陽炎の森38 宿場の入り口で待っていると、真一朗達が来たので、そこの茶店に入り事情を話すと、それでは、今夜ここの宿場の旅籠には逗留するわけには行きませんな、


陽炎の森38


宿場の入り口で待っていると、真一朗達が来たので、そこの茶店に入り事情を話すと、それでは、今夜ここの宿場の旅籠には逗留するわけには行きませんな、

どこかのお寺でも頼みましょうというと、妙があのと言うのでなんですかと聞くと、


ここの庄屋の光衛門さんは私のおとっさんのいとこです、宿を頼めば引き受けてくれるはずですと言うので、それでは頼みましょうと、庄屋の家に行ったのです、

妙が頼むと、どうぞ遠慮なく逗留くださいといい、ゆうの顔をみて、貴方様は先程のお武家様ですねと言うので、


こちらが公儀巡察方、村上真一朗殿、同じく村上清之進殿一行だと、紹介すると、どうぞ宜しくお願いしますと平伏するので、手をあげなさい、ご厄介になりますと、

言ったのです、妙が知らない事とはいえ、ご公儀のお役人様に道連れになってくれ等、という失礼のお願いおゆるしくださいというので、かまわないのですよ、

旅は道連れというでしょう、とにこりと笑ったのです、


足をすすぎ、奥の部屋へ案内され、お風呂が出来ましたらおよびします、それまではゆっくりして下さいと庄屋が妙をつれ部屋を出て行ったのです、しかし、ゆう殿、

は凄いですね、もう不貞のやからの密議まで調べあげるとはと感心すると、これでも柳生のくの一ですよ、手下がよくやってくれるのですと笑ったのです、


妙が茶道具を持ってきて、お茶をたてたのです、なかなか美味しいお茶ですねと聞くと、この変は寒暖の差がはげしく、美味しいお茶葉が取れるのですよ、と妙が、

言ったのです、庄屋がお茶受けを持ってきてどうぞと差し出したのです、


信一郎が、ここまでくる間にあまり茶畑はみませんでしたがというと、お茶葉を作っているのは手前くらいのもので、百姓衆は茶を飲めば、茶渋が陶器につくので、

ほとんど、食事の後は湯を入れて飲むので作らないのですといったのです、


茶渋の着いた湯のみを貸してくだされというと、女中が持って来たので、たばこいれを取り出し、きざみをその中に入れたのです、これにお湯をいれ一晩置くのです、

明日には綺麗に茶渋が取れていますよといったのです、庄屋がわかりましたやってみますと言ったのです、


茶葉をつくり、町で売れば米が取れないとき随分助かるはずですがと言うと、藩がそれを認めると米作りがおろそかになり、年貢が取れなくなると許可しないのです、

それは不作の時と同じです、四公六民が年貢の基準になっていますので米の取れ高が悪いと年貢が少なくなると思っているのです、


通常取れる米から、四公六民を基準とし、一杯取れた時もとれない時も同じとするのです、年貢はお金で払っても良い事になっていますから、米が不作の時は茶葉、

野菜などの副産物を売り年貢を払うようにすればいいのです、したがって、副産物の生産も認めるべきなのです、


こうすれば、藩も不作の時にも同じ年貢があつまりますので、安定した政が出来るというわけです、沢山取れたときは沢山とり、少ない時も過酷に年貢をとる、

なんていうのは武士の勝手というものですと話したのです、


いやあ~、信一郎様は商人より商いが上手でしかも政(まつりごと、政治)もたいしたものですと庄屋が感心したのです、真一朗が私が土井の殿様を通し、池田公に、

この策をみとめてくれるように上申してみましょう、どちらにとつても得策ですからきっとうまくいきますよといったのです、


妙どのその際は岡山でぜひ茶葉の商いをやつてくだされ、そうすれば備前の国は豊かになりますよと言うと、おなごの身の私に出来るでしょうかというので、

出来ますよ、妙殿は使用人を束ねればいいのですと言うと、ぜひやつてみとう御座います、その時は叔父様、力をかしてくださいと言うと、


なんの、頼むのはわしの方です、妙よろしくお願いしますよと手を握ったのです、ところでゆう殿、用人と源一との賂の証拠の書付などはどうでしょうかと聞くと、

陣屋は警戒厳しくて難しいですが、今小頭達が源一の茶屋を調べています、程なく手にはいるでしょうと言ったのです、


風呂に入り、一服していると夕餉が運ばれてきて、庄屋が何もありませんが、ごゆつくり召し上がってくださいといったのです、見ると、イワナの塩焼き、山菜の、

てんぷら、いもの煮物です、酒を注ぎ、備前ですから明日は鬼退治と行きましょうと盃を重ねたのです、


イワナの塩焼きを一口食べ、天然物はヤツパリ美味しいというと、笑美が天然いがいにあるのですかというので、養殖といって、にわとりのように池で飼うのです、

というと、メイがイワナは清流でしか生きられないので飼えないですよと笑うので、


池を作り谷川の水を引き込み、常に流れるようにするのです、エサは魚の卵、とび子、魚のすり身、等を与えれば、段々その池が住みやすくなります、天然物に、

比べれば少し味はおちますが、大量に使う料理屋には結構でますよ、山奥まで取りにいくのは大変でしょうと話し、庄屋殿これも考えてくだされと言ったのです、


わかりました、色々とやる事が出来て楽しくなって来ました、近在の百姓衆にも楽しみを分けてやろうとおもいます、真一朗様ほんとうにありがとう御座います、

と頭を下げたのです、


暫くして小頭がかえってきて、沢山の賂の書付がありましたよと、ふところから出して、真一朗に渡したのです、これで、用人はぐうの音もでまい、ご苦労だが、

尚どのこの書付と朱印状を次席家老に見せ、明日一番にお越し願いたいというてくれと渡したのです、承知しました、庄屋どの馬を拝借できませんかというと、

どうぞと馬小屋に行き、小者に鞍をつけさせ、尚に渡したのです、


庄屋と妙が部屋をさがり、ゆっくり、お茶を飲んでいると、いつもながらの策感心しますよ、どこに、そんなにしまっているのですかと笑美がいうので、

真一朗が500年後の人は皆知っていますよと笑ったのです、




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