陽炎の森43 その日の遅くに小頭が帰ってきて、風呂敷包みにはいった勘定書きを開き、勘定差配方家老、伊藤孫七郎の手文庫に入っておりました、分からないようにすこしづつ、



陽炎の森43


その日の遅くに小頭が帰ってきて、風呂敷包みにはいった勘定書きを開き、勘定差配方家老、伊藤孫七郎の手文庫に入っておりました、分からないようにすこしづつ、

大山虎次郎にいいつけて着服したものを、組頭が調べたものと思われますと手渡したのです、


それでは明日徳山藩の国家老にいって、大山虎次郎を引き渡してもらいましょう、そして仇を打ちなされといったのです、山脇源次郎が組頭の仇打ち、ご助成つか、

まつりますというと、奥方がご助成かたじけのうございます、宜しくお願いしますと、子供ともども頭を下げたのです、


翌日国家老の屋敷に赴き、公儀巡察方、村上真一朗である国家老に取り次ぎをお願いしたいというと、奥座敷に案内されそこには国家老が下座に座っていたのです、

徳山藩家老、山崎多門で御座る、老中より全国巡察の義承っております、なんぞ我が藩に不審な事がござったのでありまするかと聞くので、ご本家の不正で御座る、

徳山藩の馬周り役、大山典膳にかくまわれております、大山虎次郎をお引渡し願いたいのです、


このものはご本家の勘定差配方家老、伊藤孫七郎の公金横領を闇に葬る為、指図により、勘定方組頭、下田伸介を闇討ちしたので御座る、城下にその妻女と子供が、

敵討ちの為参っているのです、本家の家老の不正の証拠はここに御座ると勘定書きを渡したのです、


みどもの一存では承知できませぬゆえ、殿にお伺いをたてまするのでしばしお待ちくだされと、城へ登城したのです、暫くして毛利就隆がやってきて下座に座ろう、

としたので、真一朗が下座にすわり、そちらにお座りくだされといったのです、


この度の不始末、家老より聞き申した、面目次第もござらぬと頭を下げるので、頭をお上げくだされ、みどもは城下の掃除をやっているだけで御座います、事情を、

お分かりくださり、大山虎次郎をお引きわたしくださればよいのですと話すと、


分かりもうした、直ぐに大山典膳にいうてその虎次郎とやらを連れてまいれと、家老に指示したのです、それではここの庭を拝借しても宜しいかと尋ねると、ぞうぞ、

それがしも敵討ちを見聞いたしますると就隆がいったのです、笑美が妻女と子供、山脇源次郎をともない庭へ控えたのです、


存分に敵討ちせよと就隆がいうと、かたじけのう御座いますと3人が頭を下げたのです、ほどなく大山典膳が虎次郎を連れて庭に控えると、虎次郎尋常に立ち会えと、

いい、敵討ちの助太刀はゆるされておる、典膳助太刀しても構わぬぞというと、いや先程ご家老から事の本意をききまして御座いまする、闇討ちとは知りません、

でした、上意打ちときき及んでおりましたもので、


闇討ちをしたと分かれば、いくら親戚とて助太刀するわけにはまいりませぬと頭を下げ、虎次郎、尋常に立ち会うのだと言ったのです、わかりましたそれではと、

立ち上がったのです、山脇源次郎が義により、組頭の敵討ちに助成つかまつりますといい、一斉に刀を抜いたのです、


山脇源次郎と大山虎次郎はほぼ互角の腕をしているようである、じりじり間合いをつめ、虎次郎が上段から刀を振り下ろすと、ガギッと山脇源次郎が受け止め、

切りあいをするもきまらず、大山虎次郎が右に飛び胴を払うとわずかにはずれ、山脇源次郎が上段から刀を振り下ろすと、切っ先がわずかに大山虎次郎の右肩に当たり、

刀をおとしたのです、それ今ですとと源次郎が言うと、


妻女と子供が大山虎次郎の懐に飛び込み刺したのです、ぐわ~と悲鳴が聞こえ、大山虎次郎は仰向けに倒れたので、妻女が首筋にとどめをさしたのです、刀を抜いて、

控えると、ようやった見事であると就隆がいい、本家にいうて家名は再興されるよう取り計らおうといったのです、


典膳、亡骸を引き取り、ねんごろにほうむるのだと言うと、わかりましたと、遺骸を戸板にのせ屋敷をでていき、3人も礼をいって屋敷をでていったのです、

就隆がこれで宜しかったでござるかと聞くと、よろしゅう御座る、本家の始末は就隆様におまかせいたしまする、ここに証拠の品をお渡しいたしまする、なおみども、

は池田家には災いがかからぬように公儀には報告しておきますると、真一朗がいうと、


かたじけない、家老は宗家に言うて厳罰に処断いたしまするといったのです、それでは掃除も終わりましたので、これで失礼つかまつりますと、屋敷を出たのです、

旅籠に帰ると、3人が待っており、今回は本当にありがとう御座いました、これで夫も冥福できますと頭を下げるので、いや、見事で御座った、気をつけて帰られよ、

と旅籠を送り出したのです、


それでは町に出て掃除の乾杯をやりましょうと、居酒屋に入り盃を重ねたのです、メイが長州は真一朗様の時代での名物は何なのですかと聞くので、ふぐですがと、

いうと、メイが女中にふぐと言うものはあるのですかと聞くと、ああふくですね、下関が本場ですが、徳山のふくと岩牡蠣も美味しいですよといったのです、それを、

とメイが注文したのです、


岩牡蠣が来たので、れもんはと女中に聞くとけげんな顔をしているので、ゆずだよと言うと、ああといい、二つに切ったゆずを持って来たので、これをかけると、

美味しいんですよと、しぼり、さあというと、皆が食べ美味しいというので、ひとり、二つまでですよ、それ以上食べるとおなかをこわしますと言ったのです、


笑美姫が美味しいものは食べ過ぎるなという事ですねと言ったのです、ふぐの鍋が来たので、ヒレ酒はあるのかと聞くと、ありますよと、熱燗をもつて来たので、

ヒレの入った湯のみに酒を入れ、蓋をして、暫くして、こよりに火をつけ蓋をとりちかずけるとパッと火がついたのです、なにをしているのですかとメイが聞くので、

こうやると酒に香ばしさがでるのですといい、


さあと勧めると、ほんとですね、これはおいしいと笑美姫がめをまるくしていたのです、しかしこの時代からふぐ鍋はあるんだと、真一朗も関心したのです、




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