陽炎の森39 翌日朝餉を済ませ待っていると、表に馬のひずめの音がして、備前池田家筆頭家老、小山田利光でござる、公儀巡察方、村上真一朗殿におめにかかりたいと門前、
陽炎の森39
翌日朝餉を済ませ待っていると、表に馬のひずめの音がして、備前池田家筆頭家老、小山田利光でござる、公儀巡察方、村上真一朗殿におめにかかりたいと門前、
でいい、庄屋の案内で庭に控えたのです、このたびの不始末についてまことに面目次第も御座らん、ここに茶屋を取り仕切っている、源一一党を捕縛し召し連れ、
てございます、
また次席家老、用人、広田幸四郎および次席家老、島田主悦をひかえさせております、ご処断のほどお願いたてまつりますると平伏したのです、それではと庭におり、
源一の前にいき、百姓が年貢に困って娘を茶屋に奉公させた、その支度金を帰りに待ち伏せ奪うとは何事だ、その悪辣な仕方は勘弁ならん、ここで成敗してくれると、
刀を抜いたのです、
ここで首をはねるというと役人が体を抑え、上段なかまえくびすじめがけて、えい~と振り下ろしたのです、みんなが、首が落ちると目をつぶり、目をあけると、
首は源一についたままである、源一はもう死んだと思ったのです、真一朗は首の皮一枚で刀を止めたのです、
刀をしまい、源一そなたはもう死んだのだ、ここにいる源一は生まれ変わりである、いいか、いままで奪った金の倍をそのものに返すのだ、10両なら20両、15両なら、
30両を手下のものに持たせるのだ、証文があるのでどこのだれかはわかるだろう、また手下がその金を持ち逃げすれば、どこまでも追いかけてその首を落とすぞと、
言うと、命をお助けいただけるのでしょうかというので、
今回は特別に助けてつかわす、そのかわり、この宿場のきもいりとなり、領民をいたわり、まつとうに商売するのだといったのです、但しこの証文に爪印を押し、
二度と悪さしないと誓うのだと証文を差し出し爪印を押させたのです、小山田がそのような寛大な処置では示しがつきません、用人の処罰はいかがしましょうかと、
聞くので、
用人にはご子息がおるのかと聞くと、今年25才の息子がおり、ただ今勘定方を拝命しておりますというので、ここにお呼びなされといい、息子が控えると、本日より、
そなたが用人をやりなされ、親父殿には今回の責任を取って隠居して頂く、ただし、貰った賂はすべて藩に差し出す事だと言ったのです、
寛大にご処置いたみいりますと平伏するので、長く用人の職にあれば段々悪にそまっていくのでござる、この組織のありようを正せねばならないのですというと、
次席家老が今回の責任をと取り、次席家老をお役ごめんにして頂きますというので、それには及びませぬ、この組織が悪いので御座ります、これからは、もう一人、
用人を選び、2人にて月番で職務をやらせるのです、
こうすれば、商人との癒着も防げ、お互いが監視役というわけです、お城に筆頭家老と次席家老がいるようにお互いが牽制するのも、不正を防ぐ事になるのです、
それでは縄目を解きなさい、源一もし約束をたがえる事あらば次ぎは容赦しないぞと笑うと、
これから直ぐに手下どもに金を持たせ、返しに行かせます、今後はこの命、村上様に貰ったとして領民につくしますというと屋敷をでて行ったのです、
広田殿は隠居の身なれど、まだそなたの息子及び新たに選ばれる者、は経験不足じや、用人としてのやりようを良く指南なされよというと、仰せの通り一命を、
投げだして果たしますると平伏したのです、
それでは小山田殿と島田殿こちらの部屋にあがられよ、他のものは解散し休憩をとるが良いと申し渡し部屋に招きいれたのです、差し向かいになると、二人が、
今回の備前池田藩の騒動に対しての寛大のご処置いたみいりますと頭を下げるので、なんのそれがしの役目は掃除役でござれば領民が暮らし安くなればいいので、
ござる、
今回の騒動は年貢の取立ての方法の過ちから出た事ですと、昨日庄屋に話したことを言い聞かせたのです、なるほど良い策でござるが、池田公の裁可が必要で御座る、
というので、お二人のご家老が進言なされば、必ず裁可されるでしょう、城下にてお茶や副産物の商いが増えれば、藩のみようが金も増え、藩財政もうるおい、
一石二丁にござるよと笑ったのです、
さらに筆頭家老派と次席家老派がある事は存じておりますというと、小山田が申し訳ござらぬ早々に解散して派閥をなくしまするというので、いやその必要は、
御座らぬ、派閥は組織の中に無くてはならないのです、それをなくせば、最初は良いのですが、そのうち一人の権力者が独断専行する事となり、収拾がつかなく、
なるものなのです、
みんなの力を分散させるのに必要です、表面上はあくまでお二人は仲が悪く見せる必要があるのですが、本当に仲が悪くなってはいけないのです、お互いに分かり、
あう事が必要ですというと、なるほど、実をゆうと我々二人は竹馬の友で仲は悪くないのです、おっしやるとおり、演技をしているのです、
密かに城下をはずれ、酒を酌み交わす事もあるのです、これでいいのですねと聞くので、良いのです、それなら安心ですと言ったのです、小山田が一献差し上げたい、
のですがと言うので、ダメですよ、領内で巡察方と両家老と仲良く酒を飲むわけにはいけません、江戸へ起こしの節は飲み明かしましょうというと、
なるほどわかりもうしたそれではつつがない巡察をお祈りいたしますと帰っていったのです、庄屋が重ね重ねの采配感服いたしました、百姓衆の慈しみ、きもに命じ、
ますと言ったのです、
それでは大掃除も終わりましたので乾杯しましょうと、皆で盃を重ねたのです、笑美が今回も悪人が全員善人になってしまいましたねと笑ったのです、
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