第15話 タフな変態、脆い老体
「すみません!まさか勇者様の魔防がこんなに低いとは思わなくて!」
煽ってんのか?
とりあえず反省してるようなので、心優しい無職の僕は彼女を許したが、この件が終わったら彼女とは関わらないようにしようと心に決めた。
結論から言うと、エイミーさんの開発した、AK-47もどきは魔物相手には使えなそうであった。
簡単に言うとこの兵器は使用者の魔力をエネルギー弾、驚異的発射速度に変換し、撃ち出すというものだった。威力は使用者の魔力に比例するらしい。
レベル最大の勇者の魔力に匹敵する彼女の魔力を持ってしても、僕を5分の3殺しにするほどであるため、魔法を使えるなら普通に攻撃した方が手っ取り早い。
実際の威力以上に痛みを感じるため対人戦には使えるかもしれない。
一般人が護身用に使うのはいいか。
こんなことを彼女に伝えると
「ありがとうございます、別のアプローチで魔物、魔王対策をしたいと思います!」
前向きに受け取っていただけて助かる。
「エイミーさん、丁寧に説明していただいて有難うございます。」
「いえいえ、私の故郷を救った勇者様たちに恩返しできて嬉しいです。普段は訪ねてきた勇者は門前払いしてるんですけどね」
彼女が綺麗な金髪をわしゃわしゃすると、可愛いケモミミがひょこっと出てきた。
通りで初老の猫耳と接点があるわけだ。最初僕は性犯罪を疑ったが杞憂だったようだ。
胸はないが、ケモミミ属性持ちであれば守備範囲だ。
「エイミーさん、もしよろしかったら──」
「はい、犯罪でーす」
目の色を変えた僕に感づいた善子が僕に峰打ちをしようとした瞬間────
「キャーーー変態!」
外から女性の叫び声が聞こえた。慌てて僕たちはは研究室から飛び出す。
声の聞こえた方へ行くと中庭のような所に辿り着いた。そこには腰がぬけて座り込んだ女生徒と、制服を来た若い男性が。
「違うんだ!僕は変態なんかじゃない!ただ純粋に女性の制服が好きなだけなんだ!」
犯人発見であります。どうやら日本人なようだ。また身内の犯行だ。勇者の評判が下がるからやめていただきたい。
「あなたが制服泥棒ね!3分の4殺しにしたげるから覚悟しなさい」
「君は今日の獲物のエイミーちゃん!どうか僕に制服を譲ってくれないか。僕も盗むってのは不本意なんだ」
「ふざけないで!プラズナ・デウスマキナ!」
「うおっ、危ないなあ。リフレクト!」
「え、嘘......」
やばいやばい。制服泥棒のくせに魔法反射呪文『リフレクト』を使えるとは。僕なんてこないだ覚えたばっかなのに。
あんなの喰らったら塵も残さず消え去ってしまう。
が、相手が未知数なためリフレクトの応酬はリスクが高い。一度止めた方がいい。
「改行!」
イカれた威力の電撃は消え、穏やかな晴れ模様に戻った。
「あんた噂の伝説の勇者じゃないか。あの呪文を消すなんて、いったいどんな能力使ってるんだよ」
そんな便利な能力じゃないっすよ。現に残りHP1ですし。実行するまで回復もできないし。強めのデコピンで死にますよ。
「君は何をしてるんだ、いい年して。勇者なんだから人の模範にならなきゃだめじゃないか!」
「それはあんたも同じだろ。おっさんのくせにこんな世界来てんじゃねえよ!」
男が殴りかかってくる。こいつ格闘家か?
びっくりした僕は誤って
「実行、リフレクト!」
「なっ!」
やってしまった。変態とはいえ、人を殺してしまっ────
「危ねえじゃねえか!もうちょいで死ぬとこだったぞ!」
マジかよ........。こんなタフな制服泥棒見たことないぞ。
「お前のせいでお気に入りの制服が焦げたじゃねえか!ケモミミ好きの変態野郎が!」
「勇者様を馬鹿にしないで!この人は他の勇者とは違って下心なんてない、町の人たちを救った英雄なんだから!」
まあそうなんだけど、彼の言ってることも間違いではないのだ。僕は全てのケモミミ娘に下心を抱いてる。
「ストーカー、頼む!」
「OKです。ベホイマ!」
「さて、そろそろ諦めてくれないか。おとなしく罪を償いなさい。僕ももう手加減できないよ」
「ふざけるな!誰にも俺の性癖の邪魔はさせねえ!」
やはりだめだった。
こんなレベル最大ぐらいの強さの変態を相手にするのはなかなか骨が折れる。
申し訳ないが3人掛かりでやらせてもらおう。
「善子、ストーカー、こないだの陣形で『いのちだいじに』でいこう」
「えー、私達も戦うんですか」
「男なんだから一人でどうにかしなよ」
「だまらっしゃい!」
僕がこんな規格外の変態を相手にしたら確実にやられてしまう。幸いにもあいつのHPは残り僅かなようなので、峰打ちか催眠呪文で動きを止めなくては。
「もう、しょうがないなあ、能力使っていい?」
「武器のは駄目、ソードスキルはOK。ストーカーはなるべく攻撃くらわないで。善子のカバーと回復は僕がやる」
『はーい』
そして僕たちはこの間カフェで決めたばかりの陣形───後衛『無職』、前衛『ヨハネ』、『ストーカー』で武器を構える。
「だせーなおっさん。自分だけ安全な後衛かよ」
『そうだぞー、ださいぞー』
「だまらっしゃい!早く行きなさい!」
僕の怒号を合図に二人が仕掛ける。善子が切り込み、ストーカーが間髪入れずに攻撃する。できたてパーティーにしては良い連携で彼は反撃の糸口を見つけられず手間取ってる。
「おもいっきりやっていいからねー。頑張ってー」
『うるさい!』
この間善子に蹴られて分かったが勇者同士の戦闘では外傷はなく、HPのみが減るのだ。どっかの誰かの仕業である。
「とりゃ」
ついにストーカーが攻撃をいれ、すぐに善子が──
「スターバ○ストストリーム!」
やり過ぎでは?。彼は驚くほど吹っ飛び、砂煙で姿が見えない。
「超スピードの蹴りが来ます!お姉さん避けて!」
やっぱり生きてる。なかなかしぶとい男で助かった。
「いや、そのまま突っ込め善子、バイキルク!」
「りょーかいです」
「ちょっと何言ってるんですか勇者様!」
助走をつけた彼は善子めがけて一直線に突っ込む。そして彼の高速の蹴りが善子の首元を襲──わずに善子に当たる瞬間に止まる。
攻撃の瞬間に改行した。
「なっ⁉」
「信じてたよ相棒、変態よさらば!」
迷わず突っ込んだ善子の攻撃は彼にダイレクトヒット。ちゃんと峰打ちにしたみたいだ。無駄にバフをかけてしまったため、峰打ちで10m吹き飛んだ。やや後悔。
「やった!僕たちの勝ちだ!ご苦労君たち。もう大丈夫ですよエイミーさん。僕が──」
『調子に乗るな!』
「スタ○バースト・ストリーム!」
「うおっ!」
無慈悲な16連撃が僕を襲う。
「スイッチ!」
「マザーズ・ロザ○オ!」
「なんでストーカーまでソードスキル使えるんだよ!」
彼女達の非道な27連撃は僕を遥か彼方へ吹っ飛ばし、僕は天を仰ぐ。
「今日の空って......こんなに青かったんだ」
彼女たちなりに手加減してくれたらしく、僕のHPの減少は残り5でストップした。
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