陽炎の森36 次ぎの目的地備前の国(岡山)までは15里(60km)であり、2日の道のりです、途中の宿場には特別不正もなく有年宿に一泊し2日には岡山に到着したのです、


陽炎の森36


次ぎの目的地備前の国(岡山)までは15里(60km)であり、2日の道のりです、途中の宿場には特別不正もなく有年宿に一泊し2日には岡山に到着したのです、

備前28万石は姫路城主池田輝政の次男忠継の居城である、城壁が真っ黒の為、烏城(うじょう)と呼ばれている、


この時代には庭園、後楽園はまだ存在しない、城下の旅籠にわらじを脱ぎ、さつそく町に巡察に出かけたのです、さすが28万石の城下町だけあり、町は活気付いて、

いたのです、一件の居酒屋に入り、酒のつまみはなにがうまいか聞くとままかりの酢づけですよというので頼んだのです、


酒が来たので、メイが酌をして一口飲むと辛口ですが美味しい酒でした、ままかりも酒のつまみにはピッタリです、別段不穏な事も無く一回りして旅籠へ戻った、

のです、そのころ笑美と尚は一軒の備前焼の商家に立ち寄っていたのです、店には所狭しと壷や皿が並べてあります、さすが備前焼ですどれも素晴らしいので笑美、

が覗き込んでいると、


中に入って見るようにと番頭がいうので、旅の途中ゆえ買い求めはしないと断ると、構いません、見るだけでも良いというので中に入ったのです、色々見ていると、

一つだけ気になる壷を見つけしげしげ見ていると、番頭がどうですかお気にいりましたかと聞くので、これを見ていると心が落ち着くから不思議だというと、


お侍さんは目利きがよう御座います、この壷以外はたいした事はないのですが、この壷はここの吉次郎さんがお作りになったものでして、駄作と一緒に展示しておいて、

分かる人に貰ろうてもらうようにとの先代の遺言なのです、お代は結構です、どうぞお持ちになっていってくださいと言ったのです、


いや旅の途中ゆえ申し訳ないがと丁重に断ると、奥から主人が出て来て、ここのあるじの吉衛門でございます、お願いしますどうぞお持ちになっていってくださいと、

いい、何処から来たか聞くので、江戸からだと答えると、それでは江戸にお送りします、


月に一辺商いで江戸の問屋に物を送っているので、ご指定のところへお送りしますと言ったのです、そうか、殿への土産に丁度よいと思い、それでは買い求めよう、

いいかほどかなと聞くと、いいえ先代の遺言なのでお代は受け取りませんというのです、


ならば、なにか困っている事があれば御礼に手伝うがと言うと、どこまでお行なさりますかと聞くので、西国街道を西へ肥前までだがと答えると、それでは私の娘、

を安芸の厳島神社まで連れて行っていたたけませんかというので、


お安い御用だ通り道でもあるし、お引き受けしょうと言うと、吉衛門がお妙と呼び、奥から傍に来て妙でございますと挨拶したのです、壷の送り先を言うと、土井様、

のご家中の方ですか、わかりました、江戸へは必ず送りとどけますというので、すずりと筆を貸してくだされ、書状をしたためておきますと、利隆様へ近況と壷の、

献上をしたためたのです、


それではこれを一緒に送りくだされと、書状を吉衛門に渡し、それでは明日出立の時ここに立ち寄るので、旅支度をしておくように言ったのです、お茶を差し上げたい、

のでと奥に招かれ座ると、お引き受けくだされありがとう御座いますと礼を言ったのです、


余計な詮索かも知れぬが、なぜ娘さん一人で厳島神社に行かせるのかと聞くと、これに兄がおりまして、備前焼ではいい腕をしておりまして、先代が目をかけていた、

のですが、おきぬという芸者と駆け落ちしたので御座います、先代が勘当したのですが、亡くなる前に勘当を解くので、見つけだしてくれといい残して他界したのです、


厳島神社の門前で陶器を小商いしている事が分かったので、迎えにやり、おきぬと一緒に戻るように言いましたが、言う事を聞いてくれないのです、もしや妹の、

言う事なら聞くのではないかと、店の手代と迎えにいかせようと思っていたところなのです、そうですか、戻って来てくれるといいですねと言ったのです、


ところでなぜ先代は、この壷の価値の分かった他人にあげろと、いったのですかと聞くと、恥ずかしい事ですが、私は跡取りなのに、陶芸の才がなかったもので、

すから私の息子、吉次郎に期待をかけていたのです、その遺言は人の心を打つ良いものを造るのは吉次郎しかいない、吉次郎の作った物は何も言わなくても他人に、

良い物だと分かるだろうと思ったのでしょうと話したのです、


それでは明日と言って店を出て旅籠に帰ったのです、真一朗に話すと、そうですか、厳島神社は是非行きたいと思っていましたので丁度良かったですね、また殿様、

にもいい土産ができて、きっと、喜んでくださいますよと言ったのです、


風呂に入り、一服していると、夕餉が運ばれて来たのです、見ると軍鶏鍋です、魚が多かったから、今日はご馳走ですねといい、メイが一献と酌をして盃をかさね、

一口食べると、確かにこりこりしているのですがいまいちなのです、何か足りないと思い、そうかみりんだと立ちあがり台所へ行き、醤油に酢を入れかき混ぜ、

部屋に戻り、それを鍋に入れると、味がまろやかになったのです、


笑美が美味しくなったわといい、みんなが箸をつけると、本当だ美味しいと言ったのです、メイが思い出したんですけど、ひようたん屋はもう江戸で開店している、

のでしょうかと言うので、あれから大分達ますから、みみ殿が頑張って、きっと江戸ではやっていますよと真一朗が答えたのです、


食事も終わり、安芸の厳島神社までは15里ですからゆつくり行って2日はかかりますよと尚が言ったのです、安芸というとお好み焼きだがと真一朗が言うと、メイ、

がどんな料理ですかと聞くので、500年後にはお好み焼きと牡蠣が名物だが、この時代に出来ているか分からないと答えたのです、











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