陽炎の森31 その足で灘屋に行き、主人を呼ぶように言うと、主人が出て来て、徳兵衛で御座いますというので、有馬屋の女将から聞いた、難儀な事だのう、ところで借金は。


陽炎の森31


その足で灘屋に行き、主人を呼ぶように言うと、主人が出て来て、徳兵衛で御座いますというので、有馬屋の女将から聞いた、難儀な事だのう、ところで借金は。

いくらあるのだと聞くと、ハイ利子込み500両です、とてもそんな金はありませんので、籠屋にこの店を渡す事になりましてと言ったのです、


風呂敷つつみを開けここに800両ある、これで借金を返し、残りの300両で皆で使える源泉を探すがよいというと、見も知らないお方にそのような事をして貰う、

わけには参りませんと言うので、朱印状を見せ拙者は公儀の巡察方である、その金は公方様が下しおかれた物だ遠慮なく使うがよいというと、


はは~と平伏しもったいない事で御座います、きっといい源泉を見つけ、ここを旅で通られる方にいい湯に入って貰うように皆で努力しますと言ったので、宜しく、

頼むぞと、灘屋を出て町へ戻ったのです、


そのころ笑美と尚は料理屋にいた、酒を頼み、芸者を呼ぶよう言うと、3人の芸者が入って来て、いらっしゃいませと挨拶し、年増の芸者があら、若くて凛々しい、

お侍さんだ事と傍により酌をしたのです、こちらのお嬢様はと聞くので妹だと言ったのです、


芸者の中にメイが入っています、そちらの女子名前はなんと申すと笑美がいうと、雛菊で御座います、お侍様はと聞くので、村上清之進だと名乗ったのです、

こちらに来て酌をしてくれと言うとメイがそばに座り、酌をしたのです、年増の芸者がヤッパリ若い女子がいいのですね、くやしいと杯を飲み干したのです、


ところで籠屋の軍兵衛はあこぎな奴と聞くがそんなに悪い男なのかと聞くと、ええ、大きな声では言えませんが、私達も懸命に働いても、何だかんだと言って、

絞り上げ、借金がかさむだけなんですよと言ったのです、下の方騒がしいのでどうしたのだと聞くと、


ここの料理屋の支払いでもめているんですよ、いい身なりをしている人がいると、勘定を吹っかけているんですよ、お侍さんも、気をつけてくださいと言うので、

席を立ち下へ降りて行くと店の男が勘定を払わないと無銭飲食だ役人へ突き出すぞと凄むと、


いくら何でも酒と料理で5両とは高すぎるではないかと、身なりの整った町人が言うと、うるさい、払わないなら身ぐるみはがすぞと手を上げるので、後ろから、

手を掴み捻ると、イテテ~とひっくり返ったのです、なんだ、テメーはと殴りかかってきたので、刀を抜き、持ち替えて峰でそこにいた3人の足を払うと土間、

に転がったのです、


これ以上無体をすると、無礼打ちにいたすと一人の男の頭を水平に払うと、髷がポトリと前に落ちたのです、ひえ~といい、店から走り去ったのです、

奥から軍兵衛と浪人3人が出て来て、先生方お願いしますと軍兵衛が言うと、浪人3にんがまかしておけと刀を抜こうとするので、ここでは迷惑だ表にでよう、

と外に出て刀を抜いたのです、


一人の男が切りかかってきたので右から峰で払うと、ガキ~と音がして、男の刀がポキリと折れたのです、唖然としている男の手をピシーッと打つと、刀を飛ばし、

手を抱えうずくまったのです、刀を持ち替え、上段から刀をその男の眉間に振りおろしたのです、


頭に当たる寸前に手を絞り寸止めしたのです、このまま振りぬけば真っ二つだぞというと、まいったと手を上げ、二人の男に抱えられ遁走したのです、見ると、

軍兵衛と子分も一目散に逃げ去ったのです、女将が真っ青な顔して申し訳ありません、お代はけっこうですというので、それはならんと二分銀を出し、これが相場、

だといったのです、


その老夫婦も二分銀を女将に渡し、あぶないところありがとう御座いましたと言うので、気をつけてまいられよと挨拶して、旅籠へもどつたのです、旅籠に戻る、

と真一朗も戻ってきており、大分掃除ができましたが、軍兵衛という男は我々がいなくなると又無体を働き、善人にする事は難しい御座るというと、


そんな事はありませんよ、籠屋は飛脚も兼ねており宿場になくてはならないのです、あ奴が悪さをしないよう、代官が目を光らせればいいのです、ゆうさんが、

調べたところによると代官は何も知らないようで、目が届いていないのでしょう、目を開けさせればいいのですと笑美が言ったのです、


馬のひずめが聞こえて来て、女将が代官様が真一朗様にとりついでくれとおっしゃっていますと、いうので、灘屋が知らせたのだろうと、下に下りていくと、

土間に有馬代官、下田左京で御座います、公儀巡察方、村上真一朗様には大変のご無礼、面目次第も御座いません、ここに、鍵屋軍兵衛を控えさせております、


いかようにも、御処断くださりませといったのです、おお軍兵衛、灘屋は借金を返したのかなと聞くと、へい、しかし受け取るわけにはいきませんというので、

どうしてだと聞くと、あれは博打の借金で、お上は博打を認めていませんので、借金も無い事になるのですと言ったのです、


それではあの金は元々そなたの物だから、返すぞというと、いいえ、あれは全部お上に献上しますといい、灘屋が真一朗に渡したのです、この中の5両は私の物で、

あったので返してもらうぞと5両を懐に入れ、残り795両はこの宿場に下しおく、灘屋あらためて受け取るが良い、これだけあれば、源泉の維持も出来るであろうと、

渡したのです、


左京が鍵屋軍兵衛以下この者達の処罰はいかが計らいましょうかと聞くので、二度と悪さをしないと言う証文に爪印を押してもらおうと、軍兵衛に渡したのです、

軍兵衛が爪印を押し、いままで通り商売は続けるがよい、博打場もだ、但しイカサマはいかんぞ、料理屋もチャントした料金にせいと言うと、


左京が恐れながら博打は認めるわけには行きませんというので、寺でやっているのだから左京殿の支配違いでしょうと笑うと、たしかに、それがしの知った、

事ではありませんと言ったのです、但し悪い虫が起こらぬよう監視は頼みますぞというと、わかり申した必ず言いつけは守りまするといい、帰って行ったのです、


部屋に戻り、さあ大掃除も終わりましたねと、杯を重ねたのです、メイが戻って来て、これで、借金から開放されると、芸者衆が喜んでいましたよといい、

真一朗様一献ついで下さりませと色っぽくねだったので、メイはすっかり芸者になってしまったと皆で大笑いをしたのです、





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