警戒する感覚の尖鋭化を磨かざるを得なかった弟


ウーやスーよりも頭三つ程高い背丈と、細身ながらも引き締まり形も色艶も綺麗な背中と尻を向けたまま立ち上がり、青年が振り向きながら話しかけてきた。


「おう、スーにウーじゃねえか!お前たちも早速嗅ぎつけてきたのか!まあ分かる、分かるぞー!だが残念だったなっ、アニキであるオレが全部食っちまったぞわはははは・・・・・・・」

どすっ。

へなへなとみぞおちを押さえてしゃがみ込む自称アニキ。

自称アニキの目の前に小さい靴底が見えた途端、鳩尾にスーの踵が突き刺さった。

喧嘩キックで踵を前に突き出したままウーに背を向け片足で立つ須比智邇。


ウーは音も無くスススっとスーから数歩下がった。


温和な表情ながら顔の各部位の筋肉は微動だにしないけれど血の気が引いている。


次兄のしくじりで自分の仕事を為し損ねた憤懣を改めてスーは思い出してとうとう爆発した。

「ねえねえうーくん、すーちゃん、どったのー?」

「へえっ?わ、いづのめちゃんひさしぶりだねー。なおくんはまたおかしなタイミングにここにいんねー。それがさー、下のアニキがさー、ポカしちゃってさー、僕は世界に着いた所で先に憤懣爆発しちゃってすっきりしたんだけど・・・・。」


ちんまいけれどそこはかとなく大人びているような、されどぽやーっとした声と雰囲気でいつ横に立ったのか察知させない伊豆能売が宇比地邇に声をかけた。

「んっふふ、なおがついつい長居したがっちゃってね。とよくものの兄さんが超美味かったっっ!ってあたし達に叫びながらすれ違って帰ってったのさ」

「ここから?」

「そ。」


豊雲野はちょっと立ち寄る積りが、寛ぎすぎて出来たばかりで空間だけの世界に行かず、ここから直帰したらしいとウーは気付く。

(アニキー、スーの泥で部屋が天井まで埋め尽くされた事を完全に忘れたな、ほんっっとに懲りないよ。)






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