陽炎の森28 そのころ土井利隆は報告する為に将軍家光に拝謁し、真一朗からの書状を差し出したのです、家光が目をとおし、天下の掃除も順調に行っているようだな、


陽炎の森28


そのころ土井利隆は報告する為に将軍家光に拝謁し、真一朗からの書状を差し出したのです、家光が目をとおし、天下の掃除も順調に行っているようだな、

と言ったのです、傍には老中堀田正俊が控えており、その書状を老中に渡したのです、


読み終わり、ちょうじょうに御座りますると、利隆に書状をかえし、利隆殿それがしを通さなくとも、直接上様に拝謁してもよろしいのですよと言うと、それは、

なりませぬ、老中は上様の補佐役にござりますれば、全ての事を知りおく事が肝要ですと言ったのです、


ところで、利隆もうそろそろ老中になってくれぬかと家光が言うと、恐れ入りまするが、その儀はなりませぬ、先の騒動の後見役が幕閣の中枢にいてはしめしが、

つきませぬ、私は天下の裏の掃除屋が一番合っているのですと答えたのです、


あいかわらず、融通のきかぬ奴よのうと笑ったのです、忠長からも内々に書状が届き、真一朗が見舞いに行ったそうだ、なにやら、手巻き寿司とかいう料理を作り、

馳走したそうで、凄くうまかったというて来たぞ、こんど帰ったら余にも馳走しろというてくれ、


我々が余り食さぬ光物が入っており、とてもうまいというていたので、この前目黒に鷹がりに行った時に庄屋に聞いたら、さんまかあじと言うたので、そのさんま、

が食したいというたら、出してくれてのう、油が乗ってなかなかうまかったぞと言ったのです、


承知しております、上様が食されたという事でいまでは目黒のさんまは有名になっており、江戸中から食しに目黒に人が行くそうに御座りますると答えたのです、

余も真一朗みたいに気ままに旅がしたいものじあ、この前は水戸の光圀もそういうていたので、代わりに家臣をだして、全国の事情を教えてもらえばいいでは、

ないかと申したら、


さつそく家臣を旅に出し、水戸黄門漫遊記とやらを隠居所で編纂しているらしい、出来たら余に一番に見せるというていたが、どうなったかのうと堀田に聞くと、

佐々木助三郎と渥美格之進の二人が旅に出て、今頃は越後あたりにいるらしいと、言うておられましたと答えたのです、


しかし今回の敵討ちは大名と旗本との確執まで発展しおって難儀なことである、もつともこんな事でいがみ合うのは天下が平和の証拠でもあるがのうと言ったのです、

どうやら西の肥前あたりでバテレンが不穏な動きをしているらしい、真一朗にいうて、様子をみてきてはくれまいかのう、西国の大名どもは自分の汚点になり、難癖、

をつけられて取り潰しにあってはたまらんと本当の事は報告せんのだと言ったのです、


利隆は承知いたしました、さつそく書状を送り、様子を見にいかせましょう、ついでに、長崎の様子も見てきてもらいますと返事をしたのです、そのころ真一朗達は、

もう一度、伊賀越えにて大阪を目指していたのです、帰りに京都、美濃(岐阜)に寄れば今回の巡察は終了なのです、


数日たって大阪に着き、梅田の旅籠に宿を取ったのです、さすがに食い倒れの町です、浪速の町は町人で活気あふれています、全国の大名の蔵屋敷が堺には並び、

その藩の特産物を商う豪商もおおく、それにともない、悪い連中も数おおくおり、大掃除が必要な場所でもあります、


早速町へ出る事にし、笑美と尚、真一朗とメイで別々に巡察に出たのです、暫く界隈を歩いていると、路地の奥からギヤ~と悲鳴が聞こえたので駆けつけると、

一人の男が倒れており、数人の男が真一朗に気ずき一目散に逃げていったのです、


起こすと腹に匕首がささつており、グッタリしています、人が集まって来たので、どこかに蘭法医者はいないかと聞くと、すぐ近くに坂戸玄庵という医者がいる、

と言うので、傍にいた町人に役人に知らせるように頼み、戸板に乗せて担ぎ込んだのです、


玄庵はよく匕首を抜かないで運んで来た、抜いていれば出血多量で命はなかったと話し、ギスは浅いので大丈夫だと、匕首を抜き、止血の薬草をキズ口に塗り、

ハリで縫合した、酒で消毒をし、目を覗き、この者はアヘンに犯されており、明日まで体力がもてばいいがと言ったのです、


なにか持っていないか探すと、手ぬぐいをもっており、それには○船と書いてある、どこの物か心当たりないかと聞くと、回船問屋、船戸屋のものだといい、

大阪でも大手の回船問屋と言ったのです、


役人が来たので事情をはなすと、驚いた顔もせず、わかった、気がついたら知らせるように言って帰ろうとするので、アヘン患者なのに驚かないのかと聞くと、

浪人の分際でお上のやる事に口をだすなと言うので、ばか者と怒鳴りつけ、私は公方様直属の巡察方である、町奉行へ案内しろというと、はは~と平伏し、

奉行所に案内したのです、


奉行所に着くと奥に通され、下座に奉行が座り平伏するので、顔を上げなさい、アヘンと聞いて驚かないのかと聞くと、二三ヶ月くらい前から市中に出回り、

現在まで5人が中毒死しています、懸命に探索しているのですが、いまだかって、てがかりがつかめないのですといったのです、


回船問屋、船戸屋は調べたのかと聞くと、紀州様の御用商人なので証拠もなしに踏み込むわけにはいかないのですと答えたのです、店に踏み込んでも何もない、

だろう、やっているとすれば、どこかの荒寺か堺あたりの蔵で作っているのだろうというと、さつそく手分して探索しますと言ったのです、


旅籠に帰ると、笑美達も戻ってきていたので、尚にゆうと一緒に回船問屋、船戸屋の寮を始め蔵などを探ってくれるように頼み、メイには船戸屋が良く使う料理屋と、

ひいきにしている芸者を調べるように言いいつけ、


相手は紀州藩の御用商人だそうなので、身分をあかし乗り込みましょう、そうすれば危険を感じて、隠しているアヘンをどこかに移そうとするはずです、我々を、

口封じの為狙かもしれません、移し場所の探索はゆう殿と尚にまかせましょうといい回船問屋、船戸屋へ乗り込んだのです、








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