聞くと真一朗が聞いたのと同じです、山田長政の話しをすると、そのような事をして歴史が変わる、
のではと言うので、いえ、確かにルソン(フイリピン)に山田長政が迫害されているバテレンを連れていって生活したのは歴史的に本当なのですと答えると、
やつぱり真一朗殿は歴史通りに事を進めるためにこの時代に来たのですよ、偶然なんかではないのですよといったのです、メイがそれでは私が真一朗様の世界、
に行く事はどうなんでしょうかと尋ねるので、
私のいた時代では戸籍といい生まれた時に届けしなければなりません、届け出てないと何をするにもうまくいかないのです、メイを私の時代に連れて行っても、
戸籍がありませんというと、メイがヤツパリ真一朗様とは一緒に行けないのですねと悲しい顔をするので、
大丈夫だよ、笑美姫様の家系は続く事がわかっています、私がこの時代に来たのは平成25年だから、メイが今年20才なので平成5年に女の子が生まれた届けを出せ、
ばいいのです、笑美姫の村上家に平成5年の1月27日に必ず女の子の出生届けを出すように書付を残すのです、その中には電話番号を書いておき元に戻る日の一日、
後にそこに連絡するように書いておくのです、
電話とは私の時代ではそれでもって遠くの人と話が出来る道具が使われているのです、封書にし決して平成の年号がくるまでは開けてはならない、それまでは代々、
受け継ぐ事として残すのです、そうすれば元の世界に戻ったときにメイは丁度20才に、なっており、村上家の娘として私と婚礼をあげればいいわけですとはなすと、
なるほどメイがこの時代からいなくなっても時を旅して真一朗殿の世界に現れる、というわけですね、それはいい方法ですとうなずいたのです、信一郎様うれしゅう、
御座いますとメイが真一朗の手を硬くにぎったのです、それでは、明日は肥前に行ってなるべく多くの人を助けましょうと盃を重ねたのです、
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