陽炎の森22 3日目は前回と同じ箱根湯本の温泉の旅籠に宿を取ったのです、真一朗は温泉につかり旅の疲れを取ると、一人町に出たのです、この前の露天の蕎麦屋に声をかける、


陽炎の森22


3日目は前回と同じ箱根湯本の温泉の旅籠に宿を取ったのです、真一朗は温泉につかり旅の疲れを取ると、一人町に出たのです、この前の露天の蕎麦屋に声をかける、

とこの前は大変お世話になりましたというので、あれからどうだ黒駒の勝蔵は無体な事はしていないかと聞くと、


それがあれからいい親分になりなさって、ショバ代も一割にしてくださり、みんなの暮らし向きもよくなってきております、これも真一朗様のお陰ですといった、

のです、そうかそれは良かった、チョット挨拶でもして来るかと黒駒の勝蔵の家に行きノレンを潜ると、


男が出て来て、これは村上様今親分を呼んできますと奥へいき、勝蔵が出て来て、お久しぶりです、奥えと案内したのです、奥座敷に通すと、前回は色々とご指導、

頂きありがとうございました、おかげで勝蔵もまっとうな人間として、少しは世間様のお役にたっているようでと挨拶したのです、


それは良かった、町の衆も喜んでいたぞと褒めると、村上様に褒められるとは、本当にうれしゆう御座いますと頭をさげたのです、勝蔵が手を叩くと、膳が運ばれ、

来て何もありませんが、まあ一献と酌をしたのです、お猪口を差し出し、一口のむと、冷たく冷えており、これはうまいというと、そこの谷川で冷やしておいたのです、


つまみは山葵料理です、山葵のあえもの、イワナの刺身はこの山葵醤油でたべると最高です、さあ箸をつけてくださいというので、箸をつけ食べると、これはうまい、

酒のつまみにはもってこいではないかと言うと、そうですかそれでは、この辺の旅籠や居酒屋で出すようにしましょう、村上様のお墨つきならきっと旅人に気に行っ、

てもらえるでしょうと喜んでいたのです、


この度の駿河様はお気の毒な事でしたというので、あれで良かったのさ、これから尾張に行ってご機嫌を伺ってこようと思っているというと、ご武家様の事はよく、

わかりませんが、戦にならずにようございました、なんと言っても、戦になれば多くの民、百姓が難儀をしますと言ったのです、


おまえもどうだとトックリを差し出しお酌すると、恐れ入りますと杯を干したのです、それでは馳走になったというと、道中の無事をお祈りしています、帰りには、

またお立ち寄りくださいといい、ここにイワナの刺身と山葵のあえものが入っています、旅籠で皆様とお召し上がりください、今子分に持たせますといい、子分を、

呼び持たせたのです、


宿に帰ると、メイが黒駒の勝蔵は善人になっていましたかと聞くので、人が変わったみたいに善人になっていたよ、どんな人間でも変わる事ができるのですねと、

言うと、笑美が真一朗殿にかかっては地獄の閻魔大王も善人になる事でしょうと笑ったのです、先程勝蔵から貰った、イワナの刺身と山葵の和え物ですと、

膳に広げ、酒を頼むというとメイが調理場に下りて行き注文したのです、


酒が来たので盃をかさね、さあ箸をつけてというと、笑美が箸をつけこれは美味しいといい、みんながおいしい、おいしいと食べたのです、さあ尾張までは、

ひと頑張りですね、ゆるりと旅をたのしみましょうといい、ところでゆうどのはと聞くと、今のんびり温泉に仲間と浸かっていますよ、

もうじき戻ってくるでしょうと言ったのです、


しばらくして部屋にゆうが戻ってきたので、酒と魚を進めると、これは美味しいと目を丸くしています、余分に貰って来ましたのでお仲間に届けてきますと、

いうと、気を使わなくてもいいですよというので、ダメです美味しいものは皆で食するのですといい、メイ殿お酒を調理場から持ってきてと頼んだのです、


部屋を出てゆうの仲間の部屋に行き、酒と魚のお膳を置くと、わざわざ村上様に持ってきていただくなど勿体無いことですと、小頭がいうのでいいのです、

さあみなさん、ご苦労様です、まあ一献とカンパイし、ヤマメの刺身はこの山葵醤油で食べると格別ですよと進めたのです、小頭はじめ皆がおいしい、おいしいと、

喜んでいる姿を見て、このメンバーの一人も欠けずに旅を続けたいものだと思ったのです、


小頭が真一朗様は又衛門様を簡単に打ち据えた剣の達人でありましょう、そのようなお人を敵にまわさず、皆ホットしているのですよと言うので、あれは私が、

汚い手を使ったのでござるよ、まともに勝負すれば私の及ぶところではありませんと笑ったのです、


このような気さくな真一朗様を先代の但馬の守様は憎めない不思議な御仁だと頭にいうておられたそうですと小頭がニコニコ笑ったのです、笑美の部屋では、

ゆうが真一朗殿はとても策を弄する、策士には見えませんが、先代の但馬の守様がとても真一朗殿の策には叶わぬといつも、いっておられました、そうなんですか、

と聞くので、


見えないのが策士たる策士のゆえんでしょう、時々とんなでもない策を思いつくのです、まるでヤンチャ坊主みたいなんですよ、この前なんかは旅の途中で追いはぎ、

をあっと言う間に懐柔して善人にしてしまったし、またここの親分の黒駒の勝蔵も真一朗殿に出合ってからすっかり善人になったようなんです、


おそらく侍としての肩肘を張らず、だれとも五分の付き合いをするからでしょう、ゆう殿、気をつけないと貴方のお仲間も今頃はすっかり、真一朗殿のとりこに、

なっていますよと、笑美が笑ったので、ゆうはそれは大変、頭である私の言う事より真一朗殿の言う事を聞くようになっては頭は務まりませんとつられて笑った、

のです、


そばで聞いていた尚があらあらお二人ともすっかり、真一朗様のとりこになっていますよといい、私もなんですがと笑ったのです、ゆうが真一朗殿に言うべきか、

迷っているのですが、叔父柳生十兵衛様がご病気との事なんです、お話すれば、足を速めて尾張に行こうとなされれば、途中の巡察にさわりがあるといけないので、

というので、


何を言っているのですか、巡察はいつでもできます、一時も早く尾張にいくべきです、真一朗殿が戻られたら、私から話しをします、急いで尾張にいきましょうと、

笑美がいったのです、柳生家の事なのに恐れ入りますとゆうが頭をさげたのです、







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