陽炎の森35 翌日笑美を伴って城へ行き、公儀巡察方の村上真一朗である、城代家老、山中敬四郎殿に取り次ぎ願いたいと言うと、城代家老の部屋へ通された、家老が下座に、


陽炎の森35


翌日笑美を伴って城へ行き、公儀巡察方の村上真一朗である、城代家老、山中敬四郎殿に取り次ぎ願いたいと言うと、城代家老の部屋へ通された、家老が下座に、

すわり、諸国巡察、ご苦労にござる、幕府より巡察の義、聞き及んで御座るが、当藩になにか不都合の義がありましたかなと聞くので、


褐染(かちぞめ)に係わる、不正の義でござる、よつて物産奉行並びに郡奉行を詮議する、ここに呼びなされというと、不正の証拠が御座ろうなというので、それを、

これから詮議しようとしているのだと答えると、証拠も無しに池田藩の奉行を取り調べるとは、池田公をないがしろにする行為で御座る、断じて承服できませぬと、

拒否したのです、


ほう、たいした証拠もなしに播磨屋六衛門を取調べ、牢に留めおいているではないか、それと同じ事をやるので御座る、町人は良くて、武士はまかりならんとは、

片手落ちである、どうしても承知なさらぬとあれば、城の壁の修復するなど城普請は公儀への届出が必要ですぞというと、


たかが城の壁のひび割れごときで難癖をつけられましてもと言うので、城のひび割れ普請でも、城普請には変わりない、大きいも小さいもないで御座る、詮議を承知、

なさるか、池田15万石とみどもと差し違えなさるか徳と考えられよ、公儀は小さな事でいいがかりをつけ取り潰しの機会を虎視眈々と狙っているのですぞ、


みどもに便宜をはかるようにとの家光公の朱印状である、これに逆らいなさるのかとやんわり言い見せると、はは~と平伏し、分かり申した今呼びまする、但し、

詮議してもなにもなかった場合の覚悟はござろうなと聞くので、もとより承知の事で御座ると笑ったのです、


しばらくして二人の奉行が前に正座したので、献上品の陣羽織を白鷺屋と計り、やくざ者に盗ませ、献上できない事を理由に播磨屋の出入りを差し止め、さらに、

二人の屋敷に賊が押し入り1500両の大金をが盗まれたとし、傍に播磨屋のてぬぐいが落ちていとして、播磨屋を捕縛し牢にいれるとは何事だというと、


陣羽織を白鷺屋が盗んだとは本当で御座りますか、なんぞや証拠が御座ろうなというので、それには答えず、まず、そなた達はなぜ1500両の大金を持っていたのだ、

1500両といえば大金で御座るぞというと、暫くだまつていたが、あれは間違いで御座る、盗まれたのは150両で御座る、武士の面目の手前1500両といったので、

ござる、平にご容赦をというので、


なるほどそうで御座るか、郡奉行殿も同じで御座るかというと、その通りにございますると返事したのです、なんと言う事だ、嘘をつき、しかもたいした証拠もなく、

播磨屋を牢にいれているのか、ばか者、即刻解き放てというと、これこれから奉行所に行き播磨屋を解放せと、傍の用人に命令したのです、


村上殿面目次第も御座らぬと家老が言うので、これは序の口で御座るよ、陣羽織の事知らぬと申したな、それではこれは何だ良くみて見ろと笑美が紙にたたんだ、

物を広げると、そこには陣羽織が、奉行がそれがしは存じませぬというので、


おかしいではないか、これは白鷺屋の蔵にあったもんだぞ、しかもそこもとは昨夜、白鷺屋と玉屋という料理屋で酒を飲んでいたろう、その時の芸者白菊がそなたと、

白鷺屋が陣羽織の事をはなしていのを聞いて白鷺屋の蔵にある事がわかったのだ、これでも知らを切るのか、あの芸者はわしの手のものなのだと笑ったのです、


奉行二人が立ちあがり、刀を抜いて切りかかったので、かわし、刀を抜き、握り替え、ピシーと肩を打つと前に倒れ、同じく笑美が郡奉行の手を打ち、足を払うと、

ひっくり帰ったのです、家老がばか者、それみなのもの、二人の奉行を召し取り座敷牢に入れよと命令したのです、


家老が重ね重ねのご無礼の段お詫びつかまつります、私の一命にかけてなにとぞ池田藩にご容赦のお裁きをねがいたてまつりますると言うと、脇差を抜き腹を広げた、

ので脇差を掴み、おやめなされ、我々は池田藩を潰す為に来たのではござらぬ、


掃除をしたまでで御座るというと、しかし、城普請の件は公儀はお許しにならないでしょうと言うので、あれは、あの二人の詮議を了承して頂く為の方便でござるよ、

と言うと、命が縮まりましたぞ村上殿と言うので、申し訳ござらぬと言うと、


いえ、この度の不祥事まことに持って申し訳ない事でござりまする、二人の奉行ならびに白鷺屋には厳罰をもって処断いたしますと言うので、よろしゅう頼みます、

ただ城の普請の件はお気をつけなされ、われわれと違って、公儀の隠密は容赦しませんぞ、小さい普請でも届けてさえしとけば安心ですよというと、


家老が重ね重ねのご配慮いたみいりますと深く頭を下げたのです、掃除も終わりましたので、これにて失礼いたしますると言って城下の旅籠に戻ったのです、

旅籠に帰り、尚とメイにそれでは町に出て掃除の祝いをやりましょうと、居酒屋に入ったのです、今回の一番の手柄はメイですねとゆうと、笑美がほんに、陣羽織の、

ありかが分からねば窮する所でした、メイご苦労様でしたと褒め、盃を重ねたのです、


ゆうの手下が戻って来て、途中の宿場はいたって平穏だと報告したのです、打ち上げも終わったので再び旅籠にもどると、女将が播磨屋さんがお目通りを願っています、

というので、部屋に呼んだのです、播磨屋がこの度はありがとう御座いましたというので、白鷺屋が無くなれば係わっていた者が難儀をするであろう、面倒みてやって、

くれというと、もとより承知しておりますと答えたのです、


これはほんのお礼に御座いますと褐染(かちぞめのサイフを人数分差出たのです、そのような事はしなくてもいいのですと笑美姫が言ったのですが、真一朗が折角の、

ご好意だから受け取っておきましょうと受け取ると、メイが賂ですよと言うので、貰ってその人の要望を聞くと賂、なにも聞かなければただの贈り物ですというと、


播磨屋がこれ以上なにもお頼みしませんです、とメイの顔を見たのです、それなら受け取りましょうと、手に取りまあ、素敵なサイフと嬉しそうにしていたのです、






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