side碧

第1話 出会い side碧

「雛さん!!」

バタバタバタバタ...

「くそ!!」

いきなりキレて飛び出してった雛さん。

なんで、こうなるんだよ!!




出会ったのは昨日の夜...


俺は小学校低学年の頃に両親が離婚していて、今の親は父親とその再婚相手の女だ。

実親の離婚の原因は父親の浮気が原因だ。母親は俺を引き取ろうとしていたみたいだが、父親が無理矢理俺を引き取ったみたいだ。

そのあとは地獄だった。俺には血の繋がらない弟がいる。継母の連れ子らしいが、継母はそいつばかり気にかけて、俺の扱いは酷かった。父親もそれを見てみぬふり。愛情の無い環境で育った俺に愛情なんてあるわけ無かった。


昨日知り合ったばっかの女と一晩を共にして、金をもらい、生きていく。

高校生になった頃から俺は、家を出て、そんな生活を繰り返した。

そんな時のことだった。彼女、雛さんに会ったのは。

昨日の女に居酒屋につれてかれて、金を渡され、晩御飯を済ませようと思ったのがことの始まり。カウンターで食ってた俺の隣に雛さんはやって来た。

「おじちゃん~!ビールぅ!!」

「お嬢ちゃん、大丈夫かい?かなり出来上がってるんだろ??」

大将が言うように、他の店で飲んできたのか、すでにかなり出来上がってるように見える。

「らいじょ~ぶ!!」

いやいや、大丈夫じゃねぇだろ。

なんだ、このヒト。パッと見、未成年にも見えるんだが...

初対面でそう思ってしまえるほど、彼女は幼い顔つきで、酒にも慣れてなさそうだった。

「あ~!いま、みせいねん?っておもったでしょ!」

うわ、めんどくさ。絡んできやがった。しかも、考えてること的確に当てやがった。

「そんなことないですよ。」

「ぜったい、うそ!むぅ、わたし、ちゃんとせいじんしてるんだからねぇ??」

そういって、会社の社員証を見せてくる。

あ、マジだ。ちゃんと顔写真もお姉さんの顔だ。

「ふふん、やっとしんじた??」

上手く呂律がまわってないのか、たどたどしい口調で自慢気に言う。

その顔は、酒がまわっているのかほんのり火照っていて、目もトロンとしている。

先程の嫌悪感はなく、むしろ喉がゴクリと鳴るのを感じた。

「ねぇ、このあとなにかよていある?」

なんだ。やっぱりこのヒトもほかの女と変わらないんだ。こんな何も知らなさそうな顔してても、考えることは他の女と変わらないなんて。

俺、なんでガッカリしてる?

考えても変わらないか。

「何も無いですよ。」

いいよ。そっちがその気なら俺も割りきって相手するよ。

「ふふ、よかったぁ。じゃあ、わたしのはなしにつきあってくれる?」

...は?

「あのねぇ、わたしね、ついさっきまでかれしといたんだけど...」

え?いやいやいや。話?え、ホテルに行くんじゃないの??

大抵の女は予定を聞いたらホテルに行こうと言い出すのに、ただ話を聞いてほしいという彼女に興味をもった。

「ねぇ、きいてるの??」

「っ///」

頬を膨らませ、ジト目で見てくるその姿に、思わず可愛いと思ってしまった。

「すみません。もう一回良いですか?お姉さん。」

「もぉ、だから、わたしね、さっきまでかれしといたんだよ。だけど、そのひと、とつぜん別れようって言い出して。なんで?って聞いたら、他に好きな人がいるんだって。」

さっきまでの酔っていて呂律のまわってない喋り方と変わって、泣き出しそうになりながらも、しっかりとした口調で喋った。

そんな彼女を見ていると、何故か、相手の男に腹が立った。

でも、腹を立ててる場合じゃない。このヒトは、1人なっても絶対に泣かない。出会ったばかりだけど、なんとなく直感でそう思った。ならば、俺のやることはただひとつ。彼女を泣かせてあげること。

「そっか。辛かったね、お姉さん。」

「っ!...うん。」

やっぱり、こんな言葉では泣かないか。

彼女は一瞬だけ、泣きそうになったが、それでも歯をくいしばって微笑んだ。

「お姉さん、もっと話して?大丈夫。お姉さんは悪くないんだから。いきなり、大切な人に突き放されたら、悲しかったよね。」

「!...ぅん、辛かったけど、多分、私ね、悲しかったの。信じてたのに、なんで私を選んでくれなかったの?って、なんでもっと早くに言ってくれなかったの??って、相手の女の人、彼の浮気相手なんだって。しかも、彼との子を妊娠してるんだって!!なんで!?なんでそんなことしたの??もぉ、分かんないよ。私、そんなに頼りなかった?え、えっち、出来なかったから...?///それでも良いよって、言ってくれたのに!!」

「もう、いいよ、お姉さん。」

気付いたら、抱き締めてた。自分を責め始めた彼女は痛々しくて、見てられなかった。

「そんなの、男が悪いだけじゃん。なんでお姉さん、自分を責めてるの?それに、なに?エッチ出来なかったの?」

「!///」

あ、今さら恥ずかしいこと暴露したのに気付いたんだ。可愛いなー。

「嫌だったら言わなくて良いからね?」

残念だけど、この話題で女性をからかうべきではない。聞かないでおいてあげよう。

「うぅ~///」

なにその声。かっわいい///しかも顔も真っ赤で目も潤んでてほんと庇護欲がかきたてられる。

「でも、ありがとね。」

ニコッと効果音が付きそうなほどキレイに笑った彼女は、俺が見てきた人間の中で、一番綺麗に見えた。

「お嬢ちゃん、どうする?酒飲むかい?」

ずっと様子を見てたらしく、大将が声をかけてきた。

「はい。いただきます。」

「ムリはすんじゃねぇぞ。」

「ありがとうございます。」

そういってビールを飲みはじめたのはいいものの!

「えへへ、ひとまえでないたの、ひさしぶりだったぁ。ねぇ、きみのおなまえはぁ?」

完全なる酔っぱらいができたじゃねぇか!!

「名前ですか?碧です。」

「あおいくんかぁ~。」

やば、名前呼んでもらっただけでなんか嬉しい。

「はい。」

「ふふ、あおいくん、ありがとうね?」

///ほんと可愛い顔してこっち見てくるとか、ムリ。可愛すぎ。

「ほんと、わたしがあおいくんとおないどしだったら、ぜったいすきになっちゃうなぁ。」

は?なにこいつ、可愛すぎかよ。なんか可愛すぎて腹立つ。

でもまぁ、笑ってくれてるし、いいか。

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酒は飲んでも呑まれるな!! @Carry

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