第14話 制服泥棒と自動小銃

「ショーマ!」

「おじさん!」


改行は間に合わない。僕の体は2m程後方に吹っ飛び壁に打ちつけられる。HPゲージが減っていき、0に────


「ベホイマ!」


───なる前にストーカーの回復呪文でなん とか一命を取り留めた。助かった。パーティーを組んでいて本当によかった。


「今のは惜しいね」

「ほんとです。このおじさんがぼっちだったら倒せてたのに」


そんなことはなかった。辺りは敵だらけだ。



「まさか、窃盗団だったとは......ならこれで!『プラズナ・デウスマ───」


「とりゃ」


 気の抜ける気合で善子がえげつない峰打ちを決める。使う機会がないと話していた『峰打ち』のスキルだったが、思わぬ所で役に立った。  


 ぐったりとしたエイミーさんを実験室の奥の準備室にこっそり運び込み、ソファーに寝かせる。これ以上誤解が生まれるのは避けなければならない。



「助かったよストーカー」


「僧侶として当り前の事をしたまでです」


「僧侶だったの君⁉」


「はい、ちょっとフィジカル強めのヒーラーさんですよ私」



 バーサクヒーラーさんでした。思わぬ形で二人目のSAO生還者を仲間にしていたようだ。

 

         ✢


「んっ、私なんでこんなところに...あ!」


「ちょっと待って!私達怪しい者ではなくて、勇者なんです」


今度は善子に対応してもらい、僕らのステータスブックを見せる。


「すみません!伝説の勇者様たちになんてことを!」


「いえいえ、大丈夫です。このおじさん、わりと丈夫なので。それよりも制服泥棒っていうのは.......」


「実は最近学園内で女子生徒の制服などの衣服を盗む輩がいまして、実に気持ち悪いことに犯行予告を出してから盗むのです。それでさっき私のところにも予告状がきて.......」


勇者の犯行な気が凄いする。


「そうだったんですか。僕たちはエイミーさんの魔王的なのの研究についてお伺いしたくて来たんです。犯行探しをお手伝いしますので、よろしかったらその後にお話を聞かせて貰えませんか?」


「伝説の勇者様たちにお手伝いしていただけるなんて光栄です!ですが、先ず先に研究の方をお話しましょう。魔王退治の方が優先です(アノジジイヨケイナコトヲイイヤガッテコロスゾ)」


 初老の猫耳への殺意をひしひしと感じながら彼女の話を聞く。


「勇者様程ではありませんが一般人も少しは魔力を持ってます。私は人より少し多く魔力を持って生まれたのでそれを魔王退治に使うため兵器開発をしています」 


 少しのレベルではない。プラズナ一発で僕を仕留めかけ、挙句は電撃系最上位呪文『プラズナ・デウスマキナ』まで使えるとは。なかなかぶっ飛んだ娘だ。



「表向きの研究は終わっていて、殆どの電子機器を魔力で動かせるようになりました。その技術を使って、魔王を倒しに行く勇者たちに自身の魔力で半永久に動かせる盗聴器を仕掛けて魔王について調べていました」


「なにそれ!私にも作り方教えて──ぐっ」


今度は静かに善子が峰打ちをした。



「すみません(苦笑)。カメラは仕掛けなかったんですか?」


「はい、カメラを動かすには膨大な魔力を使うため、勇者の魔力を持ってしても動かすことができませんでした」


 どうやら必要な魔力量は必要な電気量と比例しているようだ。映像を見るができないのは残念だが、音声データだけでも十分有り難い。


「それで魔王的なのはどんなやつでしたか?」


「魔王の城に入った勇者はすんなり魔王の部屋に辿り着きました。部屋の中には小さな少女が檻に閉じ込められていて、勇者たちが彼女を解放するため近づくと少女が笑いだして.......」


「まさか......」


「はい、その少女が魔王だったようで通常攻撃一撃で全員仕留められました」


 思いの外セコいやつだ。


「その後もう一組の勇者にも盗聴器を仕掛けました。その人達は慎重ですぐに正体を見破りました。しかし、火炎魔法一撃で倒されてしまいました。皆レベル最大だったのに...」


 Oh.....。一年でどうにかなるレベルではない気がしてきた。

 やはりレベルを最大にするだけではなく、何か特別な対策が必要だ。



「壊れかけの盗聴器が拾ったのは『今のはメラゾーマではない......って言いたかっな』という言葉でした」


 バーンかな?


「あ、あと戦闘前に世界を半分あげるから味方になれと言いました。もちろん断られてましたが、満足げでした」


 魔王さんは随分この世界をお楽しみのようだ。そんな適当なノリで多くの人が犠牲になったのだ。全く腹立たしい。



 結局彼女から得られた情報ら全員レベル最大の四人組パーティ2組が瞬殺されたということだけだった。 


 僕たちはついでに彼女の兵器を見せてもらうことにした。というか見せられた。




        ✢


 なんというかAK-47だった。

 なんというインフレ。


 一瞬にして僕の能力はおろか、全ての勇者たちは破られてしまった。改行も連発されれば不可能になる上、近接もできなければ、詠唱も間に合わない。


 彼女に尋ねたところ、これはオリジナルの兵器だと小さな胸を張って答えた。

 そしてこのバ火力パツキン貧乳ガールはとんでもないことを言い出す。


「威力を試してみますか?」


僕に銃口を向ける。


「いや、ちょっと死んじゃいますって」


「冗談でも褒めていただけて光栄です。でも勇者様なら大丈夫ですよ。剣を交えて実力を測るってのをやってみたかったんです!いきますよ!」


いや、一方的に胸を貫かれるんですが。

小気味よい音を立てて弾丸が発射され、僕の胸に突き刺さる。


 死.........なない。


死んでない!やったー!でも死ぬほど痛い‼

マジで死ぬ!



 のたうち回る伝説の勇者を見てサイコパス女三人衆はゲラゲラと笑っている。ストーカーに回復を求めるも、善子が笑いながらそれを止める。


 さっき自分の回復にホイマを重ねがけしたためMPは0だ。しかたないので地面を這いつくばって自分のバックにあるMPポーションを取りに行く。




 現実の女はいつもこうだ。苦しむ僕を助けちゃくれない。





 やっぱり僕を優しく受け入れてくれるのはみくにゃん、君だけだよ。


 現実に戻ったら彼女のために課金することを固く決意した。









 



 











 


 

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