report.4
結局、国男さんがいなくなって3日経ったせ
っかく噂とやらが聞けると期待していたので
誠に残念ではあった
しかし俺の立場からすると正直、国男さんよりもこの収容所へ若干の苛立ちがあった
なぜ国男さんが下のフロアへ移動する際に、前もってに移転するのを事前に教えてくれなかったのか
最上階のこのフロアでの肉親以外で唯一親しく会話のできた友人のような存在がフロアから抜けてしまった為にここでの収容生活はますます灰色一色のつまらないものになってしまった
「駄目よ・・・・そんなのは・・・・・!」
「!!・・・・・うるさい・・・!
口答え・・・・する・・な!!!!!!」
「そんなことが・・・許さ・・・!!!!」
はっ!!!!!
またか・・・・・
また最近ひどく奇妙な夢を毎晩見るようになった
誰かと誰かが頻繁に争っている夢
何をどうして争っているかは記憶が断片、断片のせいでよく思い出せないのだが
おかげで最近は寝不足が続いて仕方がないのだ
左上につけてある時計を見て、もう一回布団の中に潜り込む
時計は7時の針を刺しており仕事に間に合うのかと思うのかもしれないが、
今日は仕事がない唯一の休暇日
休暇日の場合、
仕事がないため特に行動に制限はつかない
つまり、父親の面会時間の18時ごろまでは一切制限の無いの自由時間というわけだ
勿論、制約というものはあり、外での運動や何かしら外に用事がある場合など外に出るときには部屋の中にあるコールボタンを押さなければならない
コールボタンを押すと外に9桁の暗証番号を打ち込むコードが存在し、そのコードを看守が入力する事により、外に出られるようになるのだ
部屋の中にも暗証コード気があるのだが9桁と適当にコードを入力しようと外に出られる確率はほぼ0%なので無闇にコードを押して外に出ようとする愚か者はいないと言うことだ
布団に入っているとだんだんウトウトしてくる
自分の熱で暖められた布団とふわふわの枕が自らの眠気を助長しそのまま睡魔に身を任せ次第に意識は闇の中に消えていった・・・
・・・・・・・・・
何時間布団の中で意識を絶っていたのだろうか
久し振りに深く眠ることができた為か
眠気もすっかり冷めて
左上の壁に取り付けられている時計に目をやる
すると長い針は6の手前、短い針は10を指していた
「5時50分か・・・・だいぶ、寝てたな・・・・・・・・
ってこんな時間だ!父さんとの面会時間だ
もうそろそろ準備するかな・・・」
と寝巻きから指定されている囚人服に着替え
時間になるのを扉の目の前で待った
待っている間、自然と時計に目が合い、
時計の針をひたすら見つめ続ける
その時計の指針を見つめてるうちに
不思議な感覚にとらわれ始めた
時計の針が一つずつ進むごとに、まるで
自分人生が1秒ずつ減っていくように感じられ、
無意味に、生まれた時から収容所に囚われ、
自由もほとんどなく家畜同然のような人生
まるで自分の人生が砂時計のように急速に減っていくように思われた
そんな事を考えているうちに、
いろんな感情が心の底からマグマのように
グツグツと何かが徐々に湧き上がってくる・・・・・・・・
俺はこのままでいいのか?
他の人間が外で楽しくやっている時に俺はここで何をしてるんだ?
なぜ俺がこんな目に・・・・・・この一族の人間というだけで・・・・・・
どうして・・・・・どうして・どうして・どうてどうして!?!?!?!?!?
「・・・・番!・・・23番!・・・囚人番号16423番!!!!!!」
不意に呼ばれた、囚人番号に俺はなぜか無性にイラっとして、看守を思いっきり睨みつけてしまう
看守も一瞬不意に向けられた、
その鋭い視線にたじろぐが
さすがはこのフロアの看守であろう
やわなメンタルではここのフロアの看守は務まらない
すぐに冷静さを取り戻し、栄太郎のことを睨み返す
看守に睨まれたことにより
一瞬で我に帰った栄太郎は
すぐに今の状況に気づく
「あっ・・・・・・・・」
もう気づいた頃には非常に状況は悪化していた
突然何も無い状況に喧嘩腰で向けられた視線に看守も顔から不快感を隠さずにこちらを睨み返してくる
一瞬、頭が真っ白になった
この収容所、特に上のフロアになればなるほど、看守に大きな権限が与えられており
囚人の態度によっては労働時間の延長や
あんまり度がすぎる規則違反を行うと
個人的裁量で教育と称した拷問まで行うことができる
頭に最悪の事態がよぎる
この状況をなんとかするには・・・・
思考の停止した脳を必死に動かし
打開策を考えた
頭がパニクって有効な手立てが思い浮かば無い・・・・・
その為か、栄太郎は考えることも無く
床に手をついて・・・・
「申し訳ございませんでした看守様
これからはこのようなことがないよう
誠心誠意努めますのでどうか寛大な処置を」
・・・・、自然と土下座をしていた
床に頭を擦り付け精一杯の謝罪をした
床に顔をつけてる為、どんな表情をしているかははっきり見えなかったが
何秒か沈黙が部屋の中を包み・・・・
沈黙の後、明らかに大きな溜息が聞こえ、・・・・・
「ちっ、・・・これからは気をつけて行動しろよ
囚人が・・・・・」
と吐き捨てるように言った
今になって思えば、この時、自分の中に何かのスイッチが入った気がした・・・・・
何か、極限や絶体絶命に陥ると入る火事場の馬鹿力とでもいうのだろうか
それとは明らかに別のものだが、
この時から自分はこの件に関して迷いなく
決断ができるようになったのかもしれない・・・・
時間になり、また先週の面会室へ足を運ぶ
この時の俺は無均質な壁を通って行ったことやさっきの看守に不快な視線を向けられ続けていることなど全く気にならなくなっていた
面会室の前まで到着しいつものように扉の前に立つと
普段通りの滑らかな動きで扉は開く
扉を開くと扉の向こうには俺の父、
祐太郎が薄い透明壁の向こうに座っていた
俺は父の姿を見るや否や、即、他のものには一切目もくれず、父親の方へ向かって歩き出し
席に座ると・・・・すぐに、
看守にバレないように小さな声で父に呼びかけた
「父さん、来週の作戦の手順を教えてくれ」
静かに、僕の時間は今日の出来事をきっかけに再び動き出した
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