report.2

「母さん・・・・・それは・・・・・」



全ての言葉を言い終わる前に、母は優しく


微笑み、かおを壁に出来る限り近づけて・・・



「ごめんね、まだあなたとずっと喋っていたいけどもう時間みたい

安心して次の面会までには全て準備は

整えておくから

あなたは体調を崩さないように気をつけておきないさい」



言いたいことを言い終えたのか


母は通常、話していていた距離に顔を戻す


するとまででタイミングを見計らっていたかのごとく



「囚人番号16423番、15829番、面会の時間は終了です

直ちに会話を終了して部屋から退出して下さい」



無機質な機械的アナウンスが1時間の面会の終わりを知らせた


すると後ろから先程まで居眠りをしていた看守が扉を開け、顔をしかめて退出を促してくる


その顔を見て俺は慌てて席を立ち看守の方へ早足で向かう


看守に導かれるように扉の外へ向かおうとしたその時・・・・・


「栄太郎!!!!!

また次の二週間後の面会楽しみにしてるわね!!!!!!!」


と投げかけてくる


それに反応し自分も返事を返そうとしたが、


少しの引っかかりも無い扉が即座に自分の視界を遮ることで返事を結局返せないまま

面会は終了した












「・・・・・どうだった・・・・・・・

数値の変化は・・・・・」




暗闇の中から一人の男が白衣を着た男に

後ろから話しかける



「はい・・・・・・安定しています

このままいけば私達の悠久の悲願も・・・」



研究者らしきしかしとても若くとても研究者とは容姿が程遠い男?が後ろの男に同調するが・・・・・・



「気を抜くな・・・・

この時の為に、慎重に慎重を重ねてここまでやってきたんだ

今回の件は決して失敗が許されない

それが分かっているのか?」



後ろに控える男はその緩んだ、気持ちを咎めるように研究者の青年に鋭い視線を投げかける


しかし、研究者の青年はそんな視線を意に返すようなこともなく、



「大丈夫っすよ。

今回でもう何回目かははっきり覚えてないっすけど、今回こそは必ず成功するっすよ

結果さえ出せれば、何も文句は無いっすよね?

それよりもここまで来たら、そっちの役割の方が重要になってくるっすよ

えーっといつだったか忘れてしまったっすけど・・・・

前みたいなのはもうこりごりっすよ?」



先程咎められた軽口を反省したそぶりも全く見せず、


それどころか男は逆に自分の懸念を相手に指摘し返した



「ふん・・・・・分かっている・・・・

今回はもうあんなヘマはせん

結果さえ出るならばそれで良い

私は先に戻っているぞ」




「はーい♫

お疲れ様っす〜」



男は研究者との会話を打ち切り

部屋を後にする・・・


男のシルエットは相変わらず暗闇に紛れている為、


何を考えているのか、皆目見当もつかなかったが・・・・


しかし、僅かに当たる光からひどく口先が釣り上がり歪んだ男の笑みが見て取れた・・・




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