陽炎の森7 屋敷に戻り姫の部屋へ様子を見に行くと、姫が起き上がり、そなたの煎じた生姜湯はよくきくなあ、体がぽかぽか温かくなって汗をかき、肌着を取り替えていたら、
陽炎の森7
屋敷に戻り姫の部屋へ様子を見に行くと、姫が起き上がり、そなたの煎じた生姜湯はよくきくなあ、体がぽかぽか温かくなって汗をかき、肌着を取り替えていたら、
ほれこの通り熱もさがっていい気分だ、真一朗殿は医師にもなれるぞと笑ったのです、
傍にいた腰元に、尚どの先程は座興が過ぎた許されよと小声でゆうと、姫が真一朗殿はおまえが畳の下にいた事はとっくに気ずいていたのだよ、柳生の者が城下に、
潜入した事を聞いて、真一朗殿を影から守るよう私がいいつけたのだ、真一朗殿は助太刀は必要ないか、と笑ったのです、
尚が後をつけていた事は気ずいていたのですね、しかし、下に忍んでいるときに上から熱い酒が落ちてきたのにはビックリしたんですよ、とっくに気ずかれていた、
とは、姫様私はしのびとしては失格ですと、頭を下げたのです、
はははは、信一郎殿に柳生の手のものはていなく、打ち据えられ、しかも、酒まで馳走させられたそうではないか、そのような御仁かなうわけないよとケラケラ、
笑っていたのです、
ところで、この前、月がくるくる回ったと言っておったが、それは月が急に欠けてきたのでそう思ったのではないか、あの日は食の日であったのだ、真一朗はこの、
時代には皆既月食の事を食とよび、不吉な日と定められており、行事は全て中止する決まりだという事を思い出した、
そうでしたか、それで月が回ったように感じたのですね、して、次ぎの食はいつになるのですかと聞くと、傍ばの暦を取り出し、九時(現在の0時)から食に、入るのは、
2年後の9月10日となっておる、今日から数えて2年と10日だと姫が言ったのです、その日にあそこにおればそなたの世界に戻れるかも知れない、
それまでは私の屋敷に留まり、色んな事を教えてくれと言うので、それではそれまでお姫様にお世話になりますと答えたのです、風邪が良くなりましたら、声をかけ、
てください、何時でもお供もしますと言って、姫にお願いがあるのですがというと、
なんなりと申してみよというので、拝領した刀の事ですが、ハヌキをしてもよろしいでしょうか、このままだと相手に深手を負わせる危険があります、私はこの時代、
の人間ではありません、この時代に人を殺めますと、未来を変えてしまう恐れがあるのですというと、
そうか、そなたに下げ渡した物だ好きにするが良いといったのです、それでは今日はこれで失礼しますと、姫の部屋を退出し、部屋に戻ると、メイに刀を渡し、
ハヌキするように頼んだのです、メイがお侍は自分の刀の切れ味をじまんするものですが、真一朗様は切れない刀をご所望とは刀鍛冶がさぞや驚くことでしょう、
と笑ったのです、
メイが戻って来て、出入りの刀砥ぎに申しつけましたところ、驚いていましたよ、いままで初めてそのような依頼を受けたとの事でした、もったいないと言って、
おりました、湯殿の用意が出来ておりますと風呂に案内したのです、すっかり下帯(フンドシ)にもなれたみたいで、なかなかいいもんだと思ったのです、
しばらくたって汗が出て来たので、お湯をかぶろうとすると、少し待ってくださいとメイが湯殿に入ってきたのです、背中を流しますと後ろに行き、背中を何かで、
こすり始めたので、イタタタと言うと、これぐらい我慢するのですと言ったので、何で擦っているのと聞くと、ヘチマですよ、これでアカを落とすと気持ちいいんで、
すよと答えたのです、
さあ終わりましたよと、背中にお湯をかけるとヒリヒリするので、首を縮めるとその内なれますよとメイが笑っていたのです、鬢付け油で頭を結い、終わりました、
と言ったので、世話になったと言うと、いちいち礼は言わなくてもいいんですよ、夕餉の支度が出来るまで部屋でゆっくりしてくださいと言ったのです、
しばらくして、義清様がお戻りです、笑美姫様が元気になられたので今日は真一朗様を招いて夕餉を囲むとの事です、案内しますと、奥座敷に行ったのです、
挨拶して膳の前に座ると、今日は姫の薬を煎じたそうだな、良く効く薬みたいだなあ、姫もこんなに元気になったそうだ、めでたいと言ったのです、
恐れ入りますというと、しかし、生姜に蜂蜜とは、ここの薬師もおどろいていたぞ、といつめたら、確かに生姜は体を温める作用があるといいおった、薬を調合する、
のが名医だと思っているのだろう、姫のいう苦い薬ではなく、あまい薬をわしも飲んでみたいぞと言うと、
笑美姫が真一朗殿より煎じ方を教わり、私が煎じてあげますと言ったのです、そうか、こんど風邪をひいたら頼むぞとニコニコ笑ったのです、さあ、遠慮せず、
酒をのんでくれ、メイ酌をしてやれといい、メイが酌をしたので、頂戴しますと一気にのんだのです、
今日来て貰ったのには訳がある、姫が元気なになったら、姫と一緒に江戸へ行って貰いたいのだ、実は当主の利隆様より急使が来て、どうも、将軍の後継者が、
家光様に決まっているのにかかわらず、柳生が勢力を伸ばす為、お江の方に取り入り色々画策しているらしいのだ、利隆様は将軍宣下は秀忠公の独占事項であると、
どらにも肩入れするつもりはないのだが、
柳生は執拗に忠長様擁立を迫っているらしい、今はお江の方に取り入っているが、但馬は策士ゆえ、いつ手のひらを返すかわからない、そこで、そなた達は利隆様を、
その陰謀から守ってほしいのだと言ったのです、真一朗はヤッパリ巻き込まれる事になるのか、しかし自分の知っている歴史では3代将軍は家光である、これが忠長、
になれば未来は相当変わる事になる、
ひょっとしてこれを阻止する為に天が自分を送り込んだのかも知れない、見届ける為に江戸に行くのもいいかと思い、承知しましたと答えたのです、
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